第174話 【使者・2】
「うわ~、すっごく速い!」
「すご~い!」
ノアからのお願いを聞いた二日後、ヴェルド様に許可を貰った俺はクロエ達とノアに乗せて貰って竜人国ドラゴニアへと向かっていた。
クロエとレイは、ドラゴンに乗れている事に興奮している様子だった。
落ち着いている雰囲気のレンも、笑顔を浮かべていてクロエ達のように表現こそしていないが楽しんでいる感じだった。
「皆さん、落ちないように気を付けてくださいね。風の魔法で壁を張っていますので、外側に行かない限りは落ちないので中央に座っていてくださいね」
「「は~い」」
ノアの忠告にクロエ達は、姿勢を戻してそう返事をした。
空の旅はあっという間に終わり、俺達は竜人国ドラゴニアがある大陸へと到着した。
国の前だと折角騒ぎにならないように来たのに騒ぎになってしまう為、少し離れた所に降りた。
「それでは、ジン様。頼みますね」
「はい、任せてください」
ノアはそう言うと、飛び立ち直ぐに姿が見えなくなった。
それから俺達は竜人国まで徒歩で移動して、入国審査を通って中に入った。
竜人国の王都まではかなりの道のりではあったが、俺達は久しぶりの冒険だねと楽しみながら王都を目指した。
そうして二時間程歩いた俺達は、竜人国の王都へと到着して街の中へと入った。
中に入った後、ノアから聞いていた宿屋に行き手続きをした。
「それじゃあ、ここからは別行動で動くね」
「は~い、ジン君も早く終わったらこっちに合流するの?」
「一応、その予定では居るけど……まあ、その時次第だね」
そう言って俺はクロエ達を見送り、俺も王城へと向かった。
王城まで歩いて来たけど、ゲームでもかなりの他種族国家として有名だって書かれていただけあって、かなりの種族が居たな。
竜人は勿論、獣人やエルフ、ドワーフ、ヒューマンといった比較的何処の国にもいる種族に加えて、ダークエルフというデュルド国では珍しい種族の人もいた。
他には小人族という成人しても身長が120㎝程度しかいかない種族だったり、羽の生えた有翼人族といった種族もいた。
「流石、ドラゴニアだな……」
そう思いながら俺は城門の前に辿り着いて、兵士から「何の様ですか?」と尋ねられたのでノアの代理人ですと言葉を返し、その証拠となるノアの鱗を見せた。
「これは本物のノア様の鱗ですね……ようこそドラゴニアへ、我が敬愛するノア様の代理人様」
「ようこそ!」
兵士の一人がそう言うと、他の兵士も俺に綺麗な姿勢で頭を下げて来た。
それから俺は兵士の一人に王城の中へと案内されて、とある客室に通された。
そして程なくして、その部屋の扉をノックする音が聞こえて立ち上がると、扉を開けて威圧感のある長身でガタイの良い男性が入って来た。
俺と同じ金髪ではあるが、ギラギラとした目つきに合っていて子供なら見た瞬間、泣きそうな程に怖い人だった。
「はじめまして、私はグラムス・ドラゴニアです。新たな竜人国の王となった者です」
「は、はじめまして、ノアさんの代理人として来ました冒険者のジンです。その身分はただの平民なので、そんな畏まった感じじゃなくても大丈夫ですよ」
そう言えばこの人、こんな見た目だけど滅茶苦茶礼儀正しい人だった。
そこも人気キャラになった一つで、初見は怖さで泣く子供もいるがグラムスの事を知った後は笑顔を浮かべると、設定資料に書かれていた。
「いえ、ノア様の代理人の方はノア様と同じ扱いをしないといけないと、先代の王から言われ続けておりましたので、これは変える事は出来ません」
「……」
おい! 先代の王様、そんな事ノアと約束してなかっただろ! 変な事を追加して教えているんじゃないぞ!
そう俺は心の中で叫び、何故か俺に対して敬語で喋るグラムスに困惑しつつ、俺は【異空間ボックス】からノアから預かって来た鱗を取り出した。
「おお! こちらがノア様の鱗ですか? 凄く綺麗な形をしているんですね」
グラムスは鱗を手に取ると、そう興奮した様子でそう言った。
「はい、ノアさんがこちらの国に渡す為にと、自分の鱗の中でも綺麗な物を選んだと言ってました。ちなみにそとらは見本で、こちらが竜人国の新たな王へ向けて渡す分となります」
「こ、こんなにですか!?」
グラムスは俺が【異空間ボックス】から取り出したノアの鱗が入った袋を見ると、驚いた様子でそう叫んだ。
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