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転生先が同類ばっかりです!  作者: 羽田ソラ
エスタリス・ジェルマ疾走編
113/132

112.サービスエリアで驚くよ

 トゥバイヒから標識に従って魔動車専用道路に入ると、そこには俺たちのよく知る高速道路があった。道路に入って標識を見る限り、最高速度は100キロ。前世の平均からするとちょっと遅めか……?

 とは言えここまでこの車で出してきた速度よりは格段に速いんだけど。


「ああそうだ、エリナさん。言い忘れてたんだけど、街を出た時の予想より早くヴィアンに着くかもしれないよ」

「え、そうなの……ああまあ、それはそうかもね。大体どのくらい早く着きそう?」

「2時間早くかな。3時間で着くと思う」

「……結構短縮したわね?」

「そりゃあ、もともと時速60キロ想定だったのが100キロ出していいことになったわけだからね。フルに出すわけじゃないにしてもやっぱりそれくらいは」


 まあ5時間が3時間になるということは、つまり夕方を迎える前には着いてしまうということで……やっぱり交通手段の発達って都市間移動には重要だよね、うん。


「とはいえそれでも3時間か……2時間くらい経ったら休憩いれましょ、サービスエリアとかあるかどうかわからないけど」

「いや流石にこれだけの高速道路を作る以上はあると思うよ……」


 というかなかったら困る。国境からヴィアンだけならまだしもこの道路は国中にあるんだろうから、休憩なしでぶっ続けで走れっていうのは流石に酷過ぎるしね。

 助手席や後部座席に座っている人たち以上に運転手が疲れるだろ、そんなもん。


「それじゃ半分以上走ったら休憩入れるってことで」

「了解。……それにしてもこんなにスピード感ある風景の移動は久しぶり……」


 そりゃそうだな、俺も前世ぶりだしね。




 その後は特に何事もなく、そろそろ運転が疲れ始めたかなというタイミングで見えてきたサービスエリアに入ることにした。少し長めのトイレ休憩のつもりなんだけど、前世の日本でよく見たサービスエリアに比べるとやや見劣りする規模ではある。

 それもそうだしここまで走っていて思ったんだけど、料金所がなかったり地上を普通に走っていたりと日本みたいな高速道路感はあまりないな……


「ねえねえ、トーゴさん。こっち来て」

「ん、どうかした?」


 トイレから出てきたエリナさんが、どこかを指さして俺を手招きする。何か面白いものでも見つけたのかな……?


「って、あれって……」

「凄いわよね、あんなものまであるなんて……」


 あんなもの、っていうか、あり得ない。

 俺が知ってるものとは形が違うとはいえ、あれは完全に――


「自動販売機、よね? 多分、後ろから商品を補充するタイプの」

「ああ……ホットミールタイプだよね」


 ということは飲み物の自販機もありそうなものだけど……あ。


「あった……! でも流石に缶もペットボトルもなくて瓶だけか」


 とは言え缶は意外と前世でも歴史が古かったし、開缶のシステムさえ再現出来ればそれほど難しいものではないと思うんだけど……中身が見えないと不満な層とかあったりするのかな?

 まあ取り敢えず1本買ってみるか。ええと、ベリージュース……


「ああ、ちゃんとカードが使えるようになってるのか。20サルーン……2銅ね。割と高いな」


 この辺も前世でのサービスエリアに共通するところだと思うけど。観光地価格、っていうんじゃなくてもっとこう……高くなる現象。

 そんなことを考えながらカードを挿入し、排出されたのを受け取ってジュースを指し示すボタンを押す。すると、ガタン、と音が鳴って受け取り口に品物が落ちてくる……って瓶でか!? もっとそっと下に落とす機構なんじゃないのか!?


