第161話 【師匠との話し合い・2】
ジンの闇落ち理由には、勇者に敗北して全てを失った後に近づいた者が関係している。
その存在はこの世界の裏に住む住人、人との憎しみや嫉妬・怒り等の感情や人が持つ魔力を糧にする存在。
そいつらの事を人々は〝悪魔〟と呼んでいる。
ジンはその悪魔の中でも最上位の存在に、魔力の質を気に入られてしまい完全な悪へと堕ちてしまう。
元の性格が狂ってたことで悪魔の事も受け入れたジンの強さ、普通の人間が悪魔を取り込んだ時よりも更に強く、勇者をも圧倒した。
その力でジンはゲーム世界で好き放題暴れまわった。
「悪魔をどうにかするって、師匠そんな事が出来るんですか?」
「ふふっ、出来るわよ。だって、私は魔女よ? 悪魔についても勿論知ってるわ」
師匠はそう笑顔で言うと、本棚から一冊の本を持って来た。
その本は黒い表紙でタイトル等も書かれていない、何となく不気味な本だった。
「師匠、その本は何ですか?」
「悪魔を呼び出す為の本よ」
「へ?」
今、師匠なんて言った? 悪魔を呼び出す本って言ったか?
そんな本、ゲーム世界では見た事が無いぞ?
「えっと、弟子ちゃんが言う悪魔はこれの事かしら?」
師匠はそう言いながら、本のページを俺に見せて来た。
そこには、ジンに力を与えた〝悪魔〟の姿と名前が載っていた。
「そ、そいつで間違いないですけど……師匠。本当に呼び出すんですか?」
「ええ、勇者との関係性は今はほぼ無の状態だけど、悪魔から狙われてる可能性はあるでしょ? ならこっちから呼び出して、抑え込んだ方がいいでしょ。心配しなくても大丈夫よ」
師匠はそう言うと、本のページを開いたまま何やら呪文を口にするとその本から、黒いモヤが出た。
そのモヤは徐々に形へと変化していくと、俺も見覚えのある悪魔が現れた。
悪魔界最上位種、銀色の悪魔フィオロ。
この悪魔はジンの魔力を気に入り、闇落ちしたジンに力を与え最悪の存在を作り出した者だ。
見た目は長髪の銀髪に赤い眼をしていて、黒いドレスを着用している。
若干、他のゲームやアニメ等ので吸血鬼っぽい見た目をしている美しい見た目の悪魔だ。
最低キャラを生み出した悪魔なのに人気のあるキャラだ。
「ま、マリアンナ!?」
「久しぶりね。フィオロ、ちょっと貴女と話したい事があって呼び出したのよ。理由は、弟子ちゃんを見たらわかるわよね?」
師匠の言葉にフィオロはビクツと反応をすると、ギギギと首を横に動かして「し、知らないわよ」と言った。
「へ~、シラを切るのかしら? 貴女を呼び出してから、弟子ちゃんの方に繋がってる魔力の糸が見えるんだけど、それは見間違いかしら?」
「ッ!」
師匠の言葉にフィオロはギクッと反応すると、俺に繋げている魔力の糸をスーと薄くして隠そうとした。
いや、今更遅いでしょ……。
「いま、ここで、正直に話しなさい、さもないと……」
「はい! そこの人間の魔力を気に入ってずっと見てました! マリアンナの弟子になった事も知ってましたけど、バレてないと思ってずっと見てました。ごめんなさい!」
フィオロは師匠の言葉に、綺麗な土下座をしながらそう謝罪をした。
ゲームでのフィオロを見て来た俺は、その光景に困惑していた。
あ、あの傲慢で何者にも屈しない姿勢のフィオロがこんな土下座をするなんて、師匠は一体何者なんだ?
「弟子ちゃん、この子どうする? 弟子ちゃんがずっと心配してた闇落ちの理由って、この子何でしょ?」
「えっ? 正直に話しましたよ!?」
「弟子ちゃんがこれまで困ってたのに、なんのお咎めも無いなんてそんな訳ないでしょ? さあ弟子ちゃん、煮るなり焼くなり好きな提案をしていいわよ」
「ま、マリアンナ!? ちょ、ちょっと待ってよ! 私はただ見てただけよ!? 何もしてないじゃない!」
師匠の言葉にここに来て、フィオロはそう反論した。
だがその反論に対して師匠は「見てたなら、さっきの会話も聞いてるでしょ?」というと、フィオロはあからさまに首を横に向けた。
「わ、私のせいじゃないもん……その子が別次元からの転生者だとしても、私はまだ何もしてないもん!」
「でも微量だけど、弟子ちゃんから貴女の魔力を感じた事があるわよ。それってつまり、弟子ちゃんに貴女がなにかしたって事でしょ? 勿論、魔力の糸で繋がってる分以外よ」
「ッ! な、何でその事も知ってるのよ!」
「気付かない方がおかしいでしょ? 初めて弟子ちゃんと会った時には、もう貴女の魔力が付いてたって事気付いてないとでも思ってたのかしら? 貴女が弟子ちゃんに何かした事があるって証拠でしょ?」
えっ、そんな事されてたのか? 全く気が付かなかった。
そう俺が思っていると、師匠に詰め寄られたフィオロは師匠の圧に話始めた。
「そ、そのそんなに悪い事は何もしてないわよ。ただちょっと、誘惑に負けるように誘導したり、面白い方にちょっと誘導しただけよ?」
「……弟子ちゃん、どうする? 流石にこの子を殺すと、悪魔の序列が崩れちゃうからおススメしないけど、苦しませる位なら良いと思うわよ?」
「ちょっ、ちょっと待ってよ! ちゃんと話したじゃない!」
師匠の言葉に対して、フィオロは慌てた様子でそう反論した。
というか、思考の誘導ってそんな事をされいたのか? 全くそういったの気付かなかった。
悪魔の力がどれだけ強いのか、ゲームではあまり分かり難かったけどかなり厄介な存在なのかもしれないな。
その後、俺は師匠にお仕置きをしてくださいと頼み、フィオロは師匠からキツイお仕置きをされた。
悪魔相手に、お仕置きをする師匠のが凄いんじゃないのか?
そう俺は、楽しそうにお仕置きをしている師匠の姿を見ながらそう思った。
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