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第86話 サーチスの鑑定

「君たちの力は理解できた。だが、逆に不思議だ。なぜこれだけの力があるのにこのギルドはそこまでピンチなんだい?」


 サーチスは僕たちの実力は認めてくれたようだが、だからこそこのギルドの現状を不可解に思ったのかも知れない。


「それについては私からお話させていただきます」


 シルビアが前に出てサーチスに説明してくれた。ギルドの事情はこっちで話していいか迷いどころだったけどシルビアは割り切ってくれたようだ。


「なるほど――本来のマスターが不在と。ふぅ、確かに色々と面倒なことになってそうだ」


 話を聞いたサーチスがコクリと頷いた。納得はしてくれたようだけど、その反応が気になる。やっぱり依頼は無しとかなってしまったらそれこそヤバいんだけど。


「――事情は理解した。不安は残るが実力が確かなら依頼する価値はあるだろう。鑑定と解体もしてもいいが、しっかり仕事はこなしてくれよ」

「は、はい勿論です! ありがとうございます!」

「やったねカルタ!」

「あ、あぁ良かった」


 良かったサーチスは俺達の実力を買ってくれたようだ。ヘアも喜んでいる。


「とは言えカルタだったかい。君も特殊ではあるけど鑑定持ちだ。この素材は君では駄目だったのかい?」


 サーチスが俺を見て聞いてきた。それは俺も一度は考えたことだけど。


「一応似たようなのを持ってはいるけど資格を取ってないんだ。それに俺は冒険者としてこのギルドでやっていきたい」

「ふむ。なるほどね。確かに君にはそれだけの力があるのだろう」


 サーチスが納得を示した。専属の鑑定師や解体師は冒険者とはわけられる。だから鑑定師などで登録されると冒険者として仕事は受けられなくなってしまうんだ。


「それじゃあ早速鑑定と解体に入ろう。素材を見せてもらっても?」

 

 話が本題に戻り俺たちはずっと温めてきたレッドライジングの素材をサーチスに見てもらった。


「ほう。これは中々の素材だ。痛みも少ないしこれなら合計すれば150万オロ程度にはなるだろうね」

「え? そんなに!?」


 驚いた。当初は100万オロにはなるだろうと見積もっていたけど、実際はもっと上だったのだ。


「ここから僕がしっかり処置して解体すればそれぐらいに出来る。これでもそこらの解体師よりは腕は確かなつもりだからね」


 クイッと眼鏡を押上げながらサーチスが答えた。大した自信だが、根拠がないわけではなく確かな自信から来てることが伝わってくる。


「150万かそれだけあればとりあえず十分じゃねぇか?」

「はい! 十分以上です!」


 ドヴァンが顎をさすりながら口にし、シルビアが興奮気味に同意した。


「これはお願いしてよかったでゴブりますな」

「いや、お願いしてるのは僕の方だということは忘れないでほしいね」


 ジェゴブも感心していたけど、サーチスはあくまで依頼を受けてくれる条件なんだと念を押していた。勿論それは忘れるつもりはない。

 

 そしてサーチスは手早く鑑定と解体を済ませてくれた。解体についてはある程度はこっちでもやっていたけど、やっぱりサーチスが仕上げると見違えてしまった。


「これが鑑定書だ。これさえあれば買い取る側も文句はいわないだろうさ」

「ありがとうございます! それならこちらの処理は私の方でやっておきますので、皆さんはサーチス様の依頼をこなしてください」


 シルビアが上機嫌で言った。確かに鑑定書さえあればあとはシルビアでも売却にいくことは可能だろう。


「さて、では僕の依頼で動いてもらおうか」

「はい。勿論です!」

「確か遺跡がどうだって話だったよな?」

「マジェスタの遺跡でゴブりましたね」


 皆の反応にサーチスが頷いた。


「そう。マジェスタの遺産が眠る遺跡だ。それを探して連れて行って欲しい」


 いよいよサーチスの依頼をこなすときがきた。しかし遺跡の探索か――


「それでその遺跡について現状はどこまでわかっているのかな?」

「一応ここシルバークラウンから南南西に向かった先にある荒野のどこかにあるという噂は聞いたけど、それぐらいかな」


 それは、また随分と大雑把だな。


「ま、それならそれで行ってみるのが手っ取り早いな」

 

 ドヴァンが後頭部をさすりながら言った。確かに中々大雑把だけどその方が良さそうだ。


「それでしたら準備が必要でゴブりますね。私の方で色々と揃えておきましょう」

「それなら準備が揃ったらまずは荒野に向かう。それでいいかな?」

「――随分と決断が早いな。ただの噂で合ってるとは限らないのだがいいのかな?」

「ま、何もなきゃ噂も立たないだろうからな」

「はい。それに行動に移さなければ何も始まりませんから!」


 僕たちがそう答えるとサーチスがフフッ、と笑った。なんだか可愛らしい笑顔だなと思った。


「なるほど。嫌いじゃない考え方だ。君たちに依頼してよかったかもしれないね」


 サーチスにも気に入ってもらえたようだ。そしてジェゴブが荒野を探索する準備をしてくれたあと俺たちは馬車に乗って荒野に向かうのだった――

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[一言] そして次の話は半年後になるのであった
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