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第一王子

「あれ……?」


 私は周りを見ていてある違和感を感じた。


「……フェル?」


「どうしたのフェルーナ嬢?」


 二人ともつぶやきが聞こえたようでどうしたのかと聞いてくる。

 だから、私は違和感の正体を知りたくてジークに質問した。

 これは、ロイ様よりもジークの方が知っていると思ったからだ。


「ねえ、ゴーダン様」


「ジークでいいよ」


「では、ジーク様。 ここにきている子供の人数……なんか少なく無いですか?」


 そう、私が違和感を持ったのは今日きている子供の人数だ。

 きていない貴族の子供もいるにはいるが、伯爵家として繋がっている貴族の子供もがきていないところがある。

 今日は王子の婚約者を探しているのにだ。

 貴族なら王子の婚約者に娘をあてがいたいはずだし、息子なら友達候補に……。


 それに私がそう思った決定的理由は……きていないのだ。

 王子の婚約者になるはずの()()()()が。


「ああ、それはきっと()()()()の派閥の貴族が来ていないんだよ」


「……第二王子?」


「そうだよ。 今日は()()()()であるレオンのお茶会だからね」


 ジークの言葉が耳に入ってこない。

 今日は第一王子のお茶会?

 今いる彼は攻略対象者の彼ではないということ?


 私は紅茶を飲んでいる王子を見るが、大人になった彼と髪の色や目の色、それに雰囲気も似ている。


 だけどゲームで第一王子は姿など出ていなかった。

 だから、私は第一王子の容姿を知らない。


「第一王子様は第二王子様と容姿はそっくりなのですか?」


「んー。 レオンとそっくりだよ。 性格は全く違うけどね」


 そう言って笑っているジークはどちらの王子とも知り合いなのだろう。


「でも、名前がレオンって……」


「名前?」


「レオンハルト様ですよね?」


 そう、第二王子はレオンハルト。


「第二王子はそうだけど、レオンはレオンだよ」


「では、第一王子様はレオン様で第二王子はレオンハルト様?」


 第一王子、第二王子言いすぎてもう、訳がわからなくなりそうだ。


「そうだよ」


 名前似すぎだろ!

 もっと違うのにしないと間違える人出てくる!


 しかし、この話を聞いていると、おかしいところがまだ出てくる。

 今日が第二王子の派閥は来ていなくて第一王子のお茶会となるとヴァイスが来ているのはおかしいのだ。

 ゲームでは彼は第二王子の派閥だと言っていた。


「フェル?」


 少し考え混んでいると、隣にいたロイ様が下から覗き混んできた。


「!」


 一瞬だけびっくりした。

 考えごとをして急にあの仮面をみて驚いてしまったがロイ様には内緒にしておこう。


「ロイ様……」


「……何を考えてるの?」


 ……言ってもいいのだろうか?

 いや、でも……ヴァイスが第二王子の派閥なのにここにいる理由を考えてるっておかしいよね。


「なっなんでもないですわ!」


「………………」


 ジッとこちらを見てくるロイ様に申し訳ないが言えない。

 話を変えるべく、ジークの方を見るが彼はいなくなっていた。


「あれ? ジーク様は?」


 私がそういうと、ロイ様はある一箇所に指差した。

 そちらを見るといつの間に移動したのかジークが令嬢たちと楽しく話していた。


「なるほど……いつの間にか離れていたのね」


 まあ、ジークが別に行ってもらったのはありがたい。

 なにさ、彼は人気者なので一緒にいると令嬢たちの目が痛かったから離れてもらって良かったのかもしれない。


 彼が離れたからと言ってもチラチラと見られてはいるが……。


「よし!」


 考えていても仕方がないので一度気分を変えて紅茶やお菓子を食べよう。

 見たことがない焼き菓子がたくさんあって実は気になっていたのだ。


「ロイ様! わたくし、お菓子を食べてきます!」


「……分かった。 僕も一緒に行く」


 ロイ様は紅茶やお菓子を多分食べられないが私に着いてはくるようだ。

 本当は一緒に食べれたらいいんだけど……。


 その場を移動しようとした時に私達の前に一人の令嬢が立ち塞がった。

 ツインテールの悪魔!…………間違えたディアナだ。


「貴方たち!」


 そう言って仁王立ちに目の前に立っている。

 正直言うと面倒臭い。


「御機嫌よう。 ディアナ様」


 私は貴族らしく頭を下げ挨拶をする。


「…………」


 ロイ様は無言である。


「ふん! 相変わらず変な仮面!」


 わざわざそれを言うためだけにきたのだろうか?

 少しムッとする。


「まあ、ディアナ様! あの日、一日会っただけで覚えていてくださるなんて、私達のことをそんなに気にかけてくださっていたのですか?」


 私はわざと大げさにそう言ったが、気に食わなかったのか彼女はワナワナと震えていた。


「気にかけているはずないじゃない!! 私はその仮面を馬鹿にしにきたのよ!!」


「まあ! わざわざ?」


「まあ! わざわざ? じゃないわよ! 貴方、前と違って性格が悪くなっているわよ!」


 性格が悪くなっているなんて失礼な!


 この貴族社会で皆コソコソ言っていたのに真正面で大きな声でそう言うなんてさすがディアナというべきだが。


 ただ、もう少し気をつけるべきである。

 貴方の後ろから笑顔で貴方が大好きなお兄様が近づいてきているよ。


「ディアナ」


 ディアナはビクッとして後ろをゆっくりと振り返っていく。


「おっお兄様?」


「ディアナ、言ったはずだよね」


 その言葉に機械のごとくコクコクとうなづく彼女はちらっとこちらを見てキッと睨んできた。

 しかし、それを見た兄であるヴァイスはまた「ディアナ」と名前を呼んだ。


「…………ごっごめんなさい」


 おおー。 ディアナが謝った。

 さすが、ヴァイス!

 私は心の中で拍手を送る。


 しかし、その様子を見ていてふと頭にある光景が流れた。

 ゲームのヒロインとのワンシーンである。


「え…………?」


 ドキドキと心臓の動きが速くなっていく。 


「フェル?」


 サーと血の気が引いていき顔が青ざめていく。


「どっどうしよう……」


「フェル? どうしたの?」


 なんとか震える声を絞り出す。


「ディッディアナが……死んじゃう……」


「え?」


 私はヴァイスルートのシナリオを思い出したのだ。

 それはヒロインに自分の過去を話すシーンだった。

 小さい頃になにが起こったかを……。

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