第五話 フーカの裏の顔
時は翌日、早朝。
場所は国境の街フーカ――その商店街。
現在、グレンは朝市で買い物をしていた。
「えっと、野菜とハーブを買ったから……あとは、この肉とこの肉か」
と、グレンはランから貰ったメモにチェック。
そのまま、次の店へと向かう。
要するに。
グレンは今、おつかいをしているのだ。
そして、これこそがランの頼みだった。
(食材の買い出しとか、かなり久しぶりだな。それも知らない街だから、いまいち上手く行かない)
そのせいか、かなり時間がかかってしまっている。
さらに、そのせいでかなり疲れる。
(まぁ、文句ないけどな。むしろ、その疲れもどんと来いって感じだ。その分、ランへの恩返しになるはず)
懸念事項は一つ。
この朝市に慣れているラン。
彼女ならば、こんなに時間かからない説。
(ま、まぁ今はそれを考えないようにしよう)
などなど。
グレンがそんな事を考え、目的の店で肉を見始めた。
まさにその時。
「ん、なんだあれ?」
朝市の外れ。
裏路地の近くで、騎士達が少女達を囲んでいるのだ。
どうにも嫌な予感が――。
「おい、兄ちゃん。あんまり見ない方がいいよ」
と、言ってくるのは肉屋の店主だ。
彼はこそこそとした様子で、グレンへと言葉を続けてくる。
「兄ちゃんは外から来た人間かい?」
「あぁ……昨日来たばかりで、まだろくに街の中を見てない」
「だったら注意しておくんだね。この街で騎士連中にはかかわらない方がいい」
「どうしてだ?」
グレンの第一印象では、騎士達に悪い印象ない。
悪い印象を持ったのは、あくまでフウのみだ。
と、そんな事を考えていると。
「周りを見て、何か思わないかい?」
と、言ってくる店主。
グレンは店主に従い、周囲を見渡す。
「特に何も……いや」
言われるまで見逃していた。
そういえば、フード付きのローブを着ている者が多い。
それに、女性の姿が見えない。
「気がついたみたいだね」
と、言ってくる店主。
彼はため息一つ、グレンへと言葉を続けてくる。
「フードで顔を隠してるのが、全員女性なんだよ」
「なんで、みんな顔を隠してるんだ?」
「この街では、美しくて若い女性は攫われちまうのさ――領主フウの命令で、城へとね」
「なるほど。それが嫌で、女性はみんな顔を隠しているわけか……それで? 攫われた女性はどうなるんだ?」
「わからん――帰ってきた者はいないからね」
「…………」
となれば、すでに死んで居るか。
もしくは奴隷として、城の中で使われているか。
なにはともあれ――。
「おい、兄ちゃん! どこ行こうとしてんだ!?」
と、グレンの手を掴んで来る店主。
店主はそのまま、彼へと言葉を続けてくる。
「あの人を、騎士から助けに行く……なんて、そんな事は考えないでくれよ」
「……理由は?」
「この街は連帯責任なんだ。もしも誰かが騎士にたてつけば、住民全員にペナルティが課せられる――以前は、たてついた奴と同じ年齢の奴が、一斉に処刑されたんだ」
「っ」
「兄ちゃんの気持ちはわかるし、この街の住民として嬉しい。だけど、頼むから……この場は我慢してくれ」
時はあれから十数分後。
現在、グレンはランの宿屋へと歩を進めていた。
考えていることはいつ。
(さて、フウをどうするか)
フウが完全に真っ黒なのは、これで明らか。
あとは、どのタイミングであいつを潰してやるかだが。
とりあえず、さっさと宿屋に帰ろう。
買った肉が腐ったら大変だ。
と、グレンがそんな事を考えながら。
宿屋へ続く最後の曲がり角を曲がった。
まさにその時。
「……なん、だ?」
ランの宿屋の前。
その周囲に多くの人が集まっている光景。
それがグレンの視界に入ってくるのだった。
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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