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最弱スキル紙装甲のせいで仲間からも村からも追放された、が、それは誤字っ子女神のせいだった!~誤字を正して最強へと駆け上がる~  作者: 空地 大乃
第五章 冒険者編~はじまりの章~

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第80話 信用の出来ない種族

前回のあらすじ

ようやく所属できるギルドの決まったカルタ達だったがギルドの借金をなんとかしないとギルドが潰れてしまうという事実を知る。一行はギルドを救うため金策に走り回ることとなった。

 ジェゴブが掴まえたのはリリパト族の男だった。かなり身長が低いのが特徴の種族で、成人しても人間の子ども程度でしかない。

 

 そのため、ジェゴブに腕を取られ俺たちに見下ろされる格好になっていた。

 それにしても……解せないな。この連中は全員、あの時死んでしまったと思っていたのだが……。


「くそ、上手くやり過ごせたと思っていたのに何だってんだよ……」

「やれやれ、リリパト族は自分の利益を最優先させる傾向が強いので、あの状況で協力するのは妙だと思ってましたが」

「ということは、ジェゴブはこいつの死を疑っていたということか?」

「はい。確かにあのオークの奇妙な道具でやられたようには見えましたが、肉片1つ残らないというのには違和感がありましたのでゴブります」

 

 パルパルと戦っていたのは侵食する(バタリアン)大軍(イロージョン)の喋るオークだった。それにジェゴブが乱入したのだが、近くで見ていたからこそ判ることもあるということか。


「でも、どうやって助かったんだ?」

「恐らく何らかの魔道具でゴブりましょう。リリパト族ならばそれぐらい隠し持っていても不思議ではないでゴブります」

「……畜生、オレっちとしたことがぁ」


 ジェゴブに捕まり、諦めに似た顔で項垂れる。う~ん、しかし、捕まえたはいいけど、どうするこれ?


「――それで、オレっちをどうするつもりだい?」

「そうでゴブりますね。幾つか選択肢がありますな。先ず一番無難なのは衛兵に突き出す。勿論そうなれば貴方は改めて罪に問われる事になるでしょうな。もう1つは元のギルドに引き渡す」

「……」


 おいおい、とちょっと思ったが、ジェゴブには何か考えがありそうだし見守ることにした。ドヴァンやヘアも同じ考えなようだし。


「ですが、これはどちらをとっても貴方には最悪な結果しか生まないでしょうな。何せ一度はギルドに命を狙われた身でゴブります。例えギルドに引き渡さなくても、生きていたことが判ればタダではすまないでゴブりましょうな」

「……何がいいたいんだよ」

「別に大したことではありません。今の2つは最悪な選択でゴブりましょう。なのでもう1つだけ少しはマシな選択肢を与えて上げてもいいという話でゴブります」

「……マシな選択肢? なんだよそれは」

「はい。それは勿論衛兵にもギルドにも突き出さず、我々もここで貴方を見たことは誰にも言わない。その代わりに貴方は私に最大限協力する。それが約束できるのであればこの場は見逃すという選択も考えられます」

「……ふん、オレっちと取り引きしたいってことかい」

「ちょ、ちょっと待てジェゴブ」


 途中まで静観していた俺たちだったが、ドヴァンが口を挟んだ。怪訝そうに眉を寄せているが気持ちも判る。なんとなく胡散臭いんだよなこいつは――


「お前、もしかしてあのことでこいつを頼るつもりか?」

「そうでゴブります」

「マジかよ……おいおい、それでこいつは信用できるのかよ?」

「はい、勿論信用は、出来ないでゴブりますよ」

「え? 出来ない? あれ? 聞き間違いかな?」


 思わず俺は耳を疑った。信用できるならともかく、出来ないだって?


「出来るの間違いじゃないんですか?」

「いえ、信用は出来ないに間違いないでゴブります。先程もいいましたが、リリパト族という種族が自分本位なのです。金目のものが大好きで自分の利益に繋がるためならどんなことでもしますが、必要なくなれば裏切るなんてなんとも思わないのがリリパト族です」

「す、凄い言われようだな……」


 本当、それなのに協力を求めて大丈夫なのか心配になってしまう。


「ふん、否定はしないさ。大体そんなのは生きとし生けるもの全てが持つ考えだろ。オレっちたちはそれに嘘がないんだ」

「そのとおりでゴブります。そしてだからこそリリパト族の多くは商人となり商売で大成しております。彼らは信頼は出来ませんが、自分の利益に繋がることならば努力を惜しみません。信用はできなくてもその姿勢は評価に値します」


 どうやら悪いところだけではないようだ。それにしても商売で大成する種族が冒険者なんてやってたんだな。


「ふん、それでその信用できないオレっちと本気で取り引きする気なのかい?」

「勿論です。確かに貴方は全く信用も出来なければ自分のためなら相手を平気で裏切ることも厭わないでしょう。ですが、逆に言えば自分にとって有利な状況では、もしくは裏切っても良いことがないという状況なら裏切らないでゴブりましょう?」

