魔王との戦い
王都付近の平原
「【治癒魔法(笑)Lv8】! 相手の右翼は氷系のモンスター多いから炎系の子たちは右翼をせめてね~」
「おっ!後方から大規模魔法打ってきそうだよ。カーバンクルさんよろしく~」
「おーい、ケルベロスちゃん突っ込みすぎ。少し抑えて~。」
Lv8は魅了したモンスター達と意識を連結して軍隊の様に自由に扱えるようになるから戦争には有用なんだけど、あんまり好きじゃないんだよね。疲れるから。
しかし、鳥系のモンスターの視点を使って上空から戦場全域を把握出来るのは美味しいよね。魔力視使えば障害物も関係なくなるし。
そろそろ5万ぐらい減ったかな。なかなか魔王出て来ないなぁ。3万ぐらい減ったら出てくると思ったのになぁ。
Lv8使うの疲れるから早く出てきて欲しいなぁ。ほらほら、魔王軍のモンスターたちは脱走者が出始めてるよ。このままいくとすぐ壊滅するぞー。
おっ!後方に強い魔力反応あり!これはついに出てきたかな。
ってやべ!!思ったより魔力反応が強い。おいおい、なんだあのでかい火の玉は。魔力込めすぎだろ。
「撤収!!撤収!!バリア部隊は全力で魔力バリア張って!!他の子達は全力で撤収!!」
ドッゴ―――――――ン
おいおい!火の玉の射線上にいたモンスターが全員やられちまったぞ。
「くそ!!何人やられた!!魔王軍の強さは予想どおりだったけど、魔王が予想以上の強さだった。皆ごめん。全員城門近くの後方で待機して魔王軍の残党が攻めてきたら抑えといて。あとは僕が片付ける。」
城門付近に移動するモンスターを見ながら僕は少し後悔していた。
あー、くそ。ミスった。もっと僕が前に出ておくべきだったな。体感では3000匹ぐらい死んだか。皆の仇は絶対にとってやる。
魔王は、あれか。何か黒い炎で包まれた人型モンスターって感じだな。何故か目だけは炎に覆われてない。
「おい!遅めの登場だな魔王。ここからは僕が相手してやるから覚悟しな。」
「ほざくな、人間。ビーストテイマーである貴様がモンスターも使わずどうやって我を倒すつもりだ。そもそも、貴様は武器を何も持っていないではないか。その状態で我に勝とうとは愚かなり。貴様もすぐに消し炭にしてくれる。」
「愚かかどうか、自分の体で試してみな。」
そう言うとひろきは一瞬で魔王の懐に入り魔王の腹部を素手でぶん殴った。
「んなっ!一瞬で我の懐に入っただと」
「魔王さん、いいことを教えてあげるよ。僕はね。僕のモンスターが殺した経験値を横取りできるんだ。だから、こういう集団戦があるたびに僕のレベルは上がりまくってきた。それに、僕はこの十年で強者と呼ばれるもののほとんどを倒してきた。だから温室育ちの魔王が僕に勝てるはずが無いんだよ。」
「そんなこと、があって、たまるかぁあああああ」
魔王の周囲に5つの火の玉が出現する。しかし、僕が魔王を殴る方が速い。一瞬の隙をついて魔王を殴りまくる。
「えっ、ちょっと、まって、痛いっ、痛いっ、黒炎の、衣、まとってるのに、なんで痛いのぉ。」
「そういえば、さっき僕が武器を持っていないって言ってたよね。僕は武器を持ってないんじゃなくて持つ必要が無いんだ。僕の力に武器が耐えられないからね。」
「そんな、馬鹿な事あるかぁぁぁ」
魔王の周囲に炎柱が上がる。ちょっと熱いな。いったん避けるか。
「もういい、分かったお前が強い事は分かった。それなら私の最強の一撃で葬ってやる。言っとくがお前が避けたら後ろの王都が跡形もなくなるからな。絶対避けるなよ。」
おおぅ。そういわれると避けたくなるが、流石に王都を消されるわけにはいかないから我慢しよう。
「くらえ!消し炭になれ!、私の前からいなくなってください。お願いします。」
あ、なんか魔王の目が死んでる
「メギド・フレイム」
さっきの火の玉とは比べ物にならないほどの炎の塊が僕に向かってくる。
メギド・フレイムはまさに地獄の炎と言える熱量を持っており、これを食らったら僕は死ぬなと直感した。
「魔王。僕は君を侮ってたよ。まさかこれほどの力を持っているとは思わなかった。」
魔王の死んだ目に光が差す。
「だから、僕も、本気を出すよ。」
「【治癒魔法(笑)Lv9】」
僕の拳がメギド・フレイムの炎にたたきつけられる。
その瞬間、時が止まったかの様に炎が静止する。
「一体、何が…」
炎を止められた魔王が信じられないものを見る目でこちらを見ている。
「【治癒魔法(笑)Lv9】は万物を魅了し、使役する。魔法も例外ではないんだよ。それじゃぁ、この炎は君に返すね」
そういって僕はメギド・フレイムを魔王に向かって解き放った。
「ふざけるな!ふざけるな!ふっざけるな!それの何処が治癒魔法だ!全く、何も治癒してないじゃないかぁ。」
メギド・フレイムの炎が魔王自身を焼き尽くす。
「さようなら、魔王。君は強かったよ・・・。って、あれ?ひょっとしてまだ生きてる?」
メギド・フレイムの炎が消えた後、そこには15歳ぐらいの少女が残っていた。
「ビーストテイマー。私の負けだ。メギド・フレイムを防ぐのに黒炎の衣も使い切ってしまった。私を殺せ。今の私には人間の少女程度の力しかない。貴様なら容易に殺せるだろう
「そうか、わかった。」
僕は拳を少女に叩き付け
「【治癒魔法(笑)Lv9】」
少女を自分の支配下に置いた。
「なぜ…、殺さない。」
魔王が不思議な顔をして僕を見上げる。
「僕は少女を殺す趣味はないんでね。君は僕の支配下にあるから一つだけ制限をかけさせてもらうよ。」
「二度と人間を傷つけるな」
「さて、これで君は人間を傷つけることが出来なくなった。ここから先、君がどう生きるかは君の自由だよ。幸い魔王の本当の姿が君だと言う事を知っているのは僕だけだ。ここからは人間に擬態して生きるもよし。魔族として生きるもよし。好きにしたらいいよ。」
「さて、君はどうしたい?」
「私は…あなたと一緒にいたい。」