第14話 【知識の有効活用・2】
それから、オークの死体とハイオークの死体を【異空間ボックス】に入れて王都に帰還する事にした。
「魔法も、剣も、それに収納スキルもあるって他の人が知ったらジン君、色んな人に声掛けられそうだね」
「あ~、まあ今の所は能力は隠す様に動いてるから、バレる事は早々ないとは思うけどな」
依頼場所も人が居ない様な場所を選んでもらっていて、人が居ないか確認しながら俺は力を使っている。
何故、そんな事をしてるのかと言うと、今目立つのは俺にとって不利益な事が生じてしまう。
今の俺の地位はよくて、ギルドが注目してる冒険者。
あまりにも今の俺の地位は低く、何かあった時に自分を守る事が難しい。
その為に俺はまず、ギルド側の信頼を得る為に動いている。
「取り敢えず今の所は、仲間の募集も何処かに入りたいって考えも無いから二人で頑張ろうと思ってるよ」
その後、何事も無く俺達は王都へと帰還して依頼の達成報告を行った。
報告後、クロエから昼食を誘われついて行こうとしたら、フィーネさんから止められた。
滅茶苦茶、嫌な予感がする。
「……フィーネさん、何故止めるんですか?」
「ジンさん、すみません。この後、時間ありますか?」
「無いです。クロエとご飯行くと、今目の前で言ってましたでしょ」
「そんなに時間は要りません」
キッパリと断ると、フィーネさんは譲らない様子でそう言葉を返してきた。
くっ、いつものやんわりとした雰囲気は何処に行った!
「クロエもほら、お腹空いてるだろ? 今すぐに行きたいよな?」
「ジン君、ごめん! 本当はご飯の誘いは、ジン君にこの後の予定が無いかの確認の為なの!」
「ッ! クロエ、お前最初から向こう側だったのか!」
まさかの裏切りに俺はそう叫ぶと、言い合いをしていた部屋の扉をノックする音がした。
そしてフィーネさんが扉を開けに行くと、部屋の外から一人の女性が入って来た。
この辺では珍しい黒い瞳と黒い髪を持ち、出る所は出てる美しい女性。
クールそうな見た目だが中身は意外とお茶目で、甘いものが大好きな彼女はゲームでも人気キャラの一人。
「初めまして、私は王都冒険者ギルドのギルドマスターを任されているアスカ・ルセクトールだ」
「……初めまして、先日冒険者になりましたジンです」
彼女を前にして、俺は目を合わせないように下を向いて挨拶をした。
人気キャラ、そう確かに人気なキャラではある。
だが俺は彼女と出会う予定は本来なかった。
「その、ギルドマスターは遠くに出掛けていると聞いてたのですが、いつお戻りになったんですか?」
「新人でその話知ってる何て、意外と情報通なのかな? ふふっ、本当はもう少し長引く予定だったのだけど、フィーネから面白い冒険者が現れたって聞いて、急いでそっちの仕事を片付けて来たの」
フィーネさんがだと!? まさか、そこが繋がりがあるとは……。
本来、王都のギルドマスターは物語開始まで別の場所に居た。
だから俺はそれまでの間に、冒険者として地位を確立させて別の場所に移動する予定だった。
なんせ王都は物語の殆どが関わってる場所、そんな場所に長居していたらどんなフラグが発生するか分からない。
そして俺が何故、ギルドマスターを避けようとしていたのか、それは彼女が〝七人の戦女〟の一人だからだ。
「ジン君、どうしたのさっきからそんなに顔を下に向けて、具合でも悪いの?」
「あ~、うん。ちょっと調子が悪いのかも知れないかな、だから今日はすみませんが」
クロエの言葉に乗っかり、この場を逃げようとした。
しかし、俺の方にポンッとアスカが手を置くと「バレバレだよ」と笑みを浮かべながら言い、俺はソファーに座らされた。
「何で君が私の事を避けようとしてるのか分からないけど、私は君に興味があるんだ。だから、少し話をしようか」
「……少しですよ。少し話したら、俺の事は忘れてください」
「ふふっ、変な事を言う子だね。ますます興味が湧いたよ」
獲物をみつけた動物の様な雰囲気を出す彼女に、俺は早くこの場から去りたいという思いはより一層強くなった。
「それでさ、私が戻って来てからそんなに時間が無くてジン君の事をそこまで調べる事が出来なかったんだけど、君って元は貴族だったって本当なの?」
「まあ、事実ですよ」
「意外とアッサリと肯定したね」
「別にそこは隠せるとは思って無いので、ある程度の情報を集められる地位を持ってる人だったら俺の出生程度なら調べられますからね」
現に戻って来て時間がないと言った目の前の彼女でさえ、俺の出生に関しては調べがついている。
「そう。それでさ気になったのが、君って魔法も剣術も誰に習ったの? 君に教えるような人は君の周りに居なかったって聞いたよ」
「何処まで知ってんだよ……」
アスカの言葉に対して、俺は溜息交じりにそう言った。
まあ、調べて一番謎に思うのは確かにそこだよな。
何も教えられていない貴族の子が、冒険者になり行き成り活躍している。
「元々素質があったんだ。家族で知っていたのは亡くなった母親だけで、他の家の者も家に仕えている者にも誰にも話した事は無い」
「成程ね~」
ニコニコと笑みを浮かべながらアスカはそう言い、俺は再度溜息を吐いて早く終わってくれと心の中でそう願った。
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