第1話 近づいて来る
それから時間が経過した。
「はあ、誰もいない⁉︎」
誰もいなかったし、もちろん交番もなかった。かなり疲れた。僕はゲーム専門だから運動能力は最底辺なのに。スタミナ切れだ。アイテムで回復しないと。
……は?
「ホントな、誰もいねーな、俺らの住んでるここってこんなに田舎だっけ?」
「いや、都会と田舎の中間ぐらいだけど」
これは明らかにおかしい。迷うにしてもそんな山奥でもないわけだし人がいないばすがないのだ。家が並んでいてそれに多少やりすぎと思ったが、家にも訪ねた。インターホンを押したが誰もいないという。意味がわからない。
「そうか、辺境の地でも来てしまったかな」
「あるいは地下迷宮てね」
「それはない」
そして僕はそれとなく辺りを見渡した。
「暗くなってきたね」
食堂で食べ終わった頃はあんなに太陽眩しかったのに。
それに相変わらずスマホは圏外のままだ。
幻は時間を気にして、左腕につけているデジタルの腕時計を何度も見ている
「あー!もう五時五十分だ。くっそー帰りてーのに」
「僕も帰りたいよー」
この意味のわからない状況はなんだよ。誰か教えて。
僕と幻は頭を抱えて、何かこの状況を抜け出す方法は無いかと考えていたが、特に何も思いつかず、あっという間に時間が経っていった。
「あ、六時になった」と幻がぼそっと呟いた。
六時。
その時間に僕らはこれから翻弄される事になる。
さて夕方の六時の別名を知っているだろうか。答えは黄昏時と逢魔が時だ。黄昏時は今は関係ないから省くとして、今大事なのは逢魔が時の方だ。逢魔が時とは妖怪や幽霊などが出て来やすい時間帯の事である。
『こんな事はただの迷信だ!』と思うだろう。僕もパワースポットと同様にそう思っていた。しかしもう既に始まっていたのだ。僕はもうそうゆう存在と触れ合っていたのだ。見えなくても存在し、異質の雰囲気を醸し出しながら接近し、相手を恐怖に引き込み、精神に多大な負荷をかける化物。
怪しく妖しい恐怖の時間なのである。
「今日はもう帰れないのかな」
最悪野宿も考えるかとか、野宿したら体中が虫だらけになりそうとかそんな事を考え、帰る方法だけは思いつかず、はぁと二人ともため息をついた。
するとどっからともなく。ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラと、どんどん音が近づいて来る。
「なんだなんだ⁉︎」とかなり焦る幻。
「馬車かな?」とボケる僕。
ガラガラガラガラガラガラガラガラ
「あ!聡あそこだ!」