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心に嘘はつけない

僕は踏み出した。大切な勇気の1歩を...

僕の心の準備が整う前に,僕の声はよしきに向かっていた。


でも,僕には目もくれずよしきは神代さんに襲い掛かっていた。


そろそろよしきは僕に何かを言うだろう。

なぜだ。

緊張しているせいか時間がたっていないのか,それとも本当に時間がたったのかは分からない。


依然としてよしきは僕の方を振り向かない。

なんなら神代さんも僕に振り向かない。


この修羅場の中で僕の頭は謎のフル回転を見せた。

僕の頭脳は僕を客観視して,現状を把握しようとしていた。


考えろ。僕...

僕は大きな声でよしきを呼んだ。


でも,よしきも神代さんも振り向かなった。

そして,場面は修羅場だ。

僕の足は常に震えている。


ん?震えている?まさか...


僕のステータスを整理するんだ。

僕は,陰キャ・ボッチ・デブの3拍子の男だ。

陰キャ...陰キャなんだ。そうだ陰キャだ。


この足が震えている状況!

僕が陰キャという事実!


そうだ。僕はこんな男をみせる状況を知らないんだ。

僕は大きな声を出したようでも足が震えているように声も震えていたんだ。


実際の僕は「ぉ,ぉ,ぉぃ。ゃめろ...ょしぃきぃ...」ってな感じのナヨナヨボイスだったんだ。

つまり,よしきに僕の声は届いていないんだ。

なんという失態。僕はどこまでダサいんだ。

なんかもう踏み出した1歩があほらしく笑えてきた。


自然と震えていた足も止まっていた。

アスリートが適度に緊張することが大切だと言っていた意味が分かった。

一言で言うなら,怖いけど怖くないっていう状態だ。


今なら叫べる。大きな声で...

じわり,じわりと1歩ずつよしきに近づいていく。

1歩ずつ近づくたびに心臓の音も徐々に大きくなっていく。

まっすぐ歩いていたはずなのに,徐々に足取りが怪しくなっていくのが分かる。


「お,なんだよ。このデブ。何近づいてんだよ。」

「え,立嶋...」


おぉ,おぉ,流石のよしきも神代さんも僕に気付いたみたいだ。

今の僕なら言える。

さっき緊張もとれたじゃないか。


さぁ,リベンジだ。

行くぞ!!


「ぉ,ぉ,ぉぃ。ゃめろ...ょしぃきぃ...」

ダメだ。全然声でないや。

なんだか足の震えも止まらなくなってきた。

「え?なにいってんだよ。このデブがよぉ。もう1回言えよ。」


「ぉ,ぉ,ぉぃ。ゃめろ...ょしぃきぃ...」

「プ,ハハハハ。全くぼそぼそ何言ってるかわかんないぜ。もうお前は引っ込んでろよ!!」

そう言って,よしきは僕を蹴り飛ばし,僕はやられるがままにしりもちをついた。


「た,立嶋!!」

「さぁ,神代。俺と一緒に遊ぼうぜぇ。」


よしきは僕のことなんて全く気にもせず,再び神代さんに襲い掛かろうとしている。

僕は,しりもちをついたまま、その現場を眺めていた。


普通は,戦意喪失してもいいような気がするのに,何故かしない。

なんなら,心の中で沸々と湧き上がってくるものがある。

多分,よしきに蹴られたことで,僕の中でアドレナリンが出たんだろう。


「......やってやる。僕の必殺技くらわせてやる。」


次の瞬間,僕は大きな体を起き上がらせて,よしきに向かっていた。

「はっ。なんだよ。お前,どっか行ってろよ。」

「行くぞ。よしきーー!まずは,加速呪文だ。」


そう言って,僕は異世界ミンティアに出現する加速呪文を唱えた。

「創造高速(make it draive)!!」


ドスンドスンという音とともに,僕はよしきに接近し,攻撃をしかけた。

しかし,よしきは陽キャの華麗なステップで僕の攻撃をかわし,華麗な反撃をした。


「うっ...次だ。次は防御呪文だ。無心不動(don’t think feel)!!」

これで,よしきの攻撃を耐えて,反撃しt

「うぉらぁ!!」


よしきのおらついた声と同時に僕は大きくよろめいた。

何をやっても反撃される。

緊張か疲労かわからない。ただ足が震えている。息も上がっている。


「おら!!おらおらおら!!」

僕が休憩している間もよしきは僕にラッシュをかけていた。


「やめて!!やめてよ!!よしき!!」

神代さんがよしきの攻撃を途中で止めに入ったころには、僕はよしきのラッシュに耐えられず膝をついて倒れた。


「うっ...」

「た,立嶋ぁ!!」


い,痛い。僕,痛い。もう体に力が...入らない。

殴られすぎたせいか,頭がぼんやりとしない。


ぼーーっとした頭で僕は地面を見つめ,地面に水たまりがあることに気付いた。

「は,はは。そっか小雨だったのに,いつの間にか雨...強くなってるじゃん。それになんだよ。この腑抜けた顔は...お前はなんだよ。」


僕は,地面に映る水たまりに話しかけていた。


「全く,デブってやっぱ体力はあるんだな。結構,疲れるぜ。さぁ,こんなデブなんかほっといて俺と下剋上しようぜ。神代。」

「いやだ。立嶋!!いや!立嶋!!助けて!!」


「お前はなんなんだよ...なにしによしきに立ち向かったんだよ。なんのために勇気を振り絞って,1歩踏み出したんだよ...お前は...お前は......お前じゃない。立てよ!僕!!」


大きな咆哮とともに,僕は勢いよく立ち上がった。

「うぉぉぉぉ!!!待てぇ!!!!よしきぃ!!!」


「た,立嶋...なんで...なんでボロボロなのに...ボロボロなのに...戦うのよ!!」


雨が強いせいか,神代さんは泣いているように見えた。

僕は頭で考えるよりも先に心が神代さんに返答していた。


「はぁ。はぁ。僕が...僕が...神代...さんを助けたいから。誰のためでもない...僕がぁ!!神代さんを!!助けたいんだ!!もう自分を裏切りたくない...もう自分の『心に嘘はつけない』んだ!!だから,僕は君を助ける!!」


「はっ。何をいうかと思ったらそんな決め台詞かよ。笑っちまうぜ。なぁ,神し...うぉお」


それは一瞬だった。

よしきが油断をして神代さんに話しかけるために後ろを向いている間に,僕は思いっきり体当たりした。


「やっと...やっと...一発。神代さんの心の傷はこの体当たりだけですむもんか!!

絶対に,絶対にお前を倒す!!絶対に謝らせる!!もう神代さんを泣かせない!!僕が下剋上してやる!!!」


おそらく次回で第1部完結です。今日中(多分、2時ぐらい)にあげたいと思ってます。

みなさん見てください。

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