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景色と心

神代さんと友達になってからの,毎日はとても充実していた。

仲の悪かった空とも一緒に買い物に行ったり,まるで子供の時に戻ったみたいだった。

でも,それはすべて偽物だった。

神代さんに告白をされ,

空に嫌われてからの毎日はまるでジェットコースターに乗ったみたいに早く過ぎ去っていく。

本当にあの事件が2週間前とは思えなかった。


よく,楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまうっていうけど,

僕の場合は逆だったみたいだ。

つらい時間ははやく過ぎ去ってしまう。いや,これが日常だったんだ。つらいとかじゃない。


日常に戻ってからの僕は,特に何も特別何かが起こったわけでもない。

毎日,学校に行っても


机に座り,

休み時間も机,

お昼も机,

放課後は机ではない。流石に...

屋上に行って『異世界ミンティア』を読んでいる。


さて,今日も僕はまた同じ日々を繰り返すのかもしれない。

そんなことを考えていると,僕はお母さんの作ってくれた大好きなフレンチトーストを食べ終えていた。


やっぱり,楽しい時間は過ぎ去るものなのか?


「葵!ぼーっとしてないで,ご飯食べたならさっさと制服に着替えなさい。もうこんな時間よ。」


時計を見ると,時刻は8時になろうとしていた。

学校が家に近いからといって,これはまずい。

遅刻してしまう。はやく自分の部屋に戻って着替えなければ


僕は,足早に階段をのぼり,自分の部屋に向かったが,

上から誰か降りてくる足音が聞こえた。

空だ...僕はあれから気まずくて1回も空に話しかけることができていない。


「あ,そ,空,おは...」



「......邪魔...」


今までもこんな感じだった。

しかし,ただ,つらい...

一時期,仲良くなれた気がしたからこそ...

拒絶されたような気分になってしまう。


自分の部屋で着替えながら,僕は窓の外を見ると,

家まで向かいに来たのか空が友達と一緒に学校に登校する様子が見えた。

あいつ,つい最近,部活引退したから,朝練ないのか...

空は中3なのに,友達がたくさんいて,僕は高2なのに友達がまったくいない。


まぁ,中3とか高2とか全く関係ないんだけどね。しいて言えば,部活をやってるかは大きいと思うんだけどな...


「ちょっと!葵!いつまでぼーっとしてるの!早く行きなさい!」

気付けば,時刻は8時10分になっていた。


やばい,本当にヤバい。

僕は、自分がデブだということもデブが走れば,汗だくになることも忘れて学校を目指した。




しんどい。

しんどすぎる。

もう教室について,2時間目の授業も終わったのに,なんでだ。息切れが止まらん。


「あっ,あっ,おふおふおふ。はぁはぁ」


おかしい,今日の時間割を思い出そう。

なんで学校に来て,2時間目も終わるのに,息が切れてるんだ。


「(えーっと,確か1時間目は...国語だな...

えーっと,確か2時間目は...たいい...数学だな)」


あれ?

おかしくね?体育してないじゃん。

これデブとかの騒ぎじゃないような...




キーンコーンカーンコーン


「じゃあ,終わりの会するから,ちょっと時間割係は時間割みてこーい」


もう終わりの会か,思えば息切れがなおったのは,ついさっきだ。

もうデブとかの騒ぎではなかった。

もう今日は散々だ。放課後は屋上で『異世界ミンティア』を読もう。


終わりの会の前はみんな椅子に座って,帰るためのスタートダッシュの準備をしていた。


ガラガラ...


