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第53話 召喚士

前回のあらすじ

槍使いを倒した

お視点書き

ンコビッチ→カルタ→???

この視点の順番でお送り致します。


いつも感想や応援をありがとうございます!

総合評価もおかげさまで2万ポイントを超えることが出来ました!感謝感激!

 冗談じゃない。こんなことになるなんて――こんなことなら、あの連中のこだわりなんて無視して召喚獣をけしかけておくんだったわ!


「そろそろ諦めたらいかがでゴブりますか?」

「クッ!」

「まぁそうだな。俺は女を痛めつける趣味はねぇし」


 ギリアンとパルパルは完全に意識を失っている。私の召喚獣の内、既にリッパー、ランウータン、それに後からやってきたこの隻腕の剣士にランタンもやられている。


 残ってるのはファンとフロスト――しかしこの二つの組み合わせは悪くないなぜなら。


「いやぁぁ~」

「フゥウゥウウウウウウ!」


 そう、ファンは扇で風を起こし、フロストは冷たい息吹が得意。フロストの息吹はファンの起こした風に乗ることでより勢いを増す。


 範囲も広がり、隻腕の剣士と片眼鏡の執事を一気に呑み込んだ。このまま体温を奪ってさえしまえば。


「くそ、なんだこれ、クソさみぃ!」

「ご安心ください。それもすぐ収まりますよ」

 

 は? すぐ収まる? 何を言っているんだこいつは? 私の召喚獣はそう簡単に――


「キャッ!」

「ヒャン!」


 だけどその時、真横から飛んできた光の矢がファンとフロストを射抜いた。それによって、二体の召喚獣が外界から消え去る。


 召喚獣は外界で活動できる為に義体化して現れているようなもの。ある程度の攻撃には耐えられるけど限界を超えると幻獣界に戻ってしまう。


 でも、まさか気づけないなんて……今なら判る。私の耳の眼が、カルタという男をしっかり捉えたからだ。


 私の目は他の種族と違い顔にはない。顔についているのは本物の目ではなく魔力を蓄えておける器官だ。


 本当の目は左右の耳に装飾具のようにぶら下がっている。そしてそれ故に、私達耳眼族は多種族と比べても視野が広い。


 にもかかわらず、私が気づけなかったということは、あの男、何か気配を消す術を心得ていたということか――


 しかし、これで【大量召喚】で呼び出した召喚獣は全て消えてしまった。


 大量召喚は私が十五になったときに授かったスキル。文字通り一度に大量に召喚が可能なスキルだ。