第176話 【使者・4】
ドラゴニアへとやってきた翌日、俺はクロエ達に行くところがあると言って朝から宿を出てとある場所へと向かっていた。
その場所とは昨日出会い、意気投合したリュドラの家。
「おはようございます。リュドラさん」
「おはようございます。ジン君」
昨日までは代理人様と堅苦しい感じで呼ばれていたが、刀について色々と語り合ったリュドラは俺からの頼みでジン君と呼び名を変えてくれた。
これくらい他の人も簡単に変えてくれたらいいのに、他の人からは〝代理人様〟と呼ばれている。
「ジン君の刀をもう一度見せて貰ってもいいかな? 昨日は祝いの場で、ちゃんと確認出来なかったから」
「はい、いいですよ」
そう俺は言って【異空間ボックス】から、リーザに作った貰った刀を取り出してリュドラに見せた。
リュドラは刀を手に取ると、鞘から抜いて刀身をジッと見つめた。
「……これ程の名刀、初めて見たよ。誰に作って貰ったの?」
「こっちで知られているのか分かりませんけど、ガフカの工房の現工房長に作って貰いました」
「ガフカの工房!? あの方にジン君は武器を作って貰っているの!?」
リュドラは興奮した様子でそう言うと、再び刀を「本物のガフカの工房の刀……」と言いながらジーと見つめていた。
その後、一先ずリュドラを落ち着かせて、俺がどうやってリーザから武器を作って貰えるようになったのかを話した。
「……成程、最近ガフカの工房に出入りする人間が増えたって聞いていたけど、ジン君達の事だったんだね。あそこは本当に工房長の気まぐれでしか、相手を選ばないから選ばれたら本当に運が良いって言われてるんだよ」
「そうみたいですね。俺も実際、金塊が無かったら関わる事は出来なかったと思います。王都に戻った後、もしリーザの機嫌が良かったらリュドラさんの刀も頼んでみましょうか?」
俺の言葉にリュドラは物凄く葛藤していた。
だがこんなチャンスは二度はないと思ったのか、最終的に「許可が下りたらお願いしたい」と口にした。
それからリュドラは俺に、昨日約束した刀の技を見せてくれると言ったので、俺達はリュドラの家の裏手にある訓練場へと移動した。
「まず最初にジンは、刀を使う上で一番大事な事はなにか理解してる?」
「……刀を扱う技術だと俺は思ってます。勿論、力も大事だと思いますけど、刀は剣の様に力任せに振るうのではないと使って来て感じて来ました」
「うん、正解。流石、ジン君だね」
リュドラはそう笑みを浮かべながら言うと、自分の刀を鞘から抜いて技を見せてくれた。
その技は本当に綺麗な形をしていて、この三年間使って来た俺の刀術とは圧倒的な差があると感じた。
流石、数十年刀を使って来ただけある人だな。
「ジン君は時間があまりないって言ってたし、私が教えたい技の中でも比較的簡単な技を教えるね」
「はい、よろしくお願いします」
「まず、これから教える技だけど普通の体勢の時に使う一般的な技の一つで魔力を使った技。まあ、一度見せた方が分かりやすいと思うから見てて」
リュドラにそう言われた俺は、少し離れた位置に移動してリュドラの動きをジッと見つめて観察した。
リュドラは刀を手に持ち、刀身に魔力を流すと物凄い速さで刀を振った。
一瞬、リュドラの刀が巨大なドラゴンの爪の様に見える程、その技の威力と迫力は凄かった。
「今の技は私が持ってる技の中で一番簡単で尚且つ、戦闘で役立つ技なんだよ。技の名前は竜人であるからドラゴンにちなんだ名前が良いと思って、〝一の型・竜の爪〟という名前なんだ」
「良い名前ですね。それにまさしく、ドラゴンの爪に見えるほど迫力も凄かったですから、ピッタリと名前だと思いますよ」
「ふふっ、そういってくれて嬉しいよ。グラムス様からは少し名前負けしてるんじゃないか? って言われたんだけど、やっぱり刀といえば型の名前も大事だと思って、数日間考えて決めた名前なんだ」
名前を褒められたリュドラは、嬉しそうにそう話をした。
勿論、俺もリュドラのご機嫌とりの為にいい名前と言ったわけでは無く、普通にまさしくそう感じて本心からそう言った。
その後、今の技の具体的なやり方を丁寧に説明して貰った俺は、修行をして使える用になったら見せに来ますと約束をした。
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