何でもかんでも食べじゃダメ!
歩く。
ただ歩く。
ひたすら歩く。
「あ~!! 誰か水をくれよ!」
ゴブリンを撲殺してから結構歩いた。
その証拠に太陽が高い位置にあり、今が昼だと推測できる。
「何か果物でもあったらいいのにな……」
そう思って辺りを見渡すと、もぞもぞ動いている草が目に入る。
これって食えるのか?
動く草と目と目があう。
いや、草に目はないけどなんかそんな気がした。
そして何もなかったようにわさわさと来た道を戻っていく。
ガシ。
「お前って逃げたりするんだな」
俺の手の中でわさわさと抵抗している動く草。
「……汚れとか気になるから洗いたいけどまあいいか」
いただきます。っと一礼をしてから口に入れてみる。
それを思いっきり噛んでみる。
「うん」
思いっきり草だ。
少し青臭さはあるのもの、そこまで気にならなく、食べれる部類に入ると思う。
他人にお勧めする自信はないけど。
そこまでみずみずしくないので水分補給にはならないけど、ないよりはましだ。
「よし、歩くか」
物を口にしてか、少し疲れが取れたので俺はまた歩き出した。
木々の間をくぐり、膝くらいの高さの草花をかき分けながらすすむ。
獣の声がしないのが安心だ。
こういう異世界の自然、森とかって猛獣がギャーギャー騒いでいるイメージがあったりするんだけど。
「物凄く強力なモンスターがその辺の生物を片っ端から食べていたりして……」
ハハハと笑いながら歩いていく。
「お、この木何か実がなっているじゃん」
食料を探しながら歩いているとオレンジ色の長細い実が沢山ついている木を見つけた。
そのままじゃ高くて実が取れないので、そこらへんに落ちている木の枝で引っ掛けて落としてみることに。
「よっと」
ジャンプをしながら棒で実を思いっきり叩く。
実はぶらぶらと揺れただけで落ちてこなかった。
「難しいなぁ……」
そして何度かパシパシと実を叩いていたが、一向に落ちてこないので木に登ることにした。
「木登りとか小学生以来だな」
懐かしい記憶が蘇る。
あの時は毎日のように外に遊びに行って色々な事をして遊んでいた。
それは今じゃ……
「ま、楽しいから何でもいいけどね」
子供の時みたいに軽々と登れなかったが、一応は実を取ることが出来た。
「上る時に虫とかいなくて助かった」
昔は虫とか触れたのだが、今は全然触ることが出来ない。
むしろ苦手だ。
そんな事はどうでもいいとして、今は手に入れたオレンジの実だ。
初めて見るこの果実に困惑しながらもまずは皮をむいてみる。
バナナみたいな形をしていたから簡単にずるっと剥けるものだと思ったけどそう上手くは食べさせてくれないらしい。
……バナナも品種改良で剥けやすくなったって聞くし、野生の物は現代の物と一緒と考えるのは良くないな。
まあ冷静に考えたらわかるわな。
「さて。いただきます」
少し雑に向いたオレンジの果実を口に含む。
口いっぱいに広がる大きな酸味。
食感はぐちゅぐちゅとまとわりつくよう。
そして最後に鼻に来るゴーヤ並みに苦み。
「ウェ……マ、マズイ……」
でも吐いたり食べ残したりするのは俺のポリシーに反する。
なので気合いと根性で涙目になりながら完食した。
「本当に水が欲しい」
俺は切実にそう願いながら、俺の行動を嘲笑っているような森の中を歩く。
歩いていて川とかありそうだと思うのだけれど全然ない。
最悪、泥水でもいいから欲しいと思う俺は末期なのだろうか。
自分は末期なのか、まだ正常なのかを真剣に考えていた時、体に電気が走った。
「う!?」
それは強い腹痛だった。
今まで特に何もなかったのに急に来たものだから混乱した。
俺はその場で結構長い時間うずくまっていた。
「次から異常を感じたら吐くべきだな……」
恐らくあのオレンジの長細い実が毒だったのだろう。
味が変だったし。
体中の体液を全て出し切った。
頭が痛い。
眩暈がする。
それでも無理やり体を動かそうとした。
足が思うように動かない。
そう思っていたら急な眠気を感じた。
寝てしまったら永遠に起きれないんじゃないかと思ったけど、睡魔には抗えなかった。