夕焼けの友
まさか,ミッチェルとの会話は僕にしか聞こえないなんて...
これじゃあ僕はただの変態じゃないか。
陰キャ・ボッチ・デブに変態まで加わると,
あぁ、なんと恐ろしい...
もう誰にも手が付けられないモンスター童貞になってしまうじゃないか!!
涙で前が見えないけれども,
僕はエサの匂いをたどりながらエサの在処を探すブタのように,家に向かって歩き出そうとしていた。
「おいおい。どこに行くんだよ。葵。」
この声だ。僕を変態にまで貶めた犯人は...
「もう。ミッチェル勘弁してよ。ミッチェルとの会話は楽しいけれど...このままじゃ僕は本当の変態になって,テレビデビューしてしまうじゃないか。」
「まぁ,待てよ。俺がお前を変態にするために,お前の所に来たわけじゃないんだぜ。」
「知ってるよ。そんなことで来られたら,たまったもんじゃないよ。僕に友達を作るために必要な心構えを教えるためだろ?」
今の僕はものすごいドヤ顔だっただろう。
たまにある,幼馴染アピールしたいやつが,幼馴染?に対して,「俺はお前のことお見通しだぜ。」みたいな雰囲気でそれっぽいことを言うやつに似ている気がするんだ。
僕,あれ大っ嫌いなんだよな。
でもやりたくなっちゃう!
どうだ。ミッチェル。僕は君のことならなんでもオミトオシさ。
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「葵...」
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「ミ,ミッチェル...」
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「いや,ちげぇわ。こわいわ。お前のその自信。どっから来るんだよ。」
「そうかそうかつまり,君はそんなやつなんだな。」
思わず,エーミールが炸裂するほど,僕は自分に対して恥ずかしくなっていた。
こういう自分がドンマイな状況になったときは,
何かのセリフを借りることで,自分の感情をごまかすことができるんだ。
陰キャの僕にはもってこいの技術だ。
でも,気になる。
じゃあ,ミッチェルは,どうして...
「じゃあ,何をしに来たんだって顔をしていやがるな。」
僕は心の中が読まれたような気持ち悪い感覚にドキッとした。
でも,僕は自分の心の奥底にしまった感情は読まれまいと,ポーカーフェイスを保っていた。
誰がポークフェイスだ。
「まぁ,教えてやるよ。お前,悩んでるんだろ?それも自分のことであって,自分のことではない。そうだろ?」
自分の奥底に光が差したような感覚だ。
そしてその光は僕のカーテンにさえぎられず,僕のもとへとたどり着こうとしている。
「自分の醜さには気付くことができたみたいだな。でも,その先が分からないんだろ?」
僕に断りなく,ミッチェルは,どんどん先に進もうとしてくる。
僕にはそれがあまり,心地よいものではなかった。
「いや,そんなことh」
「大好きだった神代さんがみんなに噂されたり・悪口言われたりするのが,そして神代さんがトイレで泣いていたのが悲しかったんだろ?でも,自分を裏切った神代さんがいる事実に困惑しているんだろ?」
ミッチェルは,僕の一歩近くにまで近づいているような気がした。
勿論,身体じゃなく,心の話なのだが...
でも,ミッチェルは,分かっていない。
我が物顔で僕の心に入ってこようが,どれだけ大親友であっても,僕を見つけることはできないんだ。
「悩んでるさ...ミッチェルのいう通り,悩んでるさ...だからって何がわかるんだy」
僕のこの言葉すらミッチェルは見通していたかのようにしゃべり始めた。
ミッチェルが,何を言ったか僕はよく聞き取ることができなかった。
でも,そんな長くしゃべっていなかった。
でも,ほんの一瞬の言葉で僕は,ミッチェルを信頼した。
夕日はよく見えなかったが、僕を照らしていた。
僕を照らしていた光は心地よく僕を温めた。
周りの目線は気にならなかった。
だって,僕には友がいるから...
しれっと1年。なんてこったい。
今日、もう1話投稿するかもです。