「大丈夫か? 割れて……ないな」


 若干不安になる音がしたものの、取り出した瓶には傷ひとつついていない。まあ受け取り口もきれいなままだったし、それで割れるようだったらそもそもこんな形の受け取り口にしていないんだけど……

そんなことより瓶を手に取った俺は、信じられないことに気が付いた。


「……これ」

「ほーごふぁん、おいひーはほ?」

「ものを口に入れながらしゃべるんじゃありません」

「むぐむぐむぐ……んく、トーゴさん、このコロッケおいしいわよ……瓶なんか眺めてどうかしたの?」

「ああ……エリナさん、これ俺も全然信じられないんだけどさ。この瓶な」

「うん」

「ガラスじゃなくて……多分、強化プラスチックだ」

「強化プラスチック? え、そんなのこの世界にあるの!?」

「ここにあるってことはあるんだろうねえ……」


 まあ、自動車用のタイヤがソリッドタイプとは言え存在する世界だから、プラスチックがあっても全然不思議でも何でもないんだけど……いや、そのタイヤもマジェリアではほとんど見ないとか何とか言ってたような?

 そして問題なのは、この強化ガラスを瓶に使う発想がエスタリス側にあることだ。それはつまり、この製品が普通に普及していることを意味する。

 マジェリアでは見たことがなく、実在するとさえ思われていないものがこの世界では普通に製造され使われている? 技術力の偏在にもほどがあるだろ……


「そういえばこの瓶のふたも、王冠タイプじゃなくてねじ式のキャップね。中に入っているのは何?」

「一応ベリージュース、ってことになってるけど……」


 開けて飲んでみても、色も味も、ちゃんとベリーの味がしている。ブドウなんか使った日には変に管理を間違えると発酵して酒になってしまうんだけど……そういう傾向も、飲んだ感じでは見られない。

 そう言えばホットミールの自販機もおかしいと言えばおかしい。


「エリナさん、自販機で買ったものまだ余ってる?」

「え、ええ。紙のお皿にふたつ入ってたから、ひとつあげるわ。結構おいしかったわよ」

「ありがとう」


 言ってエリナさんが渡してきたものは、どこからどう見てもコロッケだった。形は少し細長めの俵型で、見た感じは中に粘度の高いソースでも入ってそうな感じではある。例えばクリームコロッケのような。

 買ってから少し時間が立っているのである程度はしょうがないけど、それでもまだほんのり温かい。


「いただきまーす」


 ひと口食べてみると、流石に揚げたてのようにとはいかないまでもちゃんと衣がサクサクしていて、中のソースもちゃんとした味になっている。古い油を使っている感じもなさそうで、うん、確かにうまい。


「おいしいでしょ」

「うん、確かに……これ以外には何か売ってた?」

「ええと、コロッケ以外だと……フライドポテトにフライドチキンに……何か揚げ物ばっかりだったような?」

「やっぱりね……」


 思った通り、この国の人間は自販機に相当慣れている。このサービスエリアに設置されている自販機は、どれも商品棚が小分けになっていて棚の横のスロットにお金を入れたりカードを差し入れたりして目当ての商品の扉を開けるタイプだ。

 そういう場合は保温機能に特化しているため、大体のホットミールが使用可能なんだけど……特に強いのは、温め直しによる衣の吸湿が気になる揚げ物だ。

 この国で揚げ物がよく食べられているのか、それともこのサービスエリアの名物なのか……それは分からないが、これが温め直しで十分な商品であれば、それ用の自販機を用意するだろう。


 ――つまり、この国はそれだけ機械関係も普及しているということになる。


 マジェリアとウルバスクでは田舎の国と先進国に入るか入らないかっていうレベルの国との差でしかなかったけど……ここエスタリスはその2か国と比べてもちょっと技術レベルが開きすぎてる。

 今日の夜、これについては報告しておかないと。いや、むしろ確認か……?

サービスエリアで買う食べ物って妙に高いけど美味しく感じる現象、というやつです。

でも日本ほどサービスエリアに力を入れてる国って他にあるのかな……?


次回更新は08/08の予定です!

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「転生先が同類ばっかりです!」が同人誌になりました。エアコミケ新刊です。
本編の修正並びにイラストが追加されています。WEB版における50話までの収録です。
とらのあなさんおよびAxiaBridge公式サイトからご購入いただけます。
頒布開始は5月5日です。宜しくお願いします。
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