第88話 休憩中に
「紅茶でゴブりまする」
休憩に入ると同時にジェゴブが手際よく準備し紅茶をいれてくれた。ジェゴブのいれてくれた紅茶は相変わらず美味しい。
「うん。いい味だね。香りも良い」
「お褒め頂き光栄でゴブります」
サーチスが味を褒めるとジェゴブが恭しく頭を下げた。本当冷静に考えたらゴブリンとは思えないほどの紳士的な態度だ。
「シルベスタもお疲れ様」
「ヒヒィ~ン」
ヘアがシルベスタの頭を撫でて労っていた。こういった旅ではシルベスタの助けも大事だからね。影ながら俺たちを支えてくれているシルベスタはもはや無くてはならない存在だ。
「この山脈も長いからな。魔物も出るだろうし油断は出来ないか」
「そうでゴブりますね。途中で日も暮れるでしょうから、このあたりで――」
ジェゴブとドヴァンが地図を見ながら山脈越えのルートを確認していた。俺も一緒に確認する。確かに長いから今日は山中で一泊することになるだろうな。
「ムッ、どうやらゆっくりと休ませてはくれないようでゴブりますね」
ジェゴブが何かを察したようだ。それから間もなくして木々がなぎ倒されていき巨大な猿のような魔物が姿を見せた。
「アサルトエイブだね。怪力自慢の魔物のようだよ。いけるかい?」
サーチスがそう教えてくれた。そうかサーチスの鑑定で調べてくれたんだな。
「問題ないよ。俺が一人でやるから皆は休んでて」
俺が前に出てそう伝える。ジェゴブはここまで手綱をとってて疲れているだろうし、ここから先はドヴァンが御者を務める。そうなったら俺がしっかり働かないとね。
「私も手伝う!」
するとヘアも前に出て声を上げた。一緒に戦ってくれるつもりなようだ。
「休んでてくれても大丈夫だよ。疲れてるだろう?」
「もう。そうやって格好つけないで。私だって戦えるんだから!」
そう言ってヘアが髪の毛を伸ばしアサルトエイブを拘束した。アサルトエイブは振りほどこうと必至にもがくが、もがけばもがくほどヘアの髪が食い込んで身動きがとれなくなっていく。
「助かるよヘア。剣神ノ装甲!」
俺もスキルを展開。剣の神装甲を纏い現出した片手剣を握りしめる。
「飛天滑襲撃!」
俺は跳躍し、そのまま滑空するような動きでアサルトエイブの喉を切った。
「グ、ガ――」
喉を切られたアサルトエイブはバランスを崩しそのまま地面に転倒した。ヘアの拘束も既に解けていた。
「一撃とは流石でゴブりますね。ヘア様も見事なサポートでした」
「流石ですぜお嬢!」
ジェゴブとドヴァンが感心してくれていた。ヘアもスキルを随分と使いこなしているよ。
「改めてみると君たちの実力は相当なものだね。依頼して正解だったよ」
サーチスも改めて僕たちを評価してくれたようだ。鑑定でステータスを見ては貰ったけど実戦での力はこれが初めてになるからね。
とにかくこれで危険は去ったし改めて休憩した後、ドヴァンが御者を務める形で俺たちは山脈越えに入るのだった――




