生まれ変わりました
わたしが前世を思い出したのは5歳になった時、兄の名前を聞いた瞬間だった。
兄の名前はランドール・リンディ。
この名前を聞いた瞬間、頭の中に電流が流れたのだ。
だって……だって……だって……わたしがはまった乙女ゲームの攻略対象だったのだからーーーー!
何でもっと早く思い出さなかったのかしらと悔やんだわ!! 顔も何となく面影があり、小さいながらも天使と思えるほど! 将来有望な美少年なのに!!
お兄様の名前をずっとランディだと思ってたわたしも悪いが……。
いや、それでも早く思い出したかった……そして、小さいのを武器にいっぱい甘えたかったのに……まぁ、思い出す前から甘えてたけどね。
しかし、思い出せたのはこれはわたしがはまってた乙女ゲームだということと、わたしの前世の名前だけだ。
前世の名前は倉梨 陽子。 どこにでもいるフツーのOLだった気がする。
なぜ、死んでしまったかわからないが……。
この乙女ゲームのことだけはよく覚えている。
キャラクターも格好良かったし、声もサイコーだったからだ。 人気すぎてグッズも出てたぐらいだしね。
魔法学園が舞台でヒロインが様々な攻略対象と恋をしていくという王道乙女ゲームだ。
まあ、その攻略対象者は貴族だったり、王族だったりと様々なのだが。
そして、その攻略対象者であるわたくしのお兄様は何と、魔法学園の教師ですよ!
まあ、大人枠ですよ!
攻略対象者その1
ランドール・リンディ。 歳は今は13歳だがゲーム攻略時は23歳。 ヒロインとは学園の先生と生徒として出会い、恋に落ちていく。
問題になるのは教師と生徒との恋と……あれ?
あんだけ好きだったのになんだったっけ?
思い出せない……。 まあ、お兄様だし、大丈夫よね? きっとハッピーエンドですぐに終わったから忘れてしまったのよ! そうね、きっとそう。
お兄様は優しいし、美少年だし……大丈夫!
それよりも、ゲームの中でランドールの妹であるわたし。 フェルーナ・リンディ。 という名前は聞いたことがないわ。
ということはわたしはモブなのかしら?
まぁ、見た目からしてヒロインとは絶対思わなかったけどね。
お兄様とよく似た少し垂れた大きなエメラルドの瞳にお兄様の髪色は紫がかった青に近い色をしている。例えるなら朝顔の色のようだ。 けどわたしは違う。
なんとも言えない色なのだ。紫だと思うのだが、なにか混ざっており、紫だが紫とは言いにくい色。 の髪を腰まで伸ばし、それを緩く巻き、頭にはお兄様がくれた白いリボンのカチューシャをつけている。
まあ、可愛いは可愛い。 だけど、わかる。
わたし、モブだわ。
悪役令嬢かなとも思ったけど、彼女は銀髪だったし、もっと美少女だ。
名前も違う。 彼女は確かロザリーだった気がするから。
だから、わたしはモブなのだ。
でもね、わたしはすごく嬉しい!
だって生で乙女ゲームが見れるんだもの!
しかも、ゲームに巻き込まれることなく!
攻略対象であるお兄様にも存分に甘える事もできる!
モブサイコー!
とつい先日までは思っていたわ。
目の前の男の子を見るまでね。
そう、目の前の彼、ロイ・ウェブル様。 わたしの婚約者になる男の子。
名前を聞くに攻略対象者ではない。
だから、わたしと同じくモブのはず。
それなのに、なぜ君は顔に仮面をつけているんだい?