第三話 フウ・ギルバート2
あれから数十分後。
現在、グレンはフウが治める街――国境の街フーカへと向かっていた。
こんなに時間がかかっている理由は簡単。
「…………」
「…………」
こうして、グレンはフウと向かい合い。
絶賛無言で馬車に揺られているからだ。
それにしても。
(こいつ、さっきから俺を見つめて何を考えているんだ?)
まぁいい。
喋らないなら喋らないで、考える事が沢山ある。
まず考えなければならないのは――。
フウ・ギルバート。
この彼女の名前についてだ。
ギルバートと言えば、かつてグレンを殺してくれたリグレットの仲間。
そして、グレンの仲間でもあった復讐対象だ。
(子孫の可能性、充分あるよな?)
とはいえ。
仮に子孫だったとしても、まだ復讐するかはわからない。
繰り返すように、フウが善人ならば復讐するのは論外だ。
(そんな事したら、俺もクズの仲間入りだ。でも、もしもフウがクソ野郎なら……)
地獄に落してやる。
それこそ、地獄から見ているギルバートが発狂するほどに。
(どうしてやろうか。最終的に《ヒュプノ》で俺に従順な奴隷にすることは、決定事項だ)
とまぁ、ここでグレンは一つ。
フウの内面について、やや気になる事があった。
それは――。
「なぁフウ、ちょっと聞きたい事があるんだが」
「あなたは私に興味があるのね……どんなこと?」
と、首をかしげてくるフウ。
グレンはそんな彼女へと言う。
「フウは強いのか?」
「どうしてそう思うの?」
「さっきの戦闘中、騎士達がフウに助けを求めてただろ? あんなの……騎士よりフウの方が強くないとありえない」
「そうね……強いわ。少なくとも、あんなゴミ達よりもずっと強いのよ」
と、つまらなそうに言ってくるフウ。
なんかもう、聞くまでもなくアレだが……まだ決めつけるのは早い。
グレンは再度フウへと言う。
「じゃあさ、どうしてあの時――騎士達を助けてやらなかったんだ? 俺が来なかったら、あいつら全滅してただろ」
「そうね……そうなったら困るわね」
「そうだろ? だったら――」
「だって、そうしたら馬車を操ってくれる人が、居なくなってしまうもの」
「…………」
「それに、男が死ぬととっても臭いわ……臭いのよ」
ダメだこいつ。
ギルバートの子孫だ。
だが、まだ希望はある。
ワンチャン、街の人には好かれている可能性がある。
例え騎士達に嫌われていても。
外面良くて、いい領主やってる説もあるのだから。
(それに、助けてやった俺をこうして、馬車で街まで運んでくれてるしな)
などなど。
そんな事を考えている間にも。
馬車はフーカの街へと到着するのだった。
「本当に街の入り口まででいいのですか?」
と、言ってくるのは騎士だ。
グレンは馬車から降りたのち、そんな彼へと言う。
「ちょっと街の中を見たいんだ」
「そうですか……このまま、我等の宿舎で歓迎でもと思ったのですが」
「ありがたいが、遠慮しておくよ」
ちょっと口を開けばクソみたいな言葉ばかり。
そんなクソ人間(仮)こと、フウとこれ以上同じ空気を吸いたくない。
それにまぁ。
街を見たいというのも本音だ。
(俺が魔王を倒してから、どれくらい経ったのか。そして、この世界の今――あとは、街の人からフウの事について聞きたいしな)
「それでは、我等はこれで」
と、馬車と共に進んで行く騎士達。
グレンはそんな彼等に手を振った後、フーカのメインストリートへと眼を向けるのだった。
「街は綺麗だな――少なくとも、外面は」
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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