「なぁ,マネージャー。今日の部活ってあるの?」


クラスのドアが急に開いたと思ったら,これだ。


終わりの会名物「今日って部活あるの?」だ。


オマケに聞きに来るのって,だいたい野球部・サッカー部・バスケ部なんだよな。

ちなみに今,聞きに来たのは,サッカー部だ。

「えーっとね。今日はないよ。」


「うぇーい。やったー。まじやべぇぇ」


そう言うと,サッカー部のやつはドアを閉めた。

休みがいいなら,部活に入るな。

僕は,毎日休みだぞ。

なんかそれはそれで寂しいな。


縛られるからこそ,自由が恋しくなるのかもしれない。

僕は,何もない一人だからこそ,縛られるものもないのか。


「はい,よし,帰るぞ!!」


みんなは担任の「そのセリフを待ってました」と言わんばかりに全員が立ち上がり,一気にスタートダッシュで教室から出ていった。

ちなみに僕は失敗した。


一人になってからの方が,ゆっくりできるから楽なんだよね。

だって,僕,体でかすぎて,椅子にはさまって出れなくなってるもん。


絶対に先生気付いてたもん。もういつものことだからいいんだけどね。

でるのがまた大変なんだよな。

とりあえず,いつもみたいに気合を入れて一気にでるか。

これ変な声がでるから嫌なんだよな。


「ふーっつ。いくぞ...がっっ...あ...なかなか来やがる...あ,おふおふ。」


ワインのコルクが抜けるような音がした。

やっぱり僕ってデブなんだな~。


「デブ?はぁ,はぁ,取り消せよ。今のことb...」

よし,屋上にいこ。


屋上についた僕は,スマートフォンを開いて,『異世界ミンティア』を読み始めた。

読み始めると,気づいたら時間がたったような気がして,周りも茜色に染まっていた。

やっぱり,楽しい時間は過ぎ去るものなんだな。


「ふー。楽しかった。やっぱり物語の主人公は持ってるものが違うな。僕には主人公は荷が重すぎるよ。」


時計を見るともう時刻は,18時になろうとしていた。

そろそろ帰らないと,お母さんに怒られてしまう。はやく外にでないと。


ワイワイ...ガヤガヤ


ん?なんだ誰か屋上に上がってくる。

流石に今,誰かとすれ違うのは嫌だな。

ちょっとデブにはつらいけど,隠れるか。



なんかよく分からん場所に隠れたけど,なんか無理がありそうな気がする。

ただここからじゃ,誰が入って来たのか見れないからつらいんだよな。

聞くことしかできない。



「いや,まじ今日練習休みとかサイコーじゃね?」

「な。それな。」

「そういえば,俺,最近あかりちゃんと付き合ったんだよな。」

「は,しんじ,ずりーわ。お前だけ付き合うとかヤバくね?」

「ごめんって,まぁ,けんたろうは一生,彼女できないんじゃね?なぁ,よしき?」

「まぁ...どうだろうな。」

「何,その意味深な間?よしきマジつらいわー。そういえば,よしき誰だっけ,最近ラインとかデートしてる女の子。」

「女の子?けんたろう,誰の事いってるんだよ。しんじわかるか?」

「あー,多分あれじゃね?お前のことが気になってるみたいな女の子いたじゃん。たしかーなんだっけな。かみ...なんとかだっけな。」

「あー!そうだ思い出した。神代さんだ。ありがと。しんじ。」

「やば,よしき自分の女のこと忘れるとかやば。」

「女なんて人聞きの悪い事言うなよ。全然,そんなんじゃないから」

「意外だな。よしき,お前あの子とは付き合わないのか?」

「付き合うわけないじゃん。俺は,そもそも年下には興味がないし,女なのに『異世界ミンティア』がすきとかきもすぎだろ。遊びだよ。遊び。」

「よしき,やべえわ。まじ遊び人だわ。じゃあ,俺に神代さんくれよ。」

「お前なんかにやっても,振り向きもしねえよ。あいつは俺のことが気になってるんだからな,遊びとも知らずに,告白されたらむしろ困るわ。」

「おい。よしき,それにけんたろうも,あんまそんな人に聞かれたらやばそうなこと大きな声で言ってんなよ。誰に聞かれてるか分からないんだから,それにそろそろ行こうぜ,あかりちゃんが待ってるんだよ。」

「まじ,しんじ慎重だわ。DF向きだわー。それにのろけとかやば。」

「それもそうだな。しんじ・けんたろう。行こうぜ。せっかくの部活休みなんだ。ゆっくりしようぜ。」



そう言って,3人は屋上を去った。


「神代さん...って言ってたよな。顔は見えなかった。でも,よしきってやつが...」


なんだか,とんでもないことを聞いてしまった気がする。


このままじゃ,神代さんが悲しんでしまう。


でも,僕に何ができるって言うんだ。



正義感を出しながらも,僕は自分の心に拭いきれない違和感があった。



屋上からの景色は壮観で,沈みかけの夕日となり替わるように,真っ暗がそこには広がっていた。


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