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婚約者ができます

 彼との婚約が決まったのはつい先日のことだ。

 お父様に呼ばれて書斎に行ったときだ。

 そこには、お父様、お兄様、お母様がいた。


「フェル、わたしの天使。 君に婚約者ができた」


 おいおい、お父様よ。 泣くなよ。 お兄様にいたっても、目線を下にして影がさしているし……。

 それはそれで美少年で絵になるが…………ってそうじゃない。 お母様にいたってはニコニコ嬉しそうだな。


「こんやくしゃですか?」


「ああ」


 いや、「ああ」じゃなくてどこの誰でどうしてそうなったか聞きたいんだよ!

 そして、いい加減泣き止んでくれ……。

 それにしても、6歳で婚約者……早いな……。


「あの、おとう様」


「うっうっう」


 いや、泣きやめよ! お兄様まで、泣きそうだよ。

 そして、お母様だけはニコニコと怖いわ!!


「フェルちゃん」


 ずっと笑ってただけのお母様がわたしの名前を呼んだ。


「はい」


「婚約者の名前はロイ・ウェブル。 ウェブル侯爵家の一人息子よ。 そして」


「そして」


「フェルちゃん……あなたの運命の人よ!!」


 はっ? 運命の人? どういうことですか?


 そして、お母様。 人に指を指しちゃいけません。


「訳がわからないって顔ね?」


 うん、うん。


「実はね、お母様のお母様。 つまり、あなたのお祖母様なんですけど」


「おばあさまがどうしたんですか?」


「お祖母様にはとても仲が良いお友達がいたの。 それはもう姉妹のように仲が良かったそうよ。 それで自分たちの子供が結婚したら姉妹になれるわねって話していたみたいでね」


「じゃあ、おとう様がその方の子供だったのですか?」


「違うわ」


 えっ? 違うの? 話の流れ的にお母様の結婚のことよね?


「お母様は出会ってしまったの……」


 お母様はお父様の方を見つめ


「あなたのお父様に!」


 抱きついた。


「こらこら」


 お父様よ。 困ったように言うけど目尻が下がって嬉しそうだね。

 わたしの両親は恋愛結婚。 しかも、万年新婚気分の夫婦だ。 一緒にいるお兄様とわたしの気持ちを察してほしい……。

 でも、いつか私もこんな結婚ができたらと夢見ていたのに……まさか、まさかの婚約者!

 しかも、結局どういうことかわからないんだよね。


「お母様、一度落ち着いてください。 フェルが困っっています」


 お兄様ナイス! 

 こっそりお兄様の方に顔を向ける。

 それに、お兄様は笑顔でうなづいてくれる。

 お兄様の笑顔いただきました! ……って違う!


「ごめんなさい。 話に戻るわね。 お母様はお父様に出会ってしまったのでお祖母様のお友達の子供とは結婚できなかったの……でも、お祖母様達は諦めなかったわ……今度は孫達を結婚させましょうとのことよ。」


 ……孫って私じゃん!


「だから……わたくしってことですか?」


 お母様はこくっとうなづいた。

 その横でお父様はまた泣いていた。


「ごめんね。 私の天使……」


「フェル」


「おとうさま、おにいさま……」


 泣きたいのはこっちですよ。


「でも、フェルちゃん。 これは運命かもしれないわ。 ウェブル家と言えば歴史も古く、王家からの信頼もあるわ。 それにね……子供の時に出会った幼馴染の婚約者……そしてゆくゆくは愛が生まれ……ふふふふ」


 お母様怖いです。

 ああ、これは……お母様の悪い病気が……。


「ロマンス小説みたいじゃない!」


 やっぱり。

 わたしのお母様は恋愛小説が大好きで、運命って言葉も大好きなのだ。


「おかあさま……」


「ともかく、フェルちゃん。 これは運命よ。 それとね、お母様はあなたに幸せな結婚をしてほしいの。 だから、考えてみて私たちの天使」


 お母様は私にとても優しく微笑んでくれる。

 本当に私の幸せを考えてくれているのだ。

 なら、私の答えは一つだけだ。


「おかあさま、わたくしこんやくします」

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