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決戦は土曜日

神代さんと同士になってから、僕の毎日は早送りになったような気分がした。僕にとって、今まで一週間が惰性のように過ぎ去っていくものだった。今では、月曜日を楽しみに毎日を生きている自分がいる。僕は今まで何のために生きていたのか分からない。

ただ、一つだけ言える。「過去の自分ヨ。未来は明るいぞ。」


そして、僕の楽しみにしている月曜日がやって来た。


「あ、神代さん。今日も図書室だよね。」

「うん。私ちょっとだけ遅れるけど、待っててもらってもいい?」


僕は、神代さんが来る前に、蓄えていた『異世界ミンティア』の考察をノートに落書きをしながら、さらに強化していた。だって僕は『異世界ミンティア』の知識が神代さんよりあるから、こんな関係になることができたんだから。

過去の自分なら、こんなに必死になっている自分を見て、なんていうだろう。


多分、強がって、「見苦しい。相手は陽キャだぞ。」とか言うんだろうな。


でも、僕は前から友達が欲しかったんだ。神代さんが友達かは分からないけれど、やりたいことがあるからやる。これが間違っているとは思えなかった。

そんなことを僕はノートに書いた福笑いみたいな落書きに言っていた。


「ごめん。立嶋、待った?」

「いや、全然待ってないよ。始めよっか。」

それからの時間はあっという間だった。

僕が必死にため込んでいった考察が数時間の間に全部なくなってしまった。

「また、家に帰って考察しないとな。」心の中でつぶやいた、

でも、いやじゃなかった。

僕には『異世界ミンティア』しかないから。

それにしても、今日の神代さんは少し上の空な感じだけれども、相変わらず、可愛いと思う。

テレビで言っていたが、可愛い人は何をしてても可愛いという。それは本当だったんだなと。僕は、その事実を世界で自分だけが知っているかのように勝ち誇った。


僕はいつの間にか彼女にひかれていた。彼女の天真爛漫さが好きだった。

勿論、顔も。

彼女がどうして、今日は上の空なのかも聞きたかったけれど、

僕にはその一歩が踏み出せなかった。代償が大きすぎるから。


「そういえば、立嶋って妹いるんだっけ?」

「まぁ、いるけど、俺嫌われてるから。昔はお兄ちゃんとか言ってたのに」

「え!会いたい。会いたい。」


瞳をキラキラ輝かせて、完全に僕の胸の中には青春を代表する感情が芽生えていた。

この感情は僕を惑わせた。そして、僕を操作した。


「じゃあ、今度僕の家に来る?」

いきなり、家なんて来るわけないじゃないか。僕のバカ!

「いいよ~今週の土曜日でいい?」

決まってしまった。自分の頬を軽くひねった。

ニキビつぶれてしまった。

その日は、一緒に駅まで帰った。


なんだか僕だけが話している気がするが、陰キャの僕には、男の余裕というものがまだなかった。でも、神代さんは依然として上の空、なんか変なものでも食ったんじゃないかと決めつけることにした。うん。違いない。


家に帰った僕は、憑りつかれたように部屋を掃除していた。今の僕は、吸引力が変わらないと自負できる。

ドタバタと下から、何かが上がってくる気がした。やばい妹が来る。

ストライキの予感...


「ちょっと!!あんた。うるさいんだけど!急に帰って来たと思ったら、馬鹿みたいに掃除してさー。」

「うるさいな!部屋を掃除したくなったんだよ。テスト前によくあるあれだよ。」

「テスト終わったばっかじゃん。嘘つき。もしかして、恋??」

「...☆」

「え?恋?...あ、あんたが恋してんのー。その人の顔見てみたいわー」

「今度の土曜日に空を見に家来るよ。」


空気が固まり、妹・空の顔色が急変した。パレットに赤色が注がれた。

一言も言わずに、空は自分の部屋に走っていった。

そして、壁から懐かしい音が聞こえていた。

(トン・ツー・ツー)

モールス信号だ。

空は小さな時から何か困ったことがあると、モールス信号で僕に何か伝えてくるんだ。


『ヒトリジメハユルサナイカラ』


つまりどういうことだってばよ。

とにかく波乱の土曜日が始まりそうだ...

「お兄ちゃんが恋するなんて...バカ...」


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