第六話 フウ・ギルバートは牙を剥く
時はグレンが朝市に行っている頃。
場所はランの宿屋――入口。
現在、フウ・ギルバートが騎士達と共に、ここにやってきている理由は簡単だ。
「噂通りなのね、ラン……あなた、とてもかわいいわ」
「な、なんでフウ様がここに?」
と、震えながら言ってくるのはランだ。
フウは騎士達を下がらせたのち、そんな彼女へと言う。
「私にはあなたが必要なの……それだけの理由よ?」
「……っ。い、いや……です」
「貴様! フウ様の命令に逆らうのか!」
と、会話に参加してくる一人の騎士。
全くもって、邪魔なことこの上ない。
フウはその騎士を一睨み、再度下がらせる。
次に何か言ったら殺そう――そんな事を考えながら。
そして、フウは再びランへと言う。
「どうして嫌なの? 私はランが欲しいわ――とっても欲しいの。私のところにくれば、ランは幸せになれるのよ?」
「……い、いや。わた、わたしは……っ」
「どうして私から距離を取るの?」
「う、噂を……っ」
「噂?」
「あ、あなたに連れて行かれたら……殺される、って――血を、全部抜かれて」
「酷いわ……」
フウは自らの胸が、ズキリと痛むのを感じる。
いったい誰が、こんなにも酷い噂を流したのか。
(私、みんなからそんな風に思われているのね……残念だわ、とっても残念なのよ)
フウはランが言ったような事は、絶対にしない。
なぜならば。
「私はそんな面倒なこと、しないわ……しないのよ――《刀剣精製》」
フウが最後に呟いた直後。
彼女の周囲から生えたのは、無数の剣……そして、数多の刀。
フウのスキルにより顕現したそれらは、周囲の騎士達数名を巻き込む。
けれど、それらは確実にターゲートへと突き刺さる。
フウはその様子を見たのち、ランだった物へと背を向ける。
そして、生き残っている騎士達へと言う。
「それはちゃんと持ってきて。城に持って帰ったら、ちゃんと下準備もしておいて欲しいわ」
「さ、作業とはその……ち、血を――っ」
「そうよ。何か問題でもあるのかしら?」
「い、いえ! や、やります! やらせていただきます!」
と、フウとすれ違い様に宿屋の中へと入っていく騎士達。
まったく、トロくて困ったものだ。
それに比べ、馬車を守ってくれた男。
彼は有能で非常によかった。
(きっと、ランから作る美容ポーションの下準備も、騎士達以上にやってくれるわ)
となると、フウの中にはものすごい後悔が渦巻く。
なぜならば、馬車を救った男性の名前を聞いて居なかったからだ。
さて、あの男を見つける何かいい手はないものか。
と、フウはここでとある手段を思いつく。
それは――。
「そこのあなた」
「は、はい!」
と、フウの方へと駆け寄ってくるのは騎士だ。
彼女はそんな騎士へと言葉を続ける。
「指名手配して欲しい人が居るの」
「えっと、誰でしょう?」
「名前はわからないわ、わからいの……でも、顔なら覚えているわ」
「そ、それでは、似顔絵を描かせましょう!」
「そうね、それがいいわ」
描いた似顔絵を騎士達全員に共有させる。
そして、街中にも賞金をかけて貼りだそう。
(これならきっと見つかるわ……でも、もしも勢い余って殺されてしまったら)
まぁ、その時はそれでいい。
なんせ。
「この世界はわたしの玩具だもの……」
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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