波乱のお茶会前編
現在、ウェブル家のお屋敷の白い薔薇が咲き誇った庭で紅茶を飲んでいます。
1人で。 もう一度言いますよ。 1人で。
かれこれ、1時間ぐらい。
あれっ? おかしいな、目から汗が…………。
ロイ様よ。 まだですかーーーー!
はーやーくーきーてーーーーー!
ウェブル家に着いたのは今から1時間程前だ。
着いた瞬間から家主に挨拶もできず、メイドにうながされ屋敷ではなく今いる白い薔薇が咲き誇った庭に連れてこられた。
ロイ様は用事があるらしくもう少ししたら来るというのであちらで紅茶を飲んで待っていてほしいとのことだった。
あちらというのは白い薔薇がメインの庭にとても不釣り合いな小さなテーブルが1つと椅子が2つ隅っこに置かれている場所だろう。
テーブルの上にはお菓子が入っているであろうバケットにティーカップが1つ。
取り敢えず、メイドに従いロイ様を待つために椅子に座り、紅茶を飲んだ。
そして、ロイ様はまだ来ず1時間が経ちました。
「ロイ様……まだかしら?」
「申し訳ありません」
独り言だったのだが、メイドに聞こえていたみたいだ。
このメイドさんが悪いわけではないのに申し訳ない。
それにしても、ロイ様は何かあったのかしら?
お茶会に誘ったのはロイ様のはずなのに……当の本人はこんなに遅れるものかしら?
その時、近くで誰かの話し声が聞こえてきた。
「ーーがーーのーーくせ」
ロイ様?
所々聞こえない。 ここから離れた場所なのだろうか?
わたしは椅子から立ち上がり、声がする方、白薔薇の方に向かって歩いていった。
「お嬢様、お待ちくださいませ!」
「白薔薇が綺麗なので近くで見ようと思って」
「ですが……」
メイドがなおも引き止めるが、少し散歩するだけだと言い、声がする方に歩いた。
「どこから声がするのかしら」
取り敢えず、適当に歩いてみることにした。
もしかしたら、近くにロイ様がいて会えるかもしれないしね。
だけど、なぜか歩いているとどこか違う場所に歩いていっているみたいで迷子になりそうだと思った。
白薔薇はわたしの背をこしており、私1人ぐらい隠してしまえるからだろうか。
このまま薔薇に隠されてしまうような気がして少し恐怖を覚えた。
そんなことがあるはずないのにだ。
「私に触らないでくださいませ!」
適当に歩いていると、少女の甲高い声がこの庭に響きわたった。
「この奥かしら?」
声が聞こえた方に走り、薔薇の陰に隠れながら様子を伺う。
「…………さわってない」
あの仮面はロイ様よね。
あれは誰かしら。
ロイ様の目の前には目がつり上がったツインテールの少女がいた。
「近くにいるのも嫌だわ!」
「…………」
「なんとか言ったらどうかしら!」
少女はすごく怒っている様子だ。
「…………」
一方ロイ様は何も言わない。
が、手袋を着けた両手でズボンをぎゅっと握っていた。
「……どうしたのかしら?」
ロイ様にすごく怒っているみたいだし……。
一方ロイ様は何も喋らない……。
もしかして、6歳にして修羅場?
ロイ様の方をじっと見ていると
「なんとか言ったら、その仮面、気味が悪いのよ!」
と少女が叫んだ瞬間ロイ様の仮面を掴み取ろうとした。
「……!」
私は仮面が気になるはずなのに、その少女が仮面に触ろうとした瞬間、やばいと感じてしまった。
「だめ!」
咄嗟の行動だった。
私はロイ様と少女の間に割って入り、少女がロイ様の仮面に触る前に少女を突き飛ばした。