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第104話 【ユリウス対アンジュ・3】


 それから相談室へと移動して来た俺達は、フィーネさん達が淹れてくれたお茶を飲み一息ついた。


「アンジュさんって、どうやってあんな剣術を身に付けたんですか?」


「努力。自分の人生を変える為、剣ならそこら辺に落ちてる棒でも鍛えられたから、食事に余裕がある時は一日剣を振ったりしていたわ」


「そうだね。私とアンジュがあった時から、アンジュは暇さえあれば棒を握って剣の型の練習とかしてたね。アンジュの訓練時間を確保する為、アンジュの分もご飯を用意してその対価に剣を教えてもらってたよ」


 ユリウスは昔の事を思いだしながらそう言った。


「今だから言える事だけど、当時ユリウスと会った頃、ユリウスの事を嫌ってたから無茶な訓練とかさせてたのよね。当然、ユリウスはしらないからその訓練を普通だと思ってやってたけど」


「……やっぱり、そうだったんだね。普通子供が一日でやるような訓練をしてなかったから、薄々そうじゃないかなとは思ってたけど」


「ええ、でも別に酷い訓練をさせてた訳では無くて少しキツイやり方をしていただけよ。だから、その分早くその効果が表れていたでしょ?」


「まあ、それのおかげで姫様に拾ってもらえたけど」


 ユリウスは釈然としない気持ちの様で、ジト目でアンジュを見つめた。

 この二人、孤児の集まる場所で出会ったと言ってたけど、設定ではその辺りは詳しく書かれていなかったな。

 気になる所だけど、孤児の頃の事を聞いて二人が嫌な気持ちになる可能性があるしな……。

 そう俺が思っていると、顔に出ていたのかアンジュから「孤児の頃の話聞きたいの?」と逆に聞かれた。


「えっと……その、はい。ユリウスさんとアンジュさん、そんな凄い二人がどうやって孤児として生活していたのか気になります」


「別に面白い話は無いわよ? 普通の孤児があつまるような施設でユリウスと出会って、最初はユリウスが勝手について回って来てたのよ。それで次第に一緒に居る時間が長くなって、お互いに信頼して一緒に仕事とかをしていたのよ」


「孤児と言っても、私達の場合はスラム街で暮らすような場所ではなく、まあちょっとした施設と言いますか、そこまで管理はされてないけど雨風凌げる場所で過ごしていたんです。仕事もその施設が契約してるお店の掃除やお手伝いをして、お金やご飯を貰ったりしていたんです」


「そんな施設があるんですね。知りませんでした」


 孤児と言えば、親が居なくて街の隅っこで暮らすイメージを持っていた俺はユリウス達の話を聞いて、そんな世界だったんだなと思った。

 そんな俺にアンジュは「私達が暮らしていた所だけよ」と言い、ユリウスも言い難そうに「そうなんです」と言った。


「その施設自体はもう無いんです。随分前に色々と事件がありまして、施設を運営していた人達は全員捕まったんです」


「……もしかして、悪い系の人達がやってたんですか?」


「半分ですね。お店側は善意で協力していたんですけど、運営元の者達が色々とやっていまして、数年前にその施設は国が消したんです」


 成程、なんとなく理解した。

 でも逆にユリウス達はその施設のおかげで、他の孤児とは違いある程度の生活を保った状態で生きれたという事だろう。


「今となっては、あの施設のやり方は色々と不自然な所もありましたけど、あの頃は生きるので精一杯でしたからね。未来を見ていたのは、アンジュくらいだったと思います」


「私は当然、あの施設の黒い部分は知ってたわね。だから、信用せずに自分で生きれる術として剣術をずっと磨いていたのよ」


 昔の事を話してくれたユリウス達に対して、俺は「話してくれて、ありがとうございます」とお礼を言った。

 そうお礼をいった俺の視線には、アンジュを見て俯いて悲し気な雰囲気を出してるレイナさんが居た。


「アンジュさん、私には昔の事、頑なに話してくれなかったのにジンさんが聞いたら話すんですか……私って、そんなに信用されてなかったんですか?」


「ち、違うわよ。ジンにはユリウスが色々と迷惑を掛けたから、それのお礼というか、そのアレよ! 本当だったら、この事は絶対人に話す予定は無かったの!」


 アンジュは落ち込んだレイナさんに対してそう言い、ユリウスの方を見て「ユリウスのせいでおかしい事になったじゃない!」と怒った。

 それからアンジュはレイナさんを慰め、今度スイーツを奢るという約束でなんとかレイナさんの気持ちを回復させていた。

 その後、今日のやる事は他にない為、解散する事になった。

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