第83話 鑑定師を探して
とにかく急がないと。俺たちは改めて英雄豪傑へと向かった。
ギルドに入りそれらしき人物を探すが――
「駄目だ。あのパルパルって奴が言っていたようなドワーフは見当たらないぜ」
「ごめんなさい私も見つけられませんでした」
ドヴァンが困った顔でヘアもシュンっと肩を落としていた。
「俺も見つけられなかったしそんな顔しないで。だけど参ったな」
二人を労いつつも悩ましい問題だ。あまり時間もないわけだし。
「ふむ。しかし妙でゴブすな。話を聞く限りそこまで時間が経ってるとも思えないでゴブすが」
「またあなた達ですか。一体うちに何用で?」
ジェゴブが話しているところで受付嬢が声を掛けてきた。確かヒルダという名前の受付嬢だ。美人だけどどこかキツそうな印象を受ける。
「人を探してるんだよ。何かこう背の小さくて眼鏡を掛けたドワーフの女見なかったか? ギルドに依頼に来た筈なんだよ」
気後れする様子も見せずドヴァンがヒルダに聞いた。流石ヘア以外には遠慮がない。
「……やれやれ随分と不躾ですね」
「あ、あのごめんなさい! ただ人を探してるのは本当なのです」
「いやお嬢が謝ることじゃありませんよ! 失礼な物言い済まなかった!」
申し訳な下げに対応するヘアにドヴァンが慌てて姿勢を正し隣で頭を下げた。ヒルダが、ふぅ、と嘆息する。
「正直あなた方がくるとマスターの気が散って迷惑なのです。なのでお答えしますがギルドにそのような方は見えてません」
え? 見てない?
「おいおい本当かよ!」
「私はギルド全体の管理を任されております。その私が見落とすなどまして依頼人ともなればなおさらです」
眼鏡を直しながらはっきりと彼女は答えた。正直嘘を言ってるようには思えないし嘘をつく理由もないだろうな。
そして俺たちは英雄豪傑を後にした。何よりヒルダの帰れオーラが凄かったのもあるけど……。
「しかし参ったな。まさかギルドにいねぇなんて。あのサウザンドに担がれたか?」
「いや、何というか彼がそんな嘘をつくとは思えない」
頭を掻きながらドヴァンがサウザンドの情報に疑念を持ったようだけど、俺はそれを否定した。
そういう姑息な真似をするタイプには見えなかったんだ。
「私もカルタの意見に賛成です。あの話に嘘があったとは思えないし……」
「お嬢がそう言うならそうなのでしょう!」
ドヴァンがあっさり手のひらを返した。ヘアへの忠誠心、見事なものです。
「だけどよぉ、こうなったら神頼みそれこそシルビアの占いにでも頼った方が早いんじゃねぇか」
「「「あ――」」」
ドヴァンの話に俺たちの声が揃った。そうだなんでこんな大事なこと忘れていたんだ。
「私としたことがうっかりしていたでゴブね」
「仕方ない。何かドタバタしていたし。とにかく急いで戻ろう!」
俺たちはギルドに戻ることにした。シルビアは冒険者証を取りに行ってるけど流石にそろそろ戻って来てると思う。
だから急いで戻ったわけだけど。
「あ! 皆お帰りなさい。そして聞いてくださいなんとギルドに依頼人がやってきたのですよ!」
ギルドに戻るとシルビアが出迎えてくれた。その上、何やら嬉しそうだ。どうやら依頼を持ってきてお客さんがいたようで――席に座っていた女の子がそうか。
何か随分と小柄だな。そして眼鏡をしていて大きなリュックを背負っていて……え?
「ま、まさかあんた流れの鑑定士という?」
「……なぜそれを知っているかはわからないけど確かに僕は鑑定士もしている。もっとも今日はこの英雄豪傑に依頼に来た身だけどね」
やっぱりだ! この子がパルパルの言っていたハーフドワーフの――でも、えっと英雄豪傑って?




