第13話 【知識の有効活用・1】
翌日、約束の時間に遅れないように少し早めに宿を出た。
「あっ、ジン君。おはよう!」
「って、何でもう居るんだよ……」
約束の時間まで、まだ30分程ある筈だ。
なのに待ち合わせ場所に既にクロエが居た。
「えへへ、ジン君と初めての依頼で楽しみだな~って思ってたら朝早くに目が覚めちゃったの」
「だから早く来てたのか……俺が早く来なかったら、後30分待つ事になってたんだぞ」
笑っているクロエに、俺は溜息交じりにそう言った。
それから俺達は王都に外に出て、依頼の場所に向かった。
今回の依頼は討伐系の依頼で、出来るだけ綺麗な状態で持ち帰って欲しいと言われている。
「クロエ、近くに居るか?」
「ちょっと待ってね……」
ゲームのクロエだとすれば、ジン以上に索敵能力が高い筈なので俺は魔物の発見はクロエに任せる事にした。
その後、少ししてクロエから「向こうに居る」と報告を受け戦闘態勢をとった状態で移動を始めた。
「——!」
移動した場所には依頼書の魔物。
オークの集団が5匹食事をしていて、警戒を全くしていなかった。
警戒して無いなら簡単だ。
そう思った俺は、その場から魔法を飛ばして魔物の首目掛けて魔法を放った。
「んっ? 一匹、俺の魔法に耐えた奴がいるな」
「……ジン君、あれもしかしたら上位種の〝ハイ・オーク〟かも知れない」
「上位種の奴か、だとすればさっきの魔法は効かないな」
強すぎる魔法だと素材に傷が付くと思い、オークの首が飛ぶ程度の魔力で魔法を使った。
「——ッ!」
仲間を殺されたハイオークは俺とクロエの姿を見つけると、雄叫びを上げこちらに向かって走って来た。
「クロエ、あいつの相手は俺がするから逃げていいぞ」
「えっ、ハイオークだよ!? 魔法効かなかったのに、大丈夫なの!?」
「大丈夫だ。さっきのは手加減して放った魔法だから」
慌てた様子のクロエに安心させるようにそう言った俺は、既に直ぐそこまで来ていたハイオークに向かって【風魔法】を放ち吹き飛ばした。
自分が飛ばされた事に驚くハイオーク。
そんなハイオークの背後に回り込み、魔力で強化された剣をハイオークの首筋に剣先を当て、頭部を切り飛ばした。
「グァ——!」
ハイオークはそう叫び、絶命した。
やっぱり〝ジン〟ってキャラはチートだな、今の戦闘で明らかにそれを感じた。
この世界に転生してから俺は、殆ど〝魔法〟しか使っていなかった。
確かに【剣術:3】のスキルはあるが、実際に剣を習ったりしてい無い。
それなのに俺は、ただ魔力で強化された剣でハイオークと倒す事が出来た。
「じ、ジン君!」
ハイオークが倒れた所を見たクロエは、遠く離れた所から俺の元に走って来た。
「魔法で戦うって言ったのに、剣で戦い始めて驚いたよ!」
「ごめんごめん、ちょっと剣で戦ってみたいと思ってさ」
実際に俺は今の戦闘中、ハイオークを飛ばした時点で〝剣使ってみたいな〟と思い剣を使って戦いをした。
その結果、簡単にハイオークを討伐する事が出来た。
改めて俺は、〝ジン〟というキャラの能力が凄いと認識した。
「昨日の話し合いで剣も使えるって言ってたから、どのくらい使えるんだろうとは思ってたけど、まさかハイオークを一人で討伐出来るなんて凄いよ」
クロエはそう言うと、倒れたハイオークへと視線を向けた。
「綺麗に斬れてるね。ジン君、魔法も凄いのに剣の腕もこんなに凄いなんて……」
「この位なら、クロエだって出来るだろ? 【剣術:3】なんだし」
「……ハイオークって固い魔物で有名なんだよ? スキルレベルは確かに高いけど、筋力が足りなくてこんなに綺麗に倒せないよ」
「そう言えば、そんな魔物だったな……」
俺がそう言うと、クロエは呆れた感じで溜息を吐いた。
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