第117話 【旅へ向けて・1】
それから数ヵ月、俺とクロエは自分達の出来る範囲で街の依頼を解決しながら、ダンジョンでレベルアップと金策を行った。
街の依頼は評価値としてはそこまで高くないが、ギルドへの信頼度は更に上がり、他の土地に行ったとしてもギルド経由で俺達の事は優遇されると言われた。
「そんなつもりで依頼を受けてた訳では無いんですけどね……」
「これは、ギルドからのお礼として受け取ってください」
正直、この優遇特典について知っていたが狙って、街の依頼をするようになった訳では無い為、貰う際は少し遠慮気味に受け取った。
優遇特典、これはギルドの系列店舗での割引だったり、宿での宿泊費の負担。
他にはパートナー契約してる者に限っては、パートナーがいないギルドの所でギルドが連絡役をしてくれたりと色んな特典がある。
「それにジンさん達はもうじき、旅に出ますから一番最後の連絡役は必要だとマスターが言って渡す事が決まったんです。それにパートナーなのに、何も出来ないのは嫌ですからね」
旅に出た際、パートナー契約を切るかどうかは既に話し合っている。
完全に居なくなるわけでは無い為、切る必要性は最初からないと考えていた俺達は別のギルドでもパートナー料をとってもらって構わないと伝えていた。
それがまさかこんな形で、仕事を出来るようにするとはフィーネさんも行動力がある人だな。
「信用度といってもたった数ヵ月、街の依頼を受けてただけなのにこの優遇特典もらえましたよね」
「それ私も思ってた。だって、それなら他の人も貰ってるよね?」
「そこに関しては、ジンさん達だからというのもあります」
そうフィーネさんは言うと、俺とクロエが優遇特典を貰えた理由を説明してくれた。
元々、達成率、依頼の失敗回数が0の俺達はギルド側としても信頼を置いた冒険者として扱われていた。
そこに高位の人、まあ姫様の依頼を受けて完璧にその依頼をやり遂げ、更には依頼主側から追加での報酬を渡す程の貢献をした。
それによりギルドは俺達の信用度は高く評価する事になり、今回の優遇特典を与える事になったと説明された。
「……姫様には本当に感謝しないとな」
「そうだね。本当に姫様が楽しんでくれる話が出来るように、旅先で頑張らないとだね」
「ああ、本当にな」
その後、もうそろそろ旅も行けそうだからそっちの話も進めて、ギルドから出て俺達はリーザの店へと移動した。
数日前、リーザの所で装備を一新する事にした俺達は、かなりお金をかけていい装備を作って貰う事にした。
「楽しみだな、シンシアの店で買った装備も勿論良かったけど、オーダーメイドでの装備って武器の時も感じてたけど、ワクワク感が半端ないよな」
「そうだよね。それに今回のは、沢山お金かけたからどんな物が出来たのか凄く楽しみ」
「ああ、なんせ一人の装備に対して金貨100枚以上かけてるからな」
成長期の俺とクロエだが、旅に出るし折角ならいい装備を着ようという事になり、お金を沢山かける事にした。
装備に金を掛けて悪い事は無いし、成長して体に合わなくなってもリーザは直ぐに合わせられると言ってくれた。
それならば、いっそ大金を掛けて作っちゃえと半ばノリで決めた。
ちょくちょくリーザに店に顔を出して、話を聞いていたがなにやら竜種の素材を使ったというのを聞いている。
「話を聞いた感じ、見た目では分かりにくくしてるけど、見る人が見ればその価値が分かるって言ってたな」
「出来るだけ目立ちたくないけど、いい装備を着たいっていうお願いだもんね。楽しみ~」
そう話しながら俺達は歩き、リーザの店へと到着した。
扉を開けて中に入ると、今回は既にカウンターの所でリーザは待っていた。
「待ってたよ。ジン、クロエ。あんた達の新しい装備、完成したよ」
ニカッと笑いながらそうリーザが言い、俺とクロエは小走りでリーザの元に近寄った。
そしてまず最初にリーザは、クロエの装備から説明を始めた。
クロエの装備に使われてる素材の殆どは、獣系魔物の中でも特に防御力が高い〝ブラックベアー〟の素材を使っているとリーザは言った。
サポート兼準アタッカーのクロエは、動きやすさと防御力を考えこの素材にしたらしい。
「わ~、凄いよジン君! 重いのかなって思ったけど、全く重く無いし動きやすい!」
そうクロエは興奮した様子で、ピョンピョン飛びはねたり蹴りの動作をしたりと装備の動きやすさを確認している。
「一応、前に話していた通り竜種の素材も混ざってるから、その分もその装備の防御力が上がってるよ。そこらの金属の装備より、防御力があるから安心して戦いな」
「はい! ありがとうございますリーザさん!」
クロエはリーザにそうお礼を言うと、早く装備を試したいとウズウズとしている。
滅茶苦茶、尻尾振って嬉しいんだなと一目で分かるけど、クロエよその尻尾バシバシ俺の太ももに当たって痛いんですけど……。
ここで注意したら折角、上機嫌なクロエの気持ちを下げてしまうから、俺はグッと我慢した。
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