第119話 【旅へ向けて・3】
翌日、パーティーメンバーの登録を行う為、4人でギルドへと集まった。
俺達は晴れて4人組のパーティーとなる為、まずフィーネさんとリコラさんと二人は顔合わせを行った。
「噂の双子の冒険者の方達ですか、素晴らしい人材を仲間にしましたね」
「えっ、私達って何か噂されてるの?」
「……そういや、レイ達ってそういった事、全く気にしないタイプだったな」
この二人、お互いに珍しい力を持ってる為、一部では噂される程の冒険者だ。
ゲーム時代では出てこなかったから、俺もクロエから紹介された時は普通だと思っていたが、後に二人の力を知った時は「マジか」と素で驚いた。
まあ、ゲームに出てこない=勇者のとの関わりが無い者達という事で、俺もそこで安心して絡む機会が多かった。
「へ~、私達って噂されてたんだ。知らなかった」
「まあ、気にした事すらなかったしな」
「二人ならそう言うと思ったよ」
その後、二人には俺とクロエがパートナー登録をしてる為、依頼の一部はギルドに行く等、これまでの成果を二人に伝えた。
その内容に二人は驚き、目が点となっていた。
「ジン達が凄いとは知ってたけど、まさかそこまでとは思ってなかった……」
「私も王家からも認められた冒険者って、早々いないよね? その中でも許可証が無いと入れない場所への許可証を持ってるとか、二人共凄くない?」
「頑張ったからな」
驚く二人に詳しい事は、まだ旅まで一月はあるからその間に話と言って、この場は他の話をして無事に俺達はパーティーとなった。
その後、俺達はギルドを出てリーザの店へと向かった。
「な、なあジン。俺達もガフカの工房に入って良いのか? いくら、ジンが知り合いっていっても無理なんじゃ……」
「あ~、そこは心配するな、前からレン達の事はリーザに話してるから」
「「へっ?」」
レン達は俺がリーザに自分達の事を話してるというと、驚いた顔をして固まった。
そして丁度良くリーザの店に着いた俺は、扉を開けて中にレン達を連れて入った。
先程、帰ったばかりの俺達を見てリーザは一瞬驚いたが、レイ達の顔を見て何か察した様子で笑みを浮かべた。
「リーザ、紹介する。俺達の新しい仲間のレイとレンだ。前、話した双子の冒険者だ」
「ほ~、あんたらがジンが気に入ってると言ってた冒険者達か……中々、いい力を持ってるね。あたしは、リーザ・ガフカだ」
「は、初めまして妹のレイです」
「は、初めまして兄のレンです」
レイ達はリーザに挨拶をされて、ガチガチに緊張した状態でそう自己紹介をした。
そんなレイ達にリーザは笑みを浮かべ「よろしくね」と言って、二人と握手を交わした。
「それでこの子達をただ紹介しにきたんじゃないんだろ? 一応、準備はしてたけど仲間になったばかりの相手に、本当に渡すのか? あんた達の稼いだ金だよ?」
「そこはクロエと話しているから大丈夫だ。やってくれ」
そう俺は言って、リーザは頭を掻きながら「あんたも変わってる奴だね」と言った。
それから緊張しているレイ達をリーザは連れて行き、二人の装備の採寸を行った。
「じ、ジン君? リーザさんに採寸されたんだけど、何をお願いしたの?」
「んっ? そんなのお前達の新しい装備だ。一緒に旅をするなら、装備の品質を一緒にした方がいいだろ?」
「「えっ!? えぇぇぇ!」」
流石、双子だな、息ピッタリだ。
そう俺が感心してると、レイから襟を掴まれ「ど、どういうこと!?」と詰め寄られた。
「さっきの話し合いで、パーティーリーダーは俺がするって言っただろ? このパーティーのルールの一つに装備は全員品質を統一する決まりなんだよ」
「そ、そんなの聞いてないよ! それにガフカの工房で装備を作るって、大金が掛かるでしょ!?」
「そこはパーティー資金から出すから問題無し、聞いただろ俺達が稼いだことはこういう所で使わないと、後から後悔する事になるからな」
「確かに装備が悪くて後で後悔するって冒険者でよく聞く話だけど、パーティー加入その日に高級な装備を渡すって言われる方の気持ちにもなってよ!」
レイはそう叫ぶと、酸欠になったのかフラッとしてレンの肩に掴まった。
今回、レイ達を急遽仲間に加える事にしたが、事前にもしかしたら二人増えるかもと言う事はリーザと話していた。
クロエももし二人が仲間になったら嬉しいしと言って、その時に二人の装備代をパーティー資金から出す事も承諾してくれた。
「そもそもレイ、お前等装備に金かけないにも程があるだろ? レイ、お前自分の装備出してみろよ」
「っ! う……」
レイは指摘された事に嫌な顔を浮かべながら、背に担いでる戦斧を取り出した。
多少、手入れはしているものの欠けていたりして、まともな武器とは言えない。
レンも同様で刃こぼれした剣を使っている。
「……あんた達、これでよく冒険者続けてこれたね」
流石のリーザもレイ達の装備の手入れの酷さに、驚いた顔をしてそう言った。
「自分達で装備を揃えられないメンバーなら、リーダーが用意するしかないだろ?」
「ジン、これだけ良くするって、俺達の事を相当期待してるの?」
「ああ、期待してる。だから惜しみなく、投資する事にしたんだ」
「……レイ。ここは素直に装備を受け取ろう。ジン達の期待に応えるのが、俺達に出来る事だし、それに仲間になるって決めたのは俺達なんだから」
そうレンが言うと、レイは「レンが言うなら……」と言って落ち着いた。
それからリーザから、既に装備の素材の手入れはしてるから数日もすれば出来ると言われて、その日は解散となった。
「しかし、レイ達を仲間にか……当初、考えていた通りに事が進んだな、これで旅に心おきなく行ける」
王都で過ごした期間で俺は旅に向けて、ある程度の準備が必要だと途中で考えて色んな事を想定して準備を進めていた。
その中に仲間の確保は最低ランクに位置づけ、いい人材が居れば仲間に入れようと思っていた。
それこそアンジュを仲間にしたいとも思ったが、あの人はユリウスの近くに居た方がいい気がしたから、声はかけなかった。
レイ達は仲間にしてもいい気はしてたが、タイミング合わずずっと保留にしていて最後のタイミングだと思い今日声を掛けた。
「まあ、取り敢えず残りの時間でレイ達との連携を上手く出来るようにならないと、折角仲間にしたのに意味がないからな、もうひと頑張りするか」
そう考えながら俺は眠り、それから一ヵ月間レイ達との連携訓練を徹底的に行った。
そうしてある程度仕上がった頃、気温も暖かくなり遂に俺達は王都を旅立つ日がやって来た。
旅立ちの日、多くの人から別れの挨拶を貰った。
寂しい気持ちもありつつ、俺達は最初の目的地へ向かう馬車に乗り、王都を旅立った。
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