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転生先が同類ばっかりです!  作者: 羽田ソラ
ザガルバ編
77/132

76.もっと詳しく情報収集するよ

 ……翌日。

 俺はさっそく駐車場で屋台を広げ、これまで売って来たものと一緒に昨日の新商品を売り出した。と言ってもこれまでのものでここでは作れないものが2種類あるから、結局全部で4種類だけど。

 それにしてもこの街でも移動販売用の駐車場があって助かった。大通り脇とか公園内とかだと、邪魔にならないかとか治安面の問題とかでどうしても不安が残るからな……そもそもこんな大きい魔動車で移動販売やってる店なんか今まで見たことないけど。


「さてと」


 まずは昨日試作した品――クレームブリュレとクレームダンジュをある程度作って冷蔵庫に保管しておく。試食用である以上、そう多く作るわけにもいかない。……今日のところはお試しってことで、取り敢えず5個ずつ相当の量でいいか。

 その代わりベビーカステラとカボチャのタルトはそれなりの量を作っておく。カボチャのタルトも生クリームは使っているけど、使っている量も少ないし最後に焼きを入れている分単なる生菓子よりは持つ。

 ……そうじゃなきゃ衛生面で怖くてマジェリアで売れなかったってのもあるけど。いずれにしても今まで売っていたやつは今まで通りの売り方をしても問題ないということだ。……これらがウルバスクでも売ってるとは思えないけど、まあおやつレベルだし問題ないだろう。

 なんて言ってる間にお客さんが。ちょっとお歳召した奥さんか。


「あの、すみません。このベビーカステラ? と、カボチャのタルトって何ですか?」

「いらっしゃいませ。どちらも焼き菓子です。賞味期限は冷暗所で2、3日ってところですが、素朴で美味しいですよ」

「クッキーやビスケットなどとは違うの?」

「ベビーカステラはあれよりは軽い感じで、タルトの方はカボチャのペーストの分あれよりしっとりしてる感じですね」

「なるほど……おいくら?」

「お菓子についてはどちらもひとつ5クンになります。ベビーカステラはひと箱5つ入りでひとつです」

「あらお安い。ひとつずつ下さい」

「はい、10クンになります。……あ、そうだ。こちらの試食いかがですか? ひと匙分サービスしてるんです」

「試食ですか? あら、綺麗な白と黄色だこと。卵のお菓子かしら」

「白の方はクレームダンジュ、黄色い方はクレームブリュレと言います。実は昨日マジェリアからこちらに来たばかりでして、どういったお菓子が売れそうか試行錯誤してる最中なんです。なので、試食していただいて感想など伺えればと」

「それはそれは。では遠慮なく」


 これが、昨日エリナさんにも話した考え。こういうのを見慣れていないなら、見て食べてもらう以外に知ってもらう方法はない。これでリアルな反応が返ってくれば、それがどんな内容であれ参考にもなるし宣伝にもなる。

 多少の出費は……まあ仕方ないか。単価もそれほど高いわけじゃないしね。


「あら、どちらも滑らかで美味しいですね! この辺りで食べるケーキよりあっさりしてて、薄めのハーブティーにも合いそうだわ! これも同じお値段?」

「ああいえ、この器ひとつにつき10クンになります。生菓子なので、お持ち帰りではなくこちらでお召し上がりいただく形になろうかと」


 言って、クレームブリュレおよびクレームダンジュ用のココットを見せる。っていうかこれまで持ち帰りにしちゃうとココットの分費用がかさむんだよね……生クリームは大容器で買えば安くなるけど、それでも値段的にはこれでギリギリだ。

 これで高いと買われたら、流石にメニューに加えるわけにはいかなくなるんだけど――


「いいえ、それでもお安いわ! これなら毎日買いに来てもいいくらい美味しい! これいつ発売なさるんですか?」

「今日明日で反応を見て、よければその次の日にでも。ただ先ほども言った通りこちらでお召し上がりいただくことになるのと、そんなに量が作れないので数量を限定して販売することになるかと思いますが」

「分かりました! でしたら私もご近所に宣伝してきます!」


 いや、あまり宣伝されると品薄になるんですがそれは。まあでも、この人は受け入れてくれたみたいでよかった。まずはひとり。


「発売の日には看板立てて頂ければいただきに参りますので! 是非!」

「あ、ありがとうございます――」

「……あの、ここはお菓子屋さんですか?」

「あ、はい、いらっしゃいませ!」

 最初のお客さんが去ったと思ったら、すぐに次の――今度は若い女性のお客さんが。これは、もしかしたら思った以上に宣伝効果が見込めるかもしれないな……




 そして気が付けば、あっという間に昼食の時間。

 一旦店を閉めて、あらかじめ作っておいたお弁当を広げる。今日はエリナさんが冒険者組合の方に出向いているため、朝のうちに作っておいたのだ。出来たものを渡したら、何か物凄い喜んでいたけど……悪い気はしない、うん。

