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第137話 【拳闘士ルバド・2】


 試合後、ルバドは自分があんな形で負けるとは想定してなかったらしく、逆に想定外の倒された方をして嬉しそうにしている。

 まあ、正直俺もルバドとの戦いで【体術】を使うとは思っていなかった。


「ジンは【体術】も使えたんじゃな、凄く綺麗な流れで驚いたぞ!」


「ちょっとだけですけどね。昔、鍛えていたことがあるんですよ」


 俺が姫様の護衛をしてる時、剣術はユリウスから、魔法はレーヴィンやリオンから習っていた。

 そしてそんな訓練の中、息抜きとしてアンドルに【体術】をちょっと教えてもらっていた。

 ガッツリと教わらなかったのは、アンドルは俺が他の事で忙しいと理解してくれる大人だったからだろう。


「さっきの最後の技、あれは儂の力を利用した技じゃよな?」


「一発でそれを分かるルバドさんは凄いですね。はい、そうですよ。ルバドさんの突進攻撃はかなりの威力でしたから、その力を利用して地面に叩きつけたんです」


「ほほう。それは興味深い戦い方じゃな……儂の知ってる【体術】使いは、そんなな相手の力を利用した戦いなどしてない者達じゃ、ジンはどうやってその戦い方を学んだのじゃ?」


「そこは秘密ですね。まあ、でも【体術】に関しては流れに任せて使う事が多いので、ルバドさんにやった技くらいしか真面に使えるのはありませんよ」


 俺は【体術】をそこまで訓練してないから使える技は少ない、だがそれは自分で望んでその形へとした。

 正直、魔法がある世界で【体術】を極めた所で俺は意味がそこまで無いと感じていた。

 だから俺はあえて【体術】で習得した技の殆どは、防御系の技でもしも武器が無くなった時に自身を守る為に少しだけ学んだ。

 だけどまあ、その考えは今日の戦いで消える事になった。


 今回の模擬戦闘、事前に魔法は使わないと宣言していた俺だが、多分魔法を使えるようにしておいても中々使うタイミングが難しかったと思う。

 ルバドは筋力も凄いが、足の速さも早く一瞬目を離す事さえ負けに繋がると感じていた。

 あれは普通の魔法使いが相手だったら、攻撃すら出来ずに倒されているだろうな。


「俺としてはルバドさんの突進攻撃は、なかなか怖い攻撃でしたよ。溜めが必要な分、少し無防備になりますけどそれでもあの技の威力は半端ないですね」


「そうだろう? 儂のお気に入りの技の一つなんじゃよ。今回は、屋内で模擬戦闘じゃったから使わなかった技もあるんじゃが、突進は儂の使える技の中で一番好きでよく使ってる技なんじゃよ」


 ルバドは自身の技を褒められると、顔をニコニコと笑顔を浮かべてそう言った。

 それから訓練場の借りてる時間が来そうだったので、俺とルバドは一緒に外に出てそのままリーザの店に向かった。


「えっ、爺ちゃんとジン。戦ったの!?」


 リーザの店にやってきた俺達は、一緒に来た理由を聞かれてさっきまで模擬戦闘をしていたと伝えた。

 すると、リーザは顔を驚かせてそう叫んだ。


「ど、どっちが勝ったの?」


「ジンじゃよ。完敗じゃった。儂はジンに傷をつける事さえできんかった」


「嘘!?」


 リーザは自分の祖父が負けたと知ると、更に驚いた顔をして俺の顔を見て来た。


「ジンが強いのは知ってたけど、爺ちゃんに無傷で勝利するなんて本当に強いんだね」


「まあ、運が良かったんですよ。俺の使える数少ない【体術】の一つが綺麗に決まったおかげで試合に勝てたんです」


 そう言って俺は、どんな試合をしたのか話をした。

 その話を聞いたリーザは、ルバドを見て「ジンと戦ってどうだった?」と聞いた。


「うむ、凄い力を感じたのう。流石、一部で勇者よりも勇者に近い者と言われてるだけあるの」


「……えっ? 何ですか、その噂!?」


 リーザとルバドの会話を聞いていた俺は、何とも聞き逃したら大変な事になりそうな事を聞いた。

 勇者よりも勇者に近い者? なんじゃ、そりゃ!?


「ジンの事を知ってる者は今の勇者の姿を見て、ジンの方が勇者に相応しいじゃないかって噂をしてるんじゃよ。その話を聞いてた儂は、そこまで言われる者の力を知りたいと思って今日、戦いを申し込んだんじゃ」


「なんですかその噂、俺かなり情報収集はしてますけどそんな噂聞いた事ありませんよ?」


「うむ、それはジンが今まで力を隠していたからじゃろうな、儂は貴族に知り合いがおるからその者からジンの方が勇者に向いてそうじゃなって聞いていたんじゃよ。知り合いが言うには、ジンの力を知る者達は皆一度はそう思ったらしいんじゃ」


「……一体、誰なんですかその知り合いって」


 そう俺が溜息交じりに言うと、店の扉が開き「儂じゃよ」と聞き覚えのある声がした。

 サッと後ろを振り向き、店に入って来た人物の顔を見て俺は溜息を吐いた。


「レーヴィンさん……」


「久しぶりじゃのジン」


 ニコニコと笑みを浮かべながら、レーヴィンは店の中へと入って来た。

 成程な、元魔法騎士団団長のレーヴィンなら、逆算して当時のガフカの工房の長がルバドになるからその時の繋がりか。


「それとルバドも久しぶりじゃ」


「うむ、久しぶりじゃなレーヴィン。ジンと戦ってみたぞ、凄く強かったぞ」


「おお、早速もうやったのか! どんな試合をしたのか聞かせてくれ」


 レーヴィンはルバドの言葉に、興味津々といった様子で反応した。

 そんなレーヴィンに対して、ルバドは今日の試合を一から話し始めた。


「リーザ、レーヴィンさんってここの店使ってたの?」


「あたしになってから一度も来た事が無いよ。レーヴィン様は爺ちゃんのお得意様の一人だから、引退後も爺ちゃんに鍛冶を頼んでる筈だよ」


「引退後も鍛冶してるのか?」


「偶にだけどね。本当に世話になった相手だけ、そのまま鍛冶を引き受けてるんだよ」


 リーザとそう話ながら俺は、目の前で楽しそうに喋る爺同士へと視線を移動させた。


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