第11話 【獣人の冒険者・3】
それから俺とクロエ、そしてフィーネさんとクロエのパートナーであるリコラさんと共に今後についての話し合いをする事になった。
何故、この4人なのか? それはクロエから「仲間になって欲しい」と頼まれたからだ。
「クロエさんはこちらの調査では、ジンさんの希望通りの方ですね」
「えっ、ジン君。仲間を探してたの? 駄目元で頼んだんだけど」
「まあ、ソロの限界もあるからね。それに冒険者といえば、やっぱり仲間と共に成長していくってのも一つの楽しみだなとも考えてるから」
そう言うと、クロエは目を輝かせ「ジン君も私と同じ考えなんだ!」と嬉しそうに言った。
「と言うと、クロエもなのか?」
「うん! 私も小さい頃に冒険者の冒険譚を読んで、いつかそんな冒険をしてみたいって思って冒険者になったの」
嬉しそうにそう言うクロエと目が合うと俺はクロエに「なら、一緒に楽しい冒険をしようか」と仲間になる事を決めた。
その後、フィーネさんにパーティー登録の手続きをしてもらい、俺とクロエは正式にパーティーとなった。
「ジンさん、クロエさん。これは既にご理解されていると思いますが、パーティーで依頼を達成した際も変わらずパートナー登録のお金は引かれますのでご注意くださいね」
「はい、そこは把握してます。クロエも大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
そう俺とクロエが言うと、フィーネさんとリコラさんは「今後とも、よろしくお願いします」とお辞儀をした。
それからパーティー登録を済ませた俺達は、これからの活動の為に互いの事を教え合う事にした。
その際、ステータスは見せるかという話になったが、お互いを信用できる間柄になったら見せようという事にした。
冒険者にとってステータスを他人に見せる行為は、危険な行為で仲間だからと言って簡単に見せる冒険者の方が少ない。
「ってなると、戦い方とか得意とする事になるが……クロエは何が聞きたい?」
「ジン君って見た感じ、何でも出来る感じだよね?」
「そうだな、どちらも行けるけど、剣に関してはまだ実戦では試してないから、何処まで通用するか分からないとだけ伝えておくよ」
【剣術:3】と【武人の加護】を持ってるから、普通の剣を使ってる冒険者よりかは剣の腕前はあるとは思う。
ただ今の所、魔法だけで完結してしまってるから、試す場面があまりないのが現状だ。
「そう言えばジン君って、まだ冒険者になって数日って言ってたもんね」
「ああ、だから経験が少ないんだ。その点、クロエは半年間冒険者活動をしてるから経験値自体は上だな」
「うん、経歴だけはジン君にまだ負けてないよ。これでも鉄クラス冒険者だからね」
既に実力は負けてるとクロエは認めているようで、笑みを浮かべながらそう言った。
半年で鉄クラス冒険者。
このランクアップの速さは、早い方の部類である。
普通の冒険者だと、鉄クラスにあがるには早くても一年は掛かる。
「半年で鉄クラスまで上げてるんだから、クロエも十分凄いと思うけどな」
「少し前までそう思ってたけど、ジン君の強さを見たら認めざる得ないよ。多分、ジン君が本格的に冒険者として動き出したら一ヵ月もしない内に私のランクまでは上げれると思うよ」
そうクロエが言うと、俺の隣に座るフィーネさんに「だよね?」と話を振った。
「そうですね。ジンさんの力があれば、一ヵ月も掛からない内に銅クラス。もっと頑張れば、銀クラスまでは普通に行けると思いますよ。今はまだ準備段階と言いますか、ギルド側もジンさんの実力を計ってる段階ですのでそれが終われば、直ぐにでもランクアップをしてもらいますね」
「あれ、ランクアップはまだ考えてないって言ってませんでしたか?」
「……ジンさんの事はジックリと見てから決めようと思ってたんですが、ギルドマスターがジンさんの事を気になったらしく、独自に調べて「これだけ実力があるなら早く上に上げた方が良い」と言われまして」
ギルドマスターに目を付けられたって、そんなに派手な動きしてたかな?
そう俺はこの数日間の動きを振り返ったが、特に目立つような事はしてないよなと首を傾げた。
「ジンさん、一応言っておきますがこれまでジンさんに渡した依頼。最初に毎度言ってますが「数日間猶予がある」と伝えてますよね? なのにジンさんは当日の、それもたった数時間で帰還してくるので、ジンさんの事は噂になってるんですよ」
「あれ~?」
そう言えば、毎回フィーネさんは依頼を渡す時に〝数日猶予がある〟と言ってたな……。
俺はそう思いだし、自分が知らず知らずの内にやらかしていた事に気が付いた。
「そして極めつけは今回の事ですね。同業者であるクロエさんを見捨てずに助けた事で、性格的にも悪くないと判断されましたので、数日以内にギルドマスターがジンさんを呼び出すと思いますよ」
「……マジか」
呼び出し確定と言われた俺は、その時何を言われるのか今から不安になった。
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