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疑い

「ヒィーエーーーーー!」


「「「「「「っ!」」」」」」


 バシっと頭を叩かれた。


「あ痛っ!」


「貴方は何て声を出すのよ!!」


 皆、ポカーンとした顔をしている。

 話掛けてきた王子ですらポカーンとしていた。

 ディアナとロイ様を除いてだが。


 ディアナは目を釣り上げながらこちらを睨む。


「ビックリしたじゃない!」


 なんだ……ビックリしたのか……。

 いや、私もビックリしたんだけどね。 ……急な王子の登場で。


「ふっ……」


「?」


「あーははははははは!」


 レオンは急に肩を震わせ始めたかと思ったら大笑いし始めた。


「はーははははははは!」


 どうやら笑いが止まらないようだ。

 私をみながら大笑いをしている。

 ほら、王子。

 いい加減に笑うのやめろよ!

 ジークやヴァイス、それにディアナや周りにいる令嬢、令息、その他メイドや騎士達、みんな驚いてるよ。


「レオン」


「あー可笑しい。 そんな顔をしなくてもわかってるよ。 ヴァイス」


 ヴァイスがレオンの名前を呼んだことで落ち着いた彼だが、何を思ったのか私に近づいてきた。


「あの……何か?」


「いや……ふっ……」


「なっ!」


 私の顔を見てまたも吐き出そうとした王子に腹が立つが相手は王族だ。

 ここは大人になろう。


「わたくしに何かご用でしょうか? 殿下」


「ああ。 そうだよ。 フェルーナ・リンディ嬢」


「っ!」


 レオンが名前を知っている? 何で? 彼に私は一度も()()をしていないのに?


「名前を知っていたのは私がここにいる招待客の皆の名前を知っているからだよ。 誰が来るか事前に調べておくんだ。 これでも王族が主催したお茶会だからね。 それに()()()()()()に対応するときに誰が来ていたかすぐにわかるようにね」


 ニコッと微笑みながら話す彼に寒気がした。

 ドキドキと鼓動が早くてなっていく。


「そっそうなのですね……」


「だからね。 君たちの話で『賊』の話が出てきたから気になってね。 どういうことか教えて欲しいんだ。 一体()()()をしていたのかな?」


 レオンが……王子が私に話掛けているのに答えるどころか目も合わせることができない。


 ドキドキと鼓動が早くなり、冷や汗が背中をツーと流れる。


「……フェル。 大丈夫?」


「!」


 その声を聞いた瞬間、ゆっくりと落ち着きを取り戻していく。


「ロイ様……」


「君はロイ・ウェブルだね。 その仮面は相変わらずなんだね」


 レオンがニコニコと微笑みながらロイ様に目を向け、そう言った。

 やっぱり、ロイ様の名前を知っていたのか。

 私を知っているなら当たり前だが……レオンの言葉に何となく引っかかりを覚えた。


 だが、今はそれよりも。

 意を決して王子を見る。

 それに彼も気づき、私にニコッと微笑んだ。


「おや? やっとお嬢さんと目が合ったね」


「申し訳ありません」


「いや、謝らなくていいよ。 こういうことはよくあるからね」


 やっぱり。 この王子はどこか怖いところがある。

 見透かされているような気がするからだろうか?


「レオン! フェルーナ嬢が怖がってんじゃん」


 ジークがレオンにそう言った。


「それはごめんね」


「いえ……」


 そこでヴァイスの後ろに隠れているディアナを見つけた。

 あれっ? さっきまでうるさかったディアナが静かだ。

 どうしたのだろうか?


「それで話してくれる?」


 レオンの言葉で我にかえる。


「ごめんね。 教えて上げてくれないかな? レオンも知っておくべきだと思うんだ」


 そう言ったのはヴァイスだ。


 そう言われたら話さなくてはいけない。

 だけど、何だろう?

 何か引っかかるんだよね。


 だけど、レオンはニコニコしながら待っている。

 私は一度深呼吸をして、ロイ様を見る。

 ロイ様はコクッとうなづいてくれた。


 大丈夫。 ロイ様が近くにいてくれたら大丈夫。


 私はさっき彼らに話したところまで話した。


「それで、ディアナ嬢はどうなるの?」


「えっ……」


 ディアナから戸惑いの声が漏れる。


「私に何かあるっていうの!!」


「ディアナ、落ち着いて」


「でも! お兄様!!」


「それで、どうなるの?」


 話を聞いてなおもニコニコしながら聞いて来るレオンに寒気が止まらない。

 戸惑いの表情をしたディアナ、ヴァイス、ジークが普通のはずだ。

 それなのに……この王子の目は笑っている。


「ディアナ様は……」


 喉がカラカラに乾く。

 皆の視線が私一人に集まった。


「死にます」


「っ!!」


 皆が息を飲んだのがわかった。 一人を除いて。


「……殿下は知っていたんじゃですか? 賊が入ることを」


 レオンをみながらそう言ったのはロイ様だった。


「ロイ様!」


 仮面をつけてどんな表現をしているかわからないロイ様の言葉には私の考えていたことを読んだのかと思うぐらい同じ考えだった。


 レオンは目を一瞬見開いたかと思ったら次の瞬間には面白いものを見るような目をしていた。


「ロイ!」


 ヴァイスがロイに叫ぶが、それを手で止めたレオン。


 普通なら不敬に当たるロイ様の言葉にヴァイスがおこるのは当たり前だ。


「面白いことを言うね。 でも、残念ながら私じゃないよ」


「じゃあ、だれ……が……」


 そこで、私はあるものに目が入った。

 あの箱は何?


「フェル?」


 手のひらサイズのラッピングもされていない四角い真っ白な箱が一つポツーンと置かれていた。

 いつ置かれたものかわからない。

 だけど、あんなものはお茶会が始まった時、いや、さっきまではなかった。

 ラッピングがされていたらプレゼントだとは思うが、何もされていないただの箱。

 それに気づいた一人の騎士が近づいていく。


 なぜだかアレには触ってはいけない気がする。


「触っちゃだめ!!」


 私は騎士に向かって大きく叫んだが、遅かった。


 ドーン。


 騎士が触れた瞬間に大きな爆煙が起こった。

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