表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/28

REVERSI

偶然,屋上で聞いた会話が頭を離れない。


もう屋上の日から,4日も過ぎているのに,なんで忘れることができないんだろう。

神代さんは友達じゃない。

ただの...ただの他人なのに...どうして...


モヤモヤした僕のこの4日間は,自慢できるような日々ではなかった。


まず,毎日のルーティンで,空に無視されることだろ。

そして,学校の友達にも無視されるだろ。

神代さんとすれ違っても,無視されるだろ。

なんか知らないけど,全然大便が出ないでしょ。


僕,無視されすぎじゃないか?


こんなに人って無視されるものなのだろうか?

そもそも,僕,友達一人もいないじゃん。無視とかとはそもそも無縁じゃないのか?


もうこんなことを考えるのはやめよう。

無駄だ。

いや,むしろ考えるだけで寂しくなるから,

やめよう。



そういえば,今日もサッカー部のやつは終わりの会の前に,マネージャーに練習があるか聞いていたな。サッカー部の反応からすると,休みなのか。

休みすぎだろ。

4日前も休みだっただろ。


まぁ,僕はサッカー部が休みだろうと関係ない。


なぜならば,僕は今日,大阪に来て『異世界ミンティア』のイベントに行くからだ。


『異世界ミンティア』のイベントなんて初めてだ。

重大発表があるらしいけれど,どんな発表があるんだろう。(ワクワク)


おまけに今日は,『異世界ミンティア』の最新刊が出るんだよ。

投稿サイトである程度の内容を知っているといっても,

書籍版では少し内容が変わっていたり,番外編が書かれていたりで...

これがまたたまらねぇんだよな~。



持ち物はお金と期待だけで充分だ。

今日の僕は,陽キャの街の大阪でも十分生きていける自信がある。


もう何も怖くない!

『ツギハァオオサカァーウォオサカァァー』

どうやら,大阪に着いたらしい。

相変わらずアナウンスの癖強いな。

どうして数ある電車の中で,2分の2でこのアナウンスの人なんだ。


僕は,この声の主に運命を感じながらも,なんだか危ない橋を渡ってしまいそうになっていた。


まぁ,いい。

あれだけ前回は戸惑っていた、大阪も今回は輝いて見える。

さて,改札をでるとするか。


(ゴソゴソ)

...でるとするか。

(ゴソゴソ)

......でるとするか。

(ゴソゴソ)


.........切符どこ?


急に油汗がたくさん出て来た。


あれ?これでれなくない?


僕,ずっとこのままここにいることになるんじゃ...

と,とりあえず,鞄の中身や服のポケットを全部見るしかない。

(ゴソゴソ)

財布だ。中には切符がない。

(ゴソゴソ)

服のポケットに何かあるぞ。

(ゴソゴソ)

鍵だ。こんなのどうでもいいんだ。

(ゴソゴソ)

鞄にはものがいっぱいあるぞ。流石にこの中にはあるだろ。

(ゴソゴソ)

『異世界ミンティア』全巻か。本の間にも挟まっていない。

(ゴソゴソ)

ヤカン。違う。

(ゴソゴソ)

コップ。違う。

(ゴソゴソ)

目覚まし時計。違う。


僕は,あわてた時のドラ○もんか。


「落ち着け僕。まだ慌てるような時間じゃないんだ。」

そう言って,僕はなぜかあった目覚まし時計で時間を確認した。

「えーっと。16時か。確かイベントは17時だから...」

間に合わないわけではない。

絶妙に微妙なラインだ。

なんだか周りに同情もしてもらえなさそうなラインじゃないか。

まぁ,僕,友達いないんだけどね。


しかし,笑い事ではない。

僕は何回も鞄の中身やポケットの中身を確認しても,地面に落としたのかと思い,探し回っても見つからない。

僕は,探したんだ。

机の中も鞄の中も探してみたけど見つからないんだ。


どうしてだ。

どうして社会はこんなに僕に厳しいんだ。


友達だと思っていた神代さんに裏切られ,

空にも嫌われるし,

この際だから社会のせいにするけど,デブだし,陰キャだし,ボッチだし。


がんじがらめの社会で幾度手を伸ばして,何もつかめないんだ。

仮につかめたとしても「これじゃない。」ってなるんだよ。


最悪,お金を払えば出れるとは聞いていたけど,僕の今の全財産は帰りの電車賃しかなかったのだ。

なにが持ち物はお金と期待だけでいいだ。

お金と期待がなくなって、余計なものしかないじゃないか。


「もう...絶対に間に合わない。

仮に出れたとしても,帰れないと分かっているイベントなんて心の底から楽しめるわけがない...

なんで僕ばっかりこんな目に遭わないといけないんだ。

陰キャの僕はいつも搾取される側なんだ。今回の切符なくしたのは関係ないけど...

この際だ。愚痴ってやる。」


(グチグチグチグチグチグチ)


はぁ,すこしだけすっきりしたよ。

汚い世界で息を止め居心地にも慣れてきたと思っていたみたいだが,そんなことはなかったようだ。



電車に乗る前の僕と今の僕を比べたら,誰もが驚くはずだ。

ダイエット後のライザッ○とダイエット前のライザッ○のCMぐらいの差はあるはずだ。


勿論,今の僕はダイエット前の方である。


もう帰ろう。

帰れなくなるぐらいなら,家に帰ってSNSで何が起こったかを調べよう。

僕は切符売り場に肩を落としながら歩いていた。

体重は絶対に落ちないけど。


もうこうなったら,落ち込むだけ落ち込んでやる。

もしかしたらどこかでフラグを立てて大逆転みたいなパターンあるかもしれないから

「あ,あの?すいません。」


まさか,僕なのか。

いや,よくある,僕に声をかけてると思って,それっぽく接したら,全然違う人に声をかけているっていうパターンだ。違いない。


「あ,あの?すいません。」

引っかからないぞ。

絶対に僕じゃないからな。

真後ろで声が聞こえるけど,僕じゃないからな。

「あ,あの?聞こえてるのかな?このデブの人。」



ワイやないかい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