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 俺は田中カイト。

 ごく普通の学生だ。

 いや、普通というよりはオタクか。

 

 アニメやゲーム、漫画やラノベが大好きだ。

 なので学校から帰った放課後や休日はそういった娯楽作品で一日を潰している。


 親からそんなことしないでたまには友達と遊びに行ったらどうなの。と言われたことがあるが、俺は友達よりも娯楽作品の方が大事なので、気が向いたらね。と涙を流しながら答えている。

 

 べ、別に友達が居ないわけではないし。

 俺は友達を作る努力をしてないだけですし。


 ……はぁ。


 俺は誰に向かって言い訳をしているのだろうか。


 そう思って辺りを見渡してみる。


 一面緑。

 どこを見ても緑。

 木。

 木しか見当たらない。


「俺……学校から帰っている途中だよな」


 そうなのだ。

 俺はついさっきまで授業を受けていた。

 そして授業が、学校が終わり、まだ読んでいないラノベ作品が家で待っているので胸をときめかせながら家へ帰っていった。

 そしたら一面緑だった。


 うん。

 訳わかんないよね?

 何故訳がわからないかわかったって?


 それは俺が一番わけわからないからさ☆


「ああああああああ! ちくしょう! どうなってるんだよぉ!!!!」


 俺は今の現状を見て思いっきり叫ぶ。


 俺の声に驚いたのか鳥たちが一斉にはばたく。


「うぉ!?」


 それにビビった俺は尻もちをついた。


「な、なんだ鳥か……驚かすなよ」


 俺を驚かせた鳥を驚かしたのは俺なのだがそこまでは頭が回っていない。


「とりあえず助けが来るまで待つか」


 そう決心した俺はスマホを探すが……。


「あれ。おかしいぞ。荷物がない……」


 俺の持ち物は何もなかった。

 通学用のかばんとポケットに入っていたはずのスマホと財布。

 それらが一切なかった。


「この森に来る時に落としてきたんだろうな」


 まず急にこの森に来ること自体がおかしいのだがなんか色々と気にしたら負けなような気がしてきた。

 

 しばらくその場にポツンといたがやることが無さ過ぎて暇だ。

 なのでそこら辺を探索してみることに。


「虫とか出てきたら嫌だなぁ。あいつら何考えているのかわかんねーうえに姿がキモイもんなぁ」


 道端を歩いていたら急にカナブンが俺の顔に止まってきたのを思い出す。

 あの時は怖かったな。

 何事だろうと思って顔に引っ付いたブツを持ってみたら6本の足をわしゃわしゃとするんだもん。

 しかも「やぁ! 元気か!」みたいな感じで、前足って言うのかな。

 それを左右に大きく振ってくるし。


 勿論その後、天高く放り投げたら元気に羽ばたいていきましたとさ。

 めでたしめでたし。


 ……いや、めでたくはないか。


「はぁ……」


 人って現実を見たくないときに妄想やら過去の思い出に浸るよね。


「家に帰れるのかなぁ」


 ザッザッザッと草の生えた道を歩いていく。


 目的のない道を歩いているのが途中で無謀のように思えたが、特に何も行動をしないよりかはましと思う。


「喉が渇いたな」


 そう思っても飲み物は何もない。

 

 このまま集落にたどり着く前に飢え死にするのでは?

 そんなことを考える。


 いや、待てよ……。


 俺の中で嫌な想像が頭をよぎる。


 そもそも集落が存在するのか?

 その現象が今流行りの異世界転移だとするならば?

 それなら急にこの森に来た理由も説明が付く。


「ははは……流石にそれはラノベの読みすぎか……」


 俺もその系統の作品を読んでいて異世界に行けたらどうしようって妄想するけど流石にそれが現実に起きる訳がない。

 

「異世界行ってみたいなぁ」


 そして最強の武器や能力であらゆる敵をバッタバッタとなぎ倒し、超絶可愛いケモミミ子達とハーレムを作るのだ。


 ……駄目だ。

 そんな妄想しても虚しくなるだけだ。

 

 自分の頭が可哀そうな子だと認識しながら森を歩いていく。


 こんなに歩いたのはいつくらいだろうか。

 永遠に、何日も歩いている気がするが、自分の影の長さがそれほど変わっていないので大した時間は歩いていない様子だ。


「あーもう! 疲れた! そして喉が渇いた! 水をくれ水を!」

 

 地面に汚れることを覚悟して四肢を思いっきり投げ出す。

 

 その時、ガサガサと音が鳴る。

 俺が今歩いている草むらをを突き進むような音だ。


「……!」


 俺はびっくりして寝ころんだまま音のなる方向を見る。

 そしていつでも逃げれるように体を起こす。


 その音は段々近づいてきて姿を現した。


「は?」


 何という事だろう。

 草の中から草が出てきた。

 いや、何言っているのか分からないかもしれないが、俺も何を見ているのか分からないのだ。


 そこらへんにいる雑草みたいなのが動いているのだ。

 それも動物のように。


 その動く草は俺の方に近づいてきた。


「ひぃ!?」


 俺は驚いてその動く草を蹴り上げた。

 それは空高く飛んでやがて地面に落ちた。


「草ごときがラノベ読みたさで全力で帰る帰宅部の脚力をなめるなよ!」


 自分で言っていてなんとダサいセリフだろうか。

 初めて見る動く草を倒した俺は満足げにまた地面へ寝ころんだ。


「ん? あれ?」

 

 待てよ……。

 動く草っていたっけ?

 俺が知っている動く植物は食虫植物のハエトリソウと後は……オジギソウだけだ。

 それでも葉の一部軽く動かすだけ。

 今見た草のように元気に体ごと動かない。

 そもそもあのような植物を地球で見たことがない。


 と、という事は……。


「ま、まさか本当に異世界に来てしまったのか……?」

動く草は栄養価の高い土を探して行動します。

特に害はないのですが主人公を驚かせたという理由で蹴られてしまった可哀そうな子です。

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