第106話 【訓練の成果・2】
数日後、模擬戦闘の当日。
俺は朝早くに起きて、訓練場で体を動かしていた。
一人で運動をしていると、「おはようございます」と挨拶をしながらユリウスがやって来た。
「ジンさん、今日の戦い楽しみで早く起きたんですか?」
「おはようございます。ユリウスさん、はいそんな感じですね。クロエと戦うの、久しぶりでどれだけ強くなったのか楽しみで早く起きたんです」
昨日も早くに寝ようとしたけど、結局寝つけたのはベッドに横になってから2時間くらい経ってからだった気がする。
それだけ俺は、クロエとの戦いを楽しみにしていたんだろう。
それからユリウスは俺の運動相手として、軽く打ち合ってくれて模擬戦闘前に良い感じに体を温める事が出来た。
「ジン君、今日はよろしくね」
予定の時間より一時間前にクロエは訓練場へとやって来て、自分の体の調子を確認すると休んでいた俺にそう声を掛けた。
「ステータスを見せてもらわなくても、クロエがかなり成長したって分かるよ。今日の試合、凄く楽しみだ」
「うん、私も楽しみ」
ニコッと笑みを浮かべながら、クロエはそう言った。
その後、予定時間となりユリウスや姫様、リオンやレーヴィンといった俺達の訓練に関わった人達が集まった。
「あれ、今日は兵士の数が少ないですね?」
「ジンさんは目立ちたくないとよく言ってるから、兵士の方達は今日は下げたのよ。だからここにいるのは、ジンさん達の訓練に特に関わった人達だけ呼んでるわ」
「そうだったんですか、ありがとうございます」
そう俺は姫様にお礼を言い、クロエと数m離れて向き合った。
そうして互いの準備が出来てるかユリウスが確認して、試合開始の合図が鳴った。
「速いッ!」
開始早々、クロエは接近戦へと持ち込むと、その素早い動きで手数で勝負をしてきた。
クロエが速い事は知っていたけど、開始早々クロエは【身体強化】をMAX状態で使用して来た。
クロエの奴、俺との長期戦は不利だから短期戦に持ち込もうとしてるな。
「折角、クロエ魔法の訓練してたのに剣術ばかりで良いのか?」
「ふふっ、大丈夫だよ。ちゃんと、戦いながら準備してたから」
「ッ! いつの間に、クロエ【無詠唱】で魔法を使えるようになったんだよ!」
クロエは【無詠唱】で魔法は使えないと、油断ていた俺はクロエが魔法を完成させて放ってくる少し前に気付き、なんとか回避する事が出来た。
あぶね~、まさかあのクロエが〝無詠唱魔法〟を使ってくるとは思わなかった。
「訓練の成果だよ。まだ大きな魔法とかは無理だけど、ちょっとした魔法位なら無詠唱で使えるようになったんだ」
「それは凄いな……いや、本当にね。そんなクロエに、俺も少し良い物を見せるよ」
そう俺は言って、装備している木刀を腰の鞘に戻し、一気にクロエへと接近して一瞬で刀を鞘から抜きクロエに攻撃をした。
アニメや漫画等で刀キャラが使う〝抜刀術〟を俺は、この世界様に改良した。
刀から抜く際に魔力を使い、より素早く、より強く刀を強化して攻撃を仕掛ける技を編み出した。
正直、これをすると腕への負荷が大きく、何度も出来る訳ではないが凄まじい威力を誇る俺の新技の一つ。
「魔力で強化してた剣が割れてる……ジン君、今の技凄い威力だね」
「ああ、自分への負荷は相当だけど、凄いカッコイイ技だろ?」
俺はそう笑みを浮かべながら言うと、クロエも笑い丁度距離も開いたのでそこから俺達は魔法戦へと切り替えた。
クロエは使える属性が少ない分、その少ない属性を徹底的にこの訓練期間中に訓練をしていて最初出会った頃の魔法と比べると、別人のような強さとなっている。
「クロエ、本当に魔法の腕をあげたな……正直、最初に会った頃のクロエを知ってるから、本物のクロエなのか驚いてるくらいだよ」
「ふふ~ん、魔力酔いしながらも訓練してたからね~。それにミスリルの腕輪のおかげで魔法の感覚を掴みやすくなって、魔法の上達速度が上がったのは本当に良かった~」
ミスリルの腕輪、付けるだけで魔法の威力が上がる最高の腕輪、とゲーム時代では、そういう認識だった。
しかしこの世界ではミスリルの腕輪というより、ミスリル製の道具を使えば魔力の感覚をより感じやすくなるというのを知った。
それを知った時俺は、威力だけ上げるつもりだったが、訓練でも使える道具を手に入れてその日は興奮して眠れなかったのを覚えている。
その後、俺とクロエの試合は続き、開始から一時間が経過した。
「クロエ、体力も以前よりも上がったみたいだな」
「魔法だけ訓練してた訳じゃないからね。ちゃんと体の方も鍛えてたから、前より持久力も上がったよ」
「そうか、ならその持久力が何処まで成長したのか試してみるか」
そう俺は言うと、魔法を同時に数十個発動させてクロエに放った。
一つ一つの威力は少ないが、当たればそこそこのダメージを負う。
クロエは瞬時に魔法の威力を確認すると、一つ一つ魔法を相殺して潰して行った。
そんなクロエに俺は更に魔法を続け、魔法の攻防戦を繰り広げた。
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