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別れた話

作者: りもん

 昨日、大好きだった彼女と別れた。本当に今つらくて生きる気力が出てこない。何かをしていないと涙が止まらないからここに自分語りを吐き捨てようと思う。

 昔からなんでもそこそこ上手くできた人間だったし自分自身でもそれを誇りに思っていた。勉強はいつもテストで十番目くらいをキープしていたし、中学から始めた美術も人より向いていたらしく上達も早かった。人間関係だって上手に立ち回って浅く広く敵をつくらずやっていた。人生の目標みたいな熱中できるものもなかったけど死にたくなるような挫折もなくずっとずっと順調だった。でも高校に入って違和感に気づき始めた。俺が選んだ高校は美術科がある高校だった。そこでデッサンというものを同じ美術科の人と描いていたのだが、正直に言って俺の方が上手かった。ああ、俺はやっぱりなんでもできるなあ、なんて自惚れてた。でも俺よりも下手な奴らがすごく楽しそうに絵を描いてた。本気で美術について考えてた。寝るまも惜しんで絵を描いていた。俺だって美術は楽しいと思ってた。軽い気持ちで美術科に入学したけれどそれなりにやる気はあったし向いてたと思うしそこそこ楽しかった。でも彼らは俺とは全然違って本気で絵と向き合って、勉強が危うくなってもずっと絵を描いて成長していた。俺は自分がなんでここにいるのかを考え始めるようになってしまった。でも深く考えず学生生活を謳歌していた。

 長々と自分のことを描いてしまったが、次は彼女の話をしたい。もう正確には彼女ではなくただの知り合いなのだが便宜上、彼女と呼ばせていただく。彼女とは高校一年生の時に出会った。同じクラスで同じ美術科で同じ美術部で三年間友達として過ごした末にお付き合いさせていただいた。出会ったばかりの頃、彼女は俗的な表現をするといわゆるオタク女子だった。俺は正直ああいう人がすごく苦手だったので上部だけの付き合いで済ませていた。2年生になって彼女はすごく変わった。ものすごく痩せて、軽く化粧もするようになって見違えるほどに可愛くなった。Twiiterでよくみるオタク垢抜けた選手権なるものを生で見ているようだった。そんな彼女が一年生の時よりもすごく積極的に俺に話しかけてくれるようになって俺もすごく浮かれてた。最初は見た目に惹かれて。でも話していくうちに人そのものに惹かれていくようになった。たくさん笑うしよく喋るし感情豊かだしそして何より美術を愛してた。誰よりも真剣に取り組んでた。俺は彼女に愛情と羨望の感情を抱いていた。もう3年生になる頃には彼女しか見えていなかった。

 彼女と付き合うようになったのは高校三年生の終わり頃。もっと前の彼女との苦い記憶があってなかなか踏み出せずにいたけれどここで言わなかったら一生後悔すると思って自分から言った。彼女も俺のことを好きだと言ってくれた。彼女曰く一年生の時から好きだったそうだ。一年生の時にコンクールに出品する作品を描く機会があり、その時に彼女は自画像を描こうと思い眼鏡からコンタクトに変えた。その時に俺が何気なく言った、すごい似合ってる。かわいい。って言葉がすごく響いてそこからずっと振り向かせるために頑張っていたらしい。本当に本当に嬉しかった。付き合う前からお互いがお互いのことを好きなのはなんとなくわかることだけれどまさかそんな少女漫画みたいな理由だと思わなかったし昔から想ってくれてると思っていなかった。彼女は俺との結婚をすごい真剣に考えてくれて俺もこの人と結婚してこの人をサポートするんだ!って思うようになって色々やるようになった。

 また自分の話に戻る。高校三年生というと受験シーズン真っ只中で、俺はできるだけはやく受験から解放されたいという思いからAO入試を申し込んだ。美大のAO入試ではポートフォリオを作成して学校に送るのが一次審査になっていることが多い。俺の志望校もそうだったため、自分の作品を見直したり志望動機を考えたりしていた。そこで俺は気づいてしまった。まともな作品が何もない。そしてまともな動機もない。デッサンのような基礎的な部分は人より優れていたけれど、「作品」を作るのが本当に無理だった。好きなものや興味のあることが特にない上、他の人に比べ絵に対する思いも劣る。だからいつも作品を作ろうとすると、稚拙でどこかで見たことのあるようなものが出来上がってしまった。結局ポートフォリオにはデッサンしか載せることができなかった。志望動機もテンプレートみたいな文章を提出した。AOに応募した美術科の人は十人くらい居て、先生も一次はなかなか落ちないよ〜!なんて言っていた。でも俺は一次で落とされた。一次で落とされたのは俺だけだった。割とショックではあったが一般試験では絶対受かると思っていたため、深く悩まなかった。ちなみに彼女はAOで早々に合格していた。

 そして受験期にもかかわらずたくさんデートして無事合格して彼女と同じ大学に入学した。日本の中ではかなり上の方の美大で学ぶことのできる内容もレベル高いし面白くて友達もたくさんできてそこそこ充実していた。でも会う人会う人みんな美術が大好きで俺の心の奥底にある不安は大きくなっていた。でも彼女がいるから真面目に作品を作ったし彼女がいるから頑張ろうと思えた。そしてちょうど一週間前、別れる一週間前にこのことを彼女に打ち明けた。美術がもしかしたらそこまで好きじゃないかもしれない、俺にとって課題は終わらすものでしかないって。きっとわかってくれると思ってたし誰よりも信頼してたから初めて人に打ち明けた。でもダメだった。どんなに忙しくても優しかった彼女は急に冷たくなって別れを切り出された。彼女は美術の高みを二人で一緒に目指したかったみたいで、あなたみたいに安定志向の人が存在するのも理解してるし、変だとも思わない。でも隣にいることはできないって言われた。本当に辛かった。自分でも嫌だった自分を勇気を出して打ち明けたら自分にとって生きる意味、全てだった人に否定された。彼女との将来のためだと思って必死にお金貯めてたけどその必要も無くなっちゃった。半年前から考えてた誕生日の計画ももう意味無くなっちゃった。写真フォルダーには彼女との写真しかなくて携帯のパスワードだって彼女の誕生日だし使ってる筆記用具や手帳だって彼女からのプレゼントだし今の口調ですら彼女のが移ってしまっている。どこに行っても何をしても彼女の面影が残っている。価値観の違いなんて便利な言葉使いたくないけれどこれでしか表現できない。しかも生き方に関わるような違いだからもう絶対に相容れない。彼女との日々は最初から終わるものだったなんて。趣味もやりたいこともなくて、彼女だけが支えだったのに。その支えに否定された。俺は、俺はあなたと一緒にいれたらただそれだけでよかったのに。本当にこれからどうしよう。


 

こんなズタズタな文章を読んでくださっている優しい方、本当にありがとうございます。この場所がこういうことを吐き出す場じゃないのはわかっていて、それでもこうやって書き留めないとまた泣き崩れてしまうので書かせていただきました。本当は推敲とかもしたいんですけどしたらしたで泣き崩れるので文章は読み返せません。最後まで拙い文章にお付き合いいただいたくださり本当に本当にありがとうございました。あなたには、いいことがありますように。

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