「あ、そういうことか……」


 ジェゴブの考えが判った。冷静に考えればパルパルの状況は最悪だ。この場で俺たちがこいつを見限れば待ち受ける運命は破滅しか無い。


 約束だけして逃げる可能性にしても、そんなことをして生きていることがバラされれば手配書が周るだけだ。つまりジェゴブの言う通り、こいつが裏切る理由がない。


「……なるほどね。全くリリパト族一ずる賢いと言われたこのオレっちを手駒にしよつとは中々やるじゃんか。それで、目的はなんなんだい?」

「こいつ……随分と偉そうだな」

「当然、それがオレっちのやり方さ。大体、こういう話を持ちかけるってことはあんたらだって難題を抱えてるんだろ? だったら立場は平等、違うかい?」

「……そうでゴブりますね。ならばあくまで対等にお話致しましょう」


 そしてジェゴブは俺たちの現状を話して聞かせた。どうやら自分たちがずる賢い分相手の嘘を見抜く能力にも長けているようだ。なので伝えた内容に嘘はない。


「ふ~ん、なるほどね。つまりあんたらは3日以内に50万オロを用意する必要があり、その金を作るための素材もあるが、鑑定師と解体師がいない上、鑑定なしで売ろうとしてもどこも買い取ってくれないと」

「そうでゴブります。なので貴方の出番です。リリパト族の情報網があれば、この素材を売却する方法も見つかるでゴブりましょう?」

「……はは、無茶を言ってる。あと3日しかないんだろう? これからどんなに頑張ってもそんな相手を見つけることは不可能さ」

「んだよ、偉そうな態度になったわりに不可能なのかよ」

「ま、とは言ってもオレっちに預けて貰えれば売却は可能さ。あんたらが断られた店でもおいらなら平気なところもあるからね」

 

 あ、なるほど。俺たちは自分で素材をなんとかすることだけ考えていたけど、全く別の人間が売りにいけば買い取ってくれる可能性もあるわけか。


「それなら丁度いいですね! 例え半額でもなんとか間に合いますし」


 ヘアが笑顔を咲かせた。頼る相手に不安はあるが、素材を持ち逃げしたら困るのはこいつだ。それに当然店に入るところまで見張るつもりだし。


「ちょっと待った。まさかあんたら、素材を売ったお金をまんま貰おうなんてつもりじゃないだろうね?」

「あん? どういうことだ?」

「分前の話さ。オレっちがあんたらの代わりに動くんだから、その分はいただかないと。そうだね、本当は半分は貰いたいところだけど、今回は三分の一でいいよ」

「は、はぁあああ!? お前、自分の立場判ってるのかよ!」

「勿論判ってるさ。だが、言っただろ? そっちだって弱みはあるんだ。つまり関係は平等。それならオレっちにだって報酬を貰う権利はある」

「お前、本気で言ってるのか? こっちはつき出そうと思えばお前を衛兵に突き出したっていいんだぞ?」


 とんでもないことをいい出したな。この条件で三分の一も取られたらとても足りやしない。

 だから威圧を込めて相手に迫る。脅しに近いが、こっちは四の五の言っている場合じゃないんだ。


「……脅したって無駄さ。おいらにそんな真似したら困るのはあんたらの方だろ? 言ったはずだぜ、条件は一緒だとね」

「何が一緒だ。お前は俺たちより状況は悪いだろうが」

「そう思うなら好きにすればいいさ。だけど舐めるなよ。オレっちたちリリパト族は平気で裏切るが裏切りは許さない種族だ。お前らがそういう態度に出るなら最後にあんたらが絶対にお金が集まらないよう何をしてでも妨害してやる」

「な、お前、そんな脅し!」

「いえ、ご主人様、これは脅しではないでゴブりましょう。彼らは信用できませんが、ある種の挟持は持ち合わせているのでゴブります。彼らは交渉する以上、必ず利益を追求する種族でもありますからね」


 つ、つまりタダ働きはしないってことか。しかし――


「ジェゴブ、それだと俺たちはお金が集まらないことになってしまうぞ?」

「そのとおりでゴブります。だから今この男が言ったことは却下でゴブりますね」

「へ?」


 きゃ、却下?


「おいおい、折角オレっちがいい案を与えてやってるのに、駄目っていうのかい?」

「駄目ですな。私が何も知らないと思ったら大間違いでゴブります。貴方達が最初に持ちかける話は自分にとって一番楽に利益をあげられることです。つまり今貴方が言った内容は聞くに値しないということでゴブります。最初に言った筈でゴブりますよ。私たちは貴方のことは信用していないのでゴブります」

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