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サンドイッチは洗ってはいけません

 さあ、やって来ましたよ〜!

 お昼の時間です。


 私たちはちょうど良さそうなところにシートを敷き座りました。

 まあ、その時に一悶着ありましたが……。


 私は隣に渋々座っているロイ様に目を向ける。


「…………なに?」


「いえいえ。 なんでもありませんわ」


 本当に良かった。 なにせ、ロイ様は地べたに座るのは嫌だと言い始めた時はどうしようかと思いましたよ。 こっちがどんだけシートを敷いているから大丈夫だといっても信じてくれなくて……ロイ様曰く、シートを敷いていたとしても地面からの熱を感じるからダメと言う。 熱……感じますか? 否、私はわかりません!

 しかし、ここで諦める私ではなかったのです!

 だって、ロイ様の食べ方が見たいから! この言い方だとなんだか変態みたいだが、仮面を付けているロイ様がどうやって食べるのか気になるのだ。


 だから、私は卑怯な手を使うことにしました。

 私、こけて足が痛いからここに座りたいと……。

 まあ、駄々をこねましたね。

 その時のロイ様ったら仮面で顔が見えないのに不機嫌さを隠しきれてなかったよ……。


 すっごく不服そうにしながらシートの上にまたシート……がなかったので自分の上着を敷いて座ることにしたロイ様。


 だけどね、ロイ様よ。 このシート、すごく綺麗ですからね。

 その様子に少し、傷つきましたよ。


 まあ、気をとりなおして私は料理長と一緒に作ったと言っても具材を挟んだだけなのだが……サンドイッチが入ったバケットをロイ様の目の前に出した。


「…………これは?」


「よくぞ聞いてくれましたね! ロイ様!」


 私はドヤ顔をしながらバケットの蓋をあける。

 その中をロイ様は顔を近づけながら覗き混んだ。


「…………サンドイッチ」


「正解ですわ!」


 興味を持ってくれたことに嬉しい私はさっきよりも興奮しながら、説明した。


「まず、これがたまごにこっちがお肉、それとこれはハム、こっちは新鮮なフルーツを挟んでありますのよ!」


「…………そう」


 ロイ様は若干引き気味に……私から少し距離をとった。

 距離を取られた分、私はバケットをロイ様の方に寄せながら、私も距離を詰めた。


「さあ、ロイ様。 召し上がれ!」


「……………………」


「さあ!」


「……………………」


「さあ!」


「………………いらない」


 ん? 今何て言ったのかしら?


「ロイ様?」


「…………ごめん、いらない」


 やっぱり! 聞き間違いではなかったのだ。


「なぜですか!!」


「…………パ」


「パ?」


 ロイ様が頑張って何かを言おうとしている。

 小さな声なので耳をしっかり傾けておかないと聴こえないため、また少しロイ様の方に身体を寄せた。


「…………パンは」


「パンがどうしたのですか? もしかしてお嫌いでしたか?」


 私のその言葉にコクッとうなづくロイ様……。


 そんな!! パンが嫌いな人がいるの!!


「一口も食べられないのですか!!」


「…………フェル、うるさい」


 ロイ様よ、うるさいではないですよ!

 そうやって、手袋がついた手で髪で隠れている耳をおさえない!

 そして、私が近付いた分だけ後ろに下がっていかないで!


「ロイ様、なぜですか!」


「…………フェルがうるさいから」


「ロイ様が私から距離をとった話をしているわけではありません! ショックでしたけど……って違いますわ! なぜ、パンがお嫌いなのですかと聞きたいのです!」


「………………ふにゃふにゃになるから」


 ん? ふにゃふにゃ? パンが?


 私が困惑しているのがわかったのか、ロイ様がサンドイッチのパンを少しちぎりこういうこだというようにそれを水でつつんだ。 正確にいうとあらっている……のか?


「…………ほら」


 いやいやいやいやいやいやいや、何言ってんの?


「あの、ロイ様?」


「…………なに?」


「なに? ではないでしょう」


 えっ! 本当にわからないの?

 ロイ様首を傾げてるし。


「ロイ様。 パンを濡らすのだから、ふにゃふにゃになるのは当たり前ですわ。 なので、そのままお食べになればおいしいとわたくしは思うのですが……」


「むり」


 即答! 今まで間があってから話していたロイ様が即答! 初めてですよね!

 って違う。 今はそんなことよりも


「なぜですか?」


「…………洗わないと、きたない」


 洗う? 食べ物を? でも、パンよね?


「えっと、パンの話ですよね?」


「…………そうだよ」

 

 声が少し低くなるロイ様。


 えっ? 私がおかしいの?


 そう思い、メイドさんを見ると目があったメイドは首を横に振る。


 そうだよね。 私がおかしいわけではないよね?


 とりあえず言わせてほしい。


 ロイ様よ。 パンを洗ってはダメですよ!!


「ロイ様……では今日から洗わずに食べてみませんか?」


「いや」


 またしても即答! そんなに嫌ですか!


「そんなにお嫌なのですか。 なぜですか?」


「…………洗わないときたないから」


 洗わないと汚いって……料理をする前は材料など洗って使われているのに……。


「では、聞きますけど普段は出されたお料理などはどうされているのですか?」


「……洗うけど」


 いや、そんな当たり前なことを聞くなよ的な風に言わないで下さいよ! 

 当たり前ではないですからね!


 じゃあ、ロイ様は洗わないと料理が食べれないということは……このサンドイッチも洗わないと食べれない…………。


 うーん………………よし!


「あの、ロイ様」


「…………?」


「せっかく作ったものなので……洗ってもいいですから食べてくれませんか?」


 ふにゃふにゃにはなるが料理長の料理だ。 洗ってもおいしいはず!

 それに、せっかく作って持ってきたのだ食べてもらいたい。


「……むり、ですか?」


 その問いになにも言ってくれないので多分食べてくれないなと諦めかけた瞬間


「…………洗っていいなら食べる」


 えっ? ロイ様、今何て?


「えっロイ様? 食べるのですか?」


「…………そう言ってる」


 えっうそ、本当に?


「ありがとうございます!」


 私は満面な笑みをロイ様に向けた。


「…………フェル、うるさい」


 そう言いながらプイと顔をそむけたロイ様は少し見える耳が赤くなっていた。


 サンドイッチを手に取り、それを水の球につけて洗っているロイ様。 その横で笑っている私。

 なんとも、不思議な絵面である。

 いや、恐怖だろう。

 だって、メイドさんの顔が引きつっているよ!


 そして、サンドイッチを洗い終わったロイ様。


 さあ、いよいよロイ様の食べる姿が見える!


「では、いただきますか」


 私の手には洗っていないサンドイッチ……なんか言い方がちょっときになるけど。

 ロイ様の手には洗ってふにゃふにゃのサンドイッチ。


 さあ、いただきますよ!

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