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ロイとフェル

「困りましたわね」


「……………………」


 困ったことがあるのだ。 

 ロイ様が昨日紅茶に飲むことに成功して、今日も私が淹れた紅茶は飲めたのだ。 ……一口だけどね。


 しかし…………。


「わたくし以外の人が淹れた紅茶が飲めないなんて」


 そうなのだ。 私が淹れた紅茶以外は全く口をつけることができないロイ様。


「何故かしら?」


「………………」


 私がロイ様にそう問いかけてもさっきから何も答えてくれない。

 ロイ様よ。 一言ぐらい話して欲しい。


 それにしても、これはやばいぞ。



 昨日の夜。


「フェル、特訓は順調かな?」


 とご飯を食べ終え、部屋に戻るときにお兄様に声をかけられた。


 それに対して私はこう言ってしまったのだ。


「ええ、順調ですわ! おにいさま! 見ていてください! 必ずやロイ様は紅茶を飲みますわ!」


 ふふんっと効果音が付きそうな感じで自信満々に言ってしまったのだ。

 それに対してお兄様は


「ふふ、それは楽しみだね」


 と余裕があるようだった。

 まるでこちらができないと思っているようだった。


 悔しくて私はまたしても言ってしまったのだ。


「見ていてくださいよ! おにいさまを必ずやギャフンと言わせてみますからね!」


 お兄様は尚も笑っていたが…………今思えば目が笑っていなかったと思う。


 どうしよう。 あんなこと言ってしまったのに当日飲めなかったら…………。


 だんだんと血の気が引き顔が青ざめていく。


 すると、服の袖をロイ様に引っ張られた。


「……ロイ様?」


「…………フェル、大丈夫?」


 こちらを見て首をコテンとかしげるロイ様。 心配してくれているのがなんとなくわかる。


「一応大丈夫なのですが……当日のことが心配で」


 私がそう言うとロイ様は


「……フェル……ごめん」


 ショボンと項垂れながら小さく謝ってくれた。

 また、雨に濡れた子犬のような雰囲気だ。


 私はこれにとても弱い。


「ロイ様! 大丈夫ですわよ! まだ、日はありますので頑張りましょう!」


 ねっ! とロイ様に向かってガッツポーズをすると、ロイ様はうなづき返してくれた。


「それにしても何故、ロイ様はわたくしのは飲めるのかしら?」


 私は自分が淹れた紅茶とメイドが淹れた紅茶を並べて見比べるが何が違うか分からない。


 匂いかな? と思い香るが紅茶のいい匂いだ。

 なら、味かな? と思うがロイ様は私のしか口をつけていないのでそれは違うと思ったが、一応両方飲んでみる。


「美味しい! 渋い!」


 メイドが淹れてくれた紅茶はとても美味しかったのに、私が淹れた紅茶を飲むと渋かった。


 何故!


 私が紅茶のカップを持ってショックで固まっていると


「フェル……」


 じっとこちらを見ていたロイ様からなんとも呆れたような声が聞こえてきた。


「だってロイ様〜。 何故、わたくしの紅茶は美味しくないのかしら〜」


 カップを見せながらロイ様に詰め寄る。


 何故か一歩後ろに下がったロイ様。

 何故ですか!


「落ち着いて」


「ですが〜」


「……今は美味しくなくても、練習したらフェルの紅茶は美味しくなると思うから」


「ロイ様……」


 フォローしてくれたロイ様……。

 そう言ってくれて嬉しいけど、ロイ様もやっぱり美味しくないと思っているんですね。

 昨日も「……渋い」と言っていましたもんね。


「わたくしは練習して、必ずやロイ様に美味しいって言ってもらいますからね!」


「僕?」


「はい!」


 ロイ様はびっくりしていたように見えたが、そんなことは知らない。 美味しいって言ってもらえるように頑張るだけだ。


 そして、今はそれよりも


「ロイ様は何故わたくしの渋い紅茶は飲めて、美味しい紅茶は飲めないのかしら?」


 この問題を片付けないといけない。


「………………」


「ロイ様、分かりますか?」


 黙っているロイ様に詰め寄っていく。


 またしても一歩下がるロイ様。


 こうしていると、最初に出会った頃のことを思い出す。

 あの時も今見たいに近づけば下がっていっていたので、最近のロイ様は変わったなと思う。


 触っても大丈夫だしね。


 ……………………ん?


「…………………………」


「……フェル?」


 私が近づくのをやめて、黙り込んでしまったことに不思議に思ったロイ様はこちらに名前を呼びながら近づいてきた。


「フェル?」


 もう一度名前を呼ばれた瞬間、私はロイ様の手袋がついた両手をとり、彼を見つめる。


「ロイ様!」


「!」


 ロイ様は一瞬びっくりしたのか身体がビクッとなったようだが、わたしの手は振り払われなかった。


 それで、やっぱりと思ったのだ。


「ロイ様、わたくしの紅茶が飲めるのは()()()()()()()()からですわね」


「……………………」


「何も言わないのは肯定と捉えますわよ」


 私がそう言うとロイ様はコクッとゆっくりうなづいた。


「やっぱりそうでしたのね」


「…………なんで分かったの?」


 何故? というように首をかしげるロイ様に少し可笑しくなった。


「ふふっ。 簡単ですわよ。 ロイ様って前はわたくしに触らなかったのに今では触れるし、近づいても怒らないではないですか。 だから、思ったのです。 わたくしの淹れた紅茶は飲めるけど、他の人が飲めないのは、ロイ様の中でわたくしは許されていて、それ以外の人間はまだ許されていないからと」


 あっていますか? というように私はロイ様に微笑んだ。


「……あってる」


 ロイ様はフイッと私から顔を背けるが髪で隠れて少ししか見えない耳が赤くなっているのを私は見逃さなかった。


「ふふ」


「……なに?」


「いーえ、なんでもないですよ」


 クスクスとしばらく笑っていたが、問題は解決していない。

 当日は私ではなくお兄様が紅茶を淹れるのだ。


 さて、どうしたものか?


 わたくしではなくてお兄様が淹れる……お兄様が淹れる……淹れる…………ん?


 わたくしのお兄様が淹れる?


「そうですわ!」


「フェル?」


「わたくしのおにいさまです!」


「…………どういうこと?」


「血の繋がったおにいさまなんです!」


「?」


 ロイ様がどういうこと? というように首を傾げているが私はそれを気にせず話す。


「秘策があるのですわ!」


「……秘策?」


 ふふふふふ。 待っていてくださいね、お兄様!

 必ずやギャフンと言わせて見ますからね!


 残りあと、2日

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