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1歩踏み出す勇気

今日はとても良い目覚めだ。

空は少し曇っているけれど,僕はとても晴れやかな気分だった。

空と仲直りをすることができたのが一番の理由かもしれない。


僕の心と空の状態がリンクしていると仮定するならば,今のこの状況は矛盾ではない。

昨日,僕は決意した。

神代さんを救うと...

具体的に救うことがなんなのかは分からない。

僕,一人でできることなんて限られているかもしれない。


噂を消すこと......友達のいない僕には無理かもしれない。

彼女を慰めること...彼女を傷つけてしまった僕がやっていいのか?

それにもう1個...一番考えたくないけど...


決意したものの自分のやろうとしていることの大きさに僕は,モヤモヤしていた。


決意の重たさに沈み込んで倒れてしまいそうな僕を助けてくれたのは,空だった。


「ちょっと!あんた。はやくしなよ!!遅刻するよ。ただでさえ歩くの遅いのに」


「歩くのが遅い...僕のことか...」

(ゴゴゴゴゴゴゴ)

おっと,これはアニメの見すぎだ。

でも,もうここまできたら最後までやってしまおう。

「僕のこt」

「なんか元気そうだしもう行くね。」

「おい。ちょっと待てよ。最後まで聞けよ。」


閉じようとするドアの隙間から空の冷たい目線と言葉が突き刺さる。

「高校生にもなって...きも...」

バタン...


しばらく,僕の思考は止まっていた。

今,なんと空に言われたのか,ゆっくりと思い出すためだ。


「きも......僕のことかー!!」

その日の僕は,覚醒したように歩いた。

そのこともあってかいつもよりも10分以上,早くついてしまった。

ただ,僕の体はびしょびしょだ。

どうやら汗もいつもより出てしまったらしい。

正直,汗のにおいも周りの目線も気になるところではあるが,

ここはこらえる時間だ。

まだあせるような時間ではない。汗だけに......


僕が日課の机で,寝たふりをしているときに廊下から噂が聞こえてきた。


「神代さんってまだよしき先輩のこと好きなのかな?」

「最近,あの女元気ないらしいし,最高だわ。」

「なんか今日の神代さん,すごいソワソワしてるよね。」


飛び交う人の言葉,それは的のないアーチェリーのように,無差別に飛んでいく。

僕が机で寝たふりをしているのは,その現実を見たくないからなのかもしれない。

ただ,人よりも耳がいいのかむしろ現実がよく聞こえてしまう。


決して,友達がいないからじゃない。


違うからね!!


噂が飛び交う中で,ただ一つ,僕を引き付ける噂があった。

「なんか最近,聞いたんだけどさ,あのよしき先輩いるじゃん?なんか最近,今までフッた女の子に絡んでるらしいよ。なんでだろうね?」


なんだこの噂は,RPGのモブキャラがいいそうなこと言いやがって,ただ,噂は噂...

僕は気にせずに机で寝るふりをすることにした。

寝るふりに徹した結果,僕どうやらプロになったらしい,気づけば昼休みだ。


まいったね。

朝は曇っていた天気も,僕が起きたころには少し雨が降っていた。


なんだか喉が渇いたな。

ずっと寝てたみたいだし,ちょっとジュースでも買いに行こうかな。


この学校は自販機が1台しかなく,それは体育館の横にあり,なかなか人目に付く場所にはないためボッチの僕にとってはオアシスのような存在だ。


小銭を片手に,僕はオアシスへと旅立った。

僕は,オアシスへと向かいながら,どうすれば神代さんを救うことができるのかを考えていた。

それに寝てる時に聞いた噂も気がかりだ。


「よしき...僕があいつをなんとかできればいいんだけど...そんなのできるわけないし,あいつと喧嘩なんてそれだけは避けたいよ。」


もうすぐオアシスに到着と思った時だった。

僕以外に誰かいる。

まさかこのオアシスへと到達するものがいるなんて...

誰だろう。

僕は自分の存在が悟られないように,こっそりと壁から顔をのぞかせた。


「ん?よく見えない。けど,2人いる。男女だ。カップルか...なーんだ。」


僕がカップルかと安堵した瞬間に,カップルの女の方が声を発した。


僕は自分の耳がいいことを恨んだ。


「え?よしき先輩,それってどういう...」

「ふー。こんだけ言ってもわかんねーのかな。」


お前がよしきか。

なんだこいつ声だけでもイケメンなのに,顔も金髪でさわやかって反則だろ。

なんか身長高いし,喧嘩強そうだし,怖い。


「あのさ,神代。お前,俺にフラれたって噂になって,あることないこと言いふらされて困ってんだろ?」

「え,あ,はい。」

「それ,俺が解決してやるよ。」


なんだよ,よしきお前いい奴じゃないか。

見直したよ。

よしきの評価は底辺から頂点まで下剋上だ。


「ただ,一つ条件がある。」

「え,条件って...」

「お前にとっても悪い話じゃねえはずだぜ。俺とやらせろよ。」


やる?

何をだ。

ただ,分かる。

神代さんが青ざめている。

こいつはやっぱり悪だ。

また神代さんを悲しませようとしている。


「え,やる?そんなの嫌です!!」

「なんでだよ。全く他の奴らは物分かりがよかったのに,お前は愚図だな。女は俺の言うこと聞けばいいんだよ!!」


そう言って,よしきは神代さんを強く押し倒した。

女の神代さんが,男...それもサッカー部の超絶イケメンよしきに力でかなうはずがない。


でも,僕なんてもっと無理だ。

心が折れている。

立ち向かうなんて僕にはできない。


初めから,神代さんを救うことなんて無謀だったんだ。

徐々に,体も心も教室に戻ろうとしている自分がいた。

神代さんとよしきの様子はもう見えない。


でも,神代さんの声が聞こえる。


「いや,やめて。助けて...助けて!!」


誰に向かって言った言葉なのか

それは分からない。


でも自然に体も心も,よしきのいる場所に向かっていた。


「お,お,おい。やめろ!よしき!!」


怖い。

怖い。

怖い。


足も震えている。

でも,僕は戦う。

僕は戦う。



僕は振り絞る。

勇気を...


踏み出すために...

1歩を...




多分、タイトル変えるかもです。

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