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お茶会の前日

 ウェブル家からお茶会に誘われました。

 多分、初対面のことを気にしてだよね?


「フェル?」


「あっはい。 おにいさま」


 目の前には心配そうに私の顔を覗き込むお兄様。


 美少年のドアップは鼻血ものです。 はい、すみません。 せっかくお兄様が心配してくださったのに。


「大丈夫かい?」


「だいじょうぶですわ。 それでお茶会ですよね?」


「ああ、そうだよ。 でも、フェルが嫌だったりしたら……」


「でも、ことわることはできませんよね?」


 そう、相手は侯爵家のウェブル家だ。

 反対に私は伯爵家。 自分より格上の相手に断るのは失礼だと思う。

 例え、相手が悪かったとしてもだ。


「でも……」


「だいじょうぶですわ!」


 それでも心配だと顔に書いてあるお兄様。

 

 でも、本当に心配いらないのだ。

 なぜなら、私はお茶会に乗り気だからだ。

 ずっとロイ様のことが気になっていたしね!


「だけど……お父様に聞いたよ」

 

 なおも引き下がらないお兄様。

 それにお父様に何を聞いたのかしら?


「なにをですか?」


「うーん。 フェルの婚約者のロイ様のこととか?」


 ロイ様?

 ロイ様のなにかしら?


「綺麗好きとかですか?」


 取り敢えず例を挙げて見るが、お兄様は首を横に振るので違うみたいだ。


「紅茶?」


「紅茶のことも聞いたよ。 でも、それじゃない」


 じゃあ、何だろう?

 

「フェルは……」


 お兄様が言いかけた瞬間、私の部屋の扉がバンッとそれはもう勢いよく開き


「フェルちゃん!」


 お母様が登場した。


「お母様……」


 私はびっくりしたが……お兄様はもう慣れているのか呆れた顔をしていた。


「聞いたわよ!」


「なにをですか?」


「はあ〜」


 お母様は愛用の扇子を取り出し、ビシッと私に向け


「これからが本番ですよ」


 と声高々に言った。


「ほんばん?」


 何の?

 訳が分からず隣に立っていたお兄様に視線を向ける。

 しかし、お兄様も首を横に振り、ごめんねと目で訴えてきた。


 いやいや、お兄様のせいじゃないよ!

 お母様はいつも突然だからね!


「お茶会のお誘いはなかった?」


 一瞬なにをと思ったが、さっきお兄様と話していたことを思い出す。

 お茶会のお誘いはあった一件。 ウェブル家だ。


「ありました」


「はあ〜」


 隣でお兄様のため息が聞こえてきた。


「やっぱり……。 ランディとあの人はフェルちゃんがお茶会に参加するの反対しているから。 ランディ、あなた……やっぱり、お母様に内緒にしていたのね!」


 ん? どうして反対するのだろう?


「お母様。 やっぱりフェルに婚約者は早いです」


「早くないわ! いいじゃない、幼い頃から幼馴染の婚約者!」


「幼馴染はまだいいですが、婚約者は別に後でいいではないですか!」


「お父様と同じことを言うのね。 お母様はフェルに 幸せになってほしいだけよ!」


 どうしよう。 お母様とお兄様が喧嘩し始めちゃったよ。 それも、私のことで……


 メイドもどうしたらいいか分からなくてオロオロしてるよ。

 そして、メイドさん。 私に時々助けてと視線を送らないで。


 しかし、ここにお父様が仕事でいなくてよかった。

 きっともっと、大変なことになってた。


「お母様。 ウェブル家のロイ様の話聞きましたよ」


「仮面のことを。 別にいいじゃないの? それも個性よ」


「それも個性でいいと思いますが、しかし! それでフェルも何か言われたらどうするのですか?」


 お兄様、仮面のことを気にしていたのね。

 

「お嬢様……」


 ん? 何かしらと思って隣を見ると、さっきまでお兄様がいた場所にメイドのマリーが立っており、私に喧嘩を止めて欲しいと言ってきた。


 確かにそろそろ止めないといけないよね……

 でも、下手にすると私まで飛び火するよね。

 いや、私のことで喧嘩してるんだけども。


 止めようかなと考えている時、お兄様の足元に紙が落ちているのに気づいた。


 何かしら?


 私はその紙を拾い広げるとそれはお茶会の招待状だった。


「ウェブル家からのお茶会の招待状」


 そこには、先日の無礼を謝りたいとのことが書かれており、そして仲直りにお茶会に招待したいとのことが綺麗な字で書かれていた。


「ロイ様………………ん?」


 私はそこであることに気づいたのだ。


「おにいさま……」


 私の呼びかけに気づいたお兄様は、お母様との言い合いをやめ、こちらに駆け寄ってきた。


「どうしたんだい?」


「これ」


 そう言って持っていた招待状をお兄様に見せる。


「招待状がどうかした?」


「日付……」


 私の様子が変だと思ったのかお母様もこちらに駆け寄ってきた。


「フェルちゃん?」


「フェル落ち着いて」


 やっぱり、お兄様は知っていたのね。

 なら、なぜもっと早く教えてくれなかったのかしら。


「フェル?」


「フェルちゃん?」


 私は両手に力が入り、わなわなと震えながら持っていた招待状をお兄様たちの前にかざした。


「これ……これ……お茶会…………明日じゃないですかーーーー!」


 私の大きな叫び声は部屋の外にまで響きわたった。


「あら、じゃあ急がないと! フェルちゃん、今から明日の準備を急いでしますわよ!」


「しかし……」


「おにいさま。 わたし、お茶会にいきます」


「だけど……」


「おにいさま! お茶会は明日なのですよ! 断ることはわたしにはできません」


 お兄様はまだ納得はいっていないようだが、何も言わないので、私とお母様はお兄様を無視してお茶会の準備を始めた。


 


 お兄様よ! 反対でももっと早く教えてください!

 心の準備は大切なんですよ!

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