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第148話 【襲来・1】


 姉さんと食事をしてから、俺は偶に姉さん達の所に会いに行っては話をしたり食事をしたりと過ごしている。

 食事の席にはクロエ達も呼んで、お互いの仲間を紹介したりした。


「結局、ヘレナは貴方に会ったのね」


「姫様はやっぱり知ってたんですか、俺の姉さんが国に協力してるって」


「ええ、だって最初にヘレナと接触したのは私の部下だもの、知っていたわよ。ジンには黙っていて欲しいって頼まれていたから、何も言わなかったよ」


 姉さん達との食事会から数日後、俺は姫様の所に一人で来て姉さんの事について話しをした。

 やっぱり、姫様は知っていたのか、まあこの人なら知ってそうだとは思っていた。


「それにしても、ヘレナに加えてルルとも姉弟関係になったのね」


「ええ、姉さんの姉なら俺からしたら一番上の姉ですからね。姉さんとも血が繋がってないから、血の繋がりが無くても姉は姉です」


「ふふっ、たった数日でそこまで言うような関係になったのね。羨ましいわ、私はも弟と仲良くしたいんだけど、離れてた期間が長すぎてイマイチ関わり辛いのよね。それに今は、聖女としての役目もあるしで中々会えないのよね」


 姫様は聖女の力に少し前に目覚め、勇者とは別に訓練を続けている。

 その訓練にはこれまで俺がダンジョンでとって来た魔道具などが活用されていて、一番役立っているのはやはりミスリルの腕輪だった。

 まあ、姫様が聖女になる事は知っていたから、俺も惜しみなく投資が出来た。

 勇者の力も大事ではあるが、俺にとっては姫様の力の方が大事だからな。


「どうですか、訓練の方は順調ですか?」


「そっちは順調よ。ジンから貰った物が凄く役立っているわ、もしかして私が聖女になる事知っていたの?」


「誰を聖女にするか何て知れる訳無いですよ。ただ俺は姫様に物を渡してしていただけですよ」


 聖女はゲームと同じで、この世界の神が選んだ相手に役目が渡される。

 だから教会などが「この子が聖女です!」みたいなラノベとかでよくあるタイプではなく、本物の神が選ぶ為、偽物も出る事が無い。

 もし偽物が出たとしても、本物の聖女には〝紋〟が手の甲にあるかないかで判別が出来る。

 これは勇者も同じで、勇者にも勇者の紋が与えられる。


「まあ、訓練が辛い時はあるけど、訓練おかげでずっと叶えたかった王都の外に出れるようになったから嬉しいわ、凄く今は楽しいわ」


「流石に王様も聖女の役目を止めるのは無理ですからね」


「最初は沢山兵士を付けてたけどね……流石にそれじゃ、訓練にもならないから今は少人数で動けてるわ」


 姫様は溜息交じりにそう言い、俺は笑った。

 その時、俺は部屋に近づく魔力に「やばっ」と口にして、姫様に「帰りますね」と言って転移で窓の外に出て、そのまま下に降りた。


「危なかった。話に夢中になって、勇者が近づいてくるのに気付かなかった……」


 後、もう少しで勇者と接触する所だった。

 何とか逃げれたと安心した俺は、城門から入ったのでそこから出ないと怪しまれてしまう為、城門の方に向かった。


「あれ、ジンじゃないか? お前、城に来てたのか?」


「アンドルさん、お久しぶりです。ええ、ちょっと姫様と話す事がありまして」


 城門近くで兵士の見送りをしていたアンドルと偶然出くわした俺は、アンドルに掴まってしまった。

 ちょっ、マジて今日はここで話すのは嫌なんだって!


「最近な~、魔王軍の動きが活発で本当に大変なんだよな」


「あ、アンドルさんその話はまた今度聞きますから、今日は帰してくれませんか?」


「んっ、何か予定でもあるのか?」


「ええ、本当に大事な予定があるので」


 さっきまで姫様の部屋近くに居た筈の勇者の気配がこっちに近づいてくるのを感じていた俺は、そうアンドルに言ってなんとか城の外に出る事に成功した。

 その後は、普段は街中では使わない転移を何度も使い、宿まで最短距離で帰宅した。


「どうしたんだ。帰って来たと思ったら、行き成り倒れて驚いたぞ?」


「魔力を使い過ぎた……」


 丁度、一階でリカルドと話していたレンを見つけた俺は宿に入った瞬間、バタッと倒れるとレンに支えられながら部屋に連れて来てもらった。


「今日は確か、城に行ってたよな? 何かそこであったのか?」


「あと少しで勇者と出くわす所だったんだ。ギリギリの所で逃げたけど、その逃げる為に転移を乱発してな……」


「勇者から逃げる為、まだ練習の転移を使ったのか……ジンのその勇者嫌いは何処から来てるんだよ」


「別に嫌いじゃないけど、会いたくないんだよ……」


 俺はそう言ってレンが作ってくれた魔力回復薬を飲み、何とか少し気分が良くなった俺はそのままベッドに横になった。


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