第158話 【勇者・2】
それから俺は姫様に、四天王との戦いについて話しを聞いた。
四天王には4つの属性〝火・水・風・土〟の特徴があり、今回倒した四天王はゲームでも一番最初に倒す土の四天王ドドラス。
見た目はほぼゴーレムで水の魔法が弱点で、水魔法が使える仲間を強くしていればほぼ楽に勝てる相手だ。
「辛い戦いでは無かったわよ。見た目がゴーレムって事で、水魔法を主に使った戦いをして最後は勇者の聖剣で倒したわ」
「そうなんですね。怪我とかは無かったんですか?」
「無いわね。あったとしても掠り傷程度だったら、私の魔法で治せるしね。本当に一ヵ月前とは比べ物にならない程、強くなってるわよ」
姫様の能力は最初の時点でかなり高い聖魔法が使えたが、ここ最近の訓練で更に強力になっていると話を聞いている。
このまま姫様の力が強くなれば〝森の神秘薬〟を当てにしなくても、勇者が瀕死になる事はないから姫様にはもっと強くなって貰わないとな。
「それを聞いて少し安心しましたよ。一ヵ月前はユリウスさんやリオンさん、レーヴィンさんが全員俺に表に出て来てほしいって言ってたので、そうならないように勇者に強くなってくれってずっと願ってましたから」
「……ユリウス達の気持ち的には、今もジンには一緒に戦ってほしいとは思ってるわよ。ただジンの頑固さもある程度理解してるから、皆はもう言わなくなったみたいだけど」
「それなのに姫様だけは言ってくるんですね」
「ええ、私は諦めが悪いのはジンも知ってるでしょ?」
フフッと笑みを浮かべると姫様に、俺は「そうですね」と言葉を返した。
それから少し今の勇者についての話をした後、俺は入って来た部屋に戻り転移で城を出た。
「ジン、おかえり」
宿の自室に戻ると、レンが俺の帰宅を待っていた。
基本的にレンは勝手に人の部屋でまったりしないので、こうして待ってるという事は何かしら報告する事がある時だ。
「ただいま。レンが俺の部屋で待ってるって事は、何か話したい事でもあるのか?」
「……勇者に接触された」
真剣な表情でレンはそう言うと、詳しく話してくれた。
今日、レンは商品を卸しにギルドに向かうと、その先で勇者がレンの事を待ち伏せていたらしい。
錬金術師としてレンは王都でも有名になりつつあり、その恩恵を受けてる勇者は一度レンと会いたかったと言い、食事に誘われたとレンは言った。
レンはその誘いを仕事があるからと断り、勇者もしつこく誘う事は無かったとレンは言った。
「まあ、いずれ接触されるとは思ってたからな……俺達のパーティー、全員が注目されてる冒険者だしな」
俺はまあ色々とこれまでやらかしてるから有名で、クロエも同じく一緒に行動をずっと共にしてきたから魔法が上手い獣人として有名である。
そして双子のレンとレイは二人共凄い才能を持っていて、俺達は冒険者の間ではかなり有名なパーティーの一組である。
出来るだけ隠してはいるけど、ダンジョン内で力を完全に隠す事は出来ない為、そういった所から俺達の話は出て来て徐々に有名になっていった。
「それでレンから見て、勇者はどんな感じの奴だった?」
「う~ん……そうだな、ジンを見ていなかったら凄い人だなって感じていたんだと思う。だけど、俺はジンの凄さを近くで見て来てるから、勇者が放つオーラに特に思うところは無かったな」
レンは真剣な顔をしてそう言って、話はそれだけだったみたいで部屋から出て行った。
それにしても勇者がレンに接触を図って来たのか、いずれそうなるとは思っていたけど、そろそろ王都で隠れ続けるには無理が来そうだな。
前々から予定していた通り、住処を空島か他の場所に移した方がいい気がしてきた。
「だけど姉さん達は王都から離れさすのは無理があるし、空島とかだとレンに負担がかかるからな……」
どうにかしないといけないなと思いつつ、俺は解決策が見つからないまま数日が過ぎた。
そして俺は、あの時ちゃんと考えておけば良かったと後悔した。
「はじめまして、僕は勇者セイン。君とはずっと前から話したいと思っていたんだよ。ジン君」
ニコリと笑みを浮かべる勇者に、俺は顔を引きつらせ心の中で「やっちまった!」と叫んだ。
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