 メニューはサンドイッチ3種――それぞれハムカツ、たまご、野菜と一応のバランスを考えた組み合わせ。それに加えてリンゴと麦茶。少しばかり多過ぎと思わなくもないが、体を動かすならこんなもんだろう。

 ちなみにハムカツに使ったパン粉は自作。ないんだからしょうがないね。


「……さてと」


 取り敢えず野菜のサンドイッチに手を付けつつ、午前の感触を確かめる。ベビーカステラとカボチャのタルトは、ここウルバスク……というかザガルバでもブドパスの時と同じくらい売れてくれた。

 ただしベビーカステラに関しては、ホイップ生クリームをかける食べ方が好まれてたな……となると、材料を調整してもう少ししっとり目にした方がいいのか? カボチャのタルトはみんなねっとりとしたクリームにサクサクした生地が面白いと言ってくれた。これはこのままでもいいだろう。

 で、問題のクレームブリュレとクレームダンジュについてだけど――これに関してはいい反応が7割にいまいちな反応が3割ってところだった。ただそのいい反応が、そこそこいいってレベルじゃなくてかなりいいレベルだったので、これはこのままで取り敢えずは大丈夫だと思う。

 まあエリナさんの言う通り、バニラエッセンスかバニラビーンズがあったら買って使ったほうがいいと思うんだけど……

 今日営業が終わったら、市場でバニラエッセンスかビーンズがあるかどうか確認してみよう。いずれにせよ、明後日にはメニューに正式に加えられそうだ。


「……それと、あっちも問題だな」


 今日の時点で近所から買い物客がそれなりに来ており、お客さん同士が知り合いってパターンが結構あったせいかある程度噂話を聞く事が出来た。もっとも俺がマジェリアから来たって事をちゃんと分かった上での話なので、多分に先入観はあるかもしれないけど。

 とにかく、お客さんが言うには……ジェルマからの観光客が最近減って来たとの事だった。同じ観光客でもエスタリスからは結構来ているにもかかわらず、らしい。

 あ、マジェリアからは最初からそこまで観光には来ないみたいだ。まあ、こういっては何だけど細かいところであの国は文化が独特だからな。マジェリアに行きたいと思う人はいてもマジェリアから周辺国に遊びに行きたいと思う人はそうはいないだろう。


 しかしウルバスクでそんな感じなのか……そう言えば周辺国のエスタリスもジェルマへの出稼ぎが増える半面、ジェルマからの就労はかなり減っているって大臣閣下も言ってたよな。ジェルマ国内で色々完結してるってことなのか?

 内需も外需も強力で安定している。それだけ聞けば流石大国と呼ばれるだけはあると思うが……


「そもそもジェルマの主要産業って何だろう」


 エスタリスは魔導国家、マジェリアは農林国家、ウルバスクは……漁業と文化かと思ったけど、来て見て感じると意外にそういう感じでもなさそうな気はしてるんだよな。白物家電系の魔道具結構普及してるし。

 しかし、そうなるとジェルマが大国だという話ばかり先行してて肝心の食い扶持というか根拠が示されていない。それとも様々な産業を総合的に考えた結果国力が強いのだ、とでもいうつもりなんだろうか。

 とにかく、そこが分からないとうわさ話の意味するところも分かりようがない。マジェリアの製本ギルドはこの疑問に答えてくれなかったし、後で情報センターに確認に行ってみるか。


「そう言えばエリナさん、情報収集どんな感じなんだろ」


 向こうも向こうでちゃんと仕事してるに違いない。けど、どんな情報を仕入れて来てくれるのか、期待半分不安半分ってところなんだよな……

新商品の試食はエリナさんだけの特権じゃないってことですね!

しかしトーゴさん何か富山の薬売りみたいな感じになってんぞ……


次回更新は04/22の予定です!

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「転生先が同類ばっかりです!」が同人誌になりました。エアコミケ新刊です。
本編の修正並びにイラストが追加されています。WEB版における50話までの収録です。
とらのあなさんおよびAxiaBridge公式サイトからご購入いただけます。
頒布開始は5月5日です。宜しくお願いします。
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