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第131話 【双子の冒険者・2】


 そこまで喜んでくれるとは思ってなかった俺は、それから俺もこの世界の事をもっと知る為に本を読むようにして偶にレンと本の話題で話したりするようになった。


「ジン、この前貰った本を見ながら作ってみたけど、俺には【鑑定】スキルが無いから見てくれないか?」


「作ったって、もしかして薬を作ったのか!?」


 本を渡してまだ一週間位しか経ってないのに、レンは既に本を読んで実際に薬を作ってしまっていた。

 流石に本格的な道具とか、高価な材料は当時のレンには買えないから普通に薬の調合に使うアイテムを買って自作で回復薬を作ってしまった。

 簡単に作ってみたとレンは言ったが、本来簡単な薬を作るのにも相当時間がかかると言われている。

 まあ、形は出来てるだけで効果はそこまでだろうと、鑑定する前まで俺はそう思っていた。


「……普通に市販で売られててもおかしくないレベルで、ちゃんとした効果も出るみたいだ」


「おっ、それは良かった」


「えっ、レン君が自分で薬を作っちゃったの? 私にも見せて~」


 レイと話していたクロエは、俺達の会話を聞いてそう会話の中に入って来た。

 そしてクロエはレンの薬を見て「わ~、本当に売られてね薬と殆ど一緒に見える」と言った。


「外見だけじゃなくて効果も一緒。というか、多分材料費とか考えたらレンが自分で作った方が安く揃えられると思うぞ」


「まあ、その一本に辿り着くまでに少しお金がかかったけどな、でももうコツは掴んだからこれからは自分で薬の調達は出来そうだ。これでやっと、レイから白い目を向けられなくて済む」


「別に私はレンの薬作りの行動自体を嫌だと思った事無いよ? ただ一緒の部屋で作るのは止めて欲しいって思ってるだけ、だって調合した薬の匂いって本当に凄く臭いんだよ? 毎回、換気の為に窓開けてるけど、夏場はまだいいけどもう寒くなって来る時期になってくるから、部屋で作るのはやめて欲しいなとは思ってる」


 そうレイは隠すことなく自分の気持ちを言うと、レンは「ごめん」と素直に謝罪をした。

 レイとレンは兄妹という事もあって、男女ではあるが一緒の部屋を借りている。

 そんな場所で薬作りをしたら、そりゃ片方は嫌がるだろうな。


「ギルドに話してみたらどうだ? 薬の調合が出来る人間は、そう数はいないからいくつか納品するから場所を貸して欲しいって言ったら、場所位なら用意してくれると思うぞ」


 確か、ギルドには色々と作業場があって調合できる部屋もあった筈だ。

 俺はその場所を思い出しながらレンに言うと、その次の日にはギルドに言って場所の提供をしてもらう代わり、月に決められた個数の薬を納品する契約をしていた。


「レンの行動力とか、普段のレンを見てるからおかしく感じるな……」


「レンは自分の好きな事に対してだけは、私以上に行動力あるよ」


「成程な、大人しいイメージだったけど、ただ単にそれに対しての興味がないだけだったのか」


 この頃まで俺はレンのイメージは、クールで大人しい奴だった。

 しかし、この手作り薬の件以降、好きな事への行動力は半端ない奴で興味ない事にはとことん力を発揮しないタイプだと分かった。

 まあ、堅物っぽい感じかと思ってたのが、そうじゃないと分かって絡みやすいと思うようになったから良かったと思っている。


「それにしても、レンがそこまで薬学に興味があるんなら、他にも本をやって色んな事を勉強してもらったら面白い事になりそうだな……」


「ジン君、人の兄を面白いって」


「いや、だってなたった一週間で手作りの薬を作って来たんだぞ? そんな奴、面白い以外何て言うんだよ」


「……確かに、そう言われたらそうだけど」


 それから俺は特に仲を深めるとかそういう理由無しで、定期的に専門的な本をレンに渡しはじめた。

 最初の頃はレンも、本は意外と高価な物だから貰いすぎだと返そうとした。

 だけど俺は一度読んでいるから要らないと言って、不要だからと受け取ってくれと無理矢理渡していた。


「レンだけズルいよジン君! ジン君がレンに本渡すから、付き合いも悪くなっちゃったんだよ。責任とってよ!」


 それから暫くして、レイから会って話がしたいとギルド経由で来たので会いに来ると出会って直ぐにそう言われた。

 まあ、レイはレンとしかパーティーを組んでないから、レンが研究やらで忙しくしてると一人になってしまうんだろう。


「と、言われてもな俺達は俺達で護衛任務中だからな……いっその事、レイもなにかやってみたらどうだ?」


「なにかって、私レン君みたいな薬作ったりできないよ?」


 そうレイは言うと、自分は力が強い事しかいい所はないと続けて言った。


「それなら、レンの製作過程で失敗というか、効果が薄くなってしまったのを売ったりしたらどうだ? レンはそういったのは苦手で、研究とかで大分薬が溜まってるんだろ?」


「そう言えば、最近貸して貰ってる部屋も荷物でいっぱいになってきたってレン言ってた気がする……うん、ギルドの人と話してちょっとやってみるよ! ありがとジン君!」


 そう元気よくレイは言うと、笑顔を浮かべながら走り去って行った。

 それから数日後、レイから「商売の勉強してる!」と商業ギルドに紹介されて商売のやり方を教わりに行っているという手紙が届いた。


「なんだかんだあの二人、兄妹だから本当に似てるな」


 凄い行動力だなと、俺は感心しながらその日も訓練に勤しんだのだった。

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