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スイージェストとお兄様

「…………ねぇ」


 フェルが調理室に行ってからずっと下を見ていたロイは声をかけられ、顔を上げた。


「!」


 顔を上げた先、つまりフェルの兄であるランドールが座っている場所を見ることになる。

 さっきまでと打って変って無表情のランドールがロイを見つめていた。

 その様子は寒気すら感じるものだった。


「それは一体何?」


 それっと指差したのはロイの顔だった。

 それだけでロイは何を言われたのかわかった。


「………………」


「答えないの?」


 フェルと話す時とはまるで違う冷たい声でロイに問いかける。


「………………」


 手袋がついた手で仮面を触るが一言も話さないロイ。


「僕は一度だけ()()を本で見たことがある。 実際には初めて見たけどね」


 その言葉を聞いた瞬間、身体を強張らせたロイ。

 一瞬だけ見えただけで確信を持てなかったランドールだが、ロイの様子を見て確信に変った。


「それは……」


「ストーップ!」


 ランドールの言葉を遮りその声が聞こえたと同時に空からキラキラした何かが降ってきた。そして止んだと同時に彼らの前に登場したのは、希代の魔術師スイージェストだった。


「! 貴方は」


「久しぶりだな。 ランドール」


「何故、貴方がここに!」


 ランドールは椅子から立ち上がりスイージェストに近づいていく。


「対決を見にきたんだよ。 私の弟子であるロイの晴れ舞台をね!」


「弟子?」


「おや、知らなかったみたいだな。 お前の父であるハーデンに頼まれたんだ。 まあ、希代の魔術師であるこの私に頼むのは当たり前だがな!」


 そう言って「はっはっはっは」と笑うスイージェストに若干苛立ったランドールだが、相手はあのスイージェストであるため我慢した。


「知りませんでした」


 苛立ちを隠し、冷たい声でそう言ったランドールに対して気にした様子もないスイージェスト。


「おや、素直だな」


 いい子だというように乱暴にランドールの頭を撫でるスイージェスト。


「何をするんですか!」


「ははははは。 良いではないか!」


 なおもやめないスイージェスト。


 彼らの親しげなその様子をロイは黙って見ていた。

 声を出したことでさっきの話をされるのが嫌だったからだ。


 しかし、そんな様子のロイをすぐにスイージェストは見つける。


「ん? ロイ。 何故、私とランドールが知り合いか知りたいって顔だね?」


「顔って、彼の顔は見えないでしょう」


 ランドールの意見に賛同したいロイだが相手はあのスイージェストだ。

 本当に見えている可能性が高い。

 魔法の練習をしている時も顔が見えていないはずなのに今どんな顔をしているか正確に当ててくるからだ。


「私にはわかるのだよ! なんてったって希代の魔術師だからね」


「……そうですか」


 ランドールはもう何かを言うことを諦めることにした。 スイージェストに何を言っても「希代の魔術師」で返されるためだ。


「ふふふふふ。 それで、私とランドールの仲がいいのはだな。 ランドールも私の教え子なのだよ! 分かるかい、ロイ? 君の兄弟子だよ!」


「知り合いから、仲がいいってことに変わってるし……」


「…………そうなんだ……兄弟子……」


「今は私の手を離れているが、魔法の制御を教えたのはこの私希代の魔術師スイージェストだ!」


 そう言ったスイージェストは「はっはっはっは」と笑っている。


「……魔法の制御?」


 その様子を横で呆れながら見ているランドールにロイは首を傾げながら独り言のように言ったつもりだが、聞こえていたようで


「……何? 不思議そうに。 そんなにおかしいことかな? …………僕も小さかったからね。 制御が下手だったんだよ。 だから、父がスイージェストさんに頼んだんだ。 ……………………あの頃は暴走を起こしがちだったからね。 まあ今はそんなことはないから……」


 そう話したランドールの目はあの頃を思い出しているようだった。


「それよりも、君の話だ」


「……!」


 身体をビクッとさせるロイ。


「……君は」


「はーい! ストップだ。 ランドール。 この話はするな」


「! 何故ですか!」


 スイージェストの服を掴み、くってかかるランドール。


「貴方も知っているはずだ。 あれは……」


 しかし、後の言葉が続かない。 いや、言えなかったのだ。

 スイージェストの目がいつもと違って真剣だったからだ。


「どうして……何も……しないんですか……貴方なら……貴方なら! できるでしょう……」


 徐々に服を掴む力が弱くなっていく。


「すまない。 ランドール。 ……あれは私でも難しい」


 ランドールの頭に手をおき、ゆっくりと撫でる。

 幼い子供をあやすように、そしてゆっくりと言い聞かさせるように。


「離してください」


 だが、それを手で払い、スイージェストと距離を取る


 そして、ロイの方に向き冷たい声で言った。


「なら、僕はフェルとの婚約を絶対認めない」




 その頃のフェル。


「お嬢様、やりましたね。」


「ええ! だからさっきよりも美味しくつくってね」


「分かっております」


 料理長にお菓子の追加をお願いしていた。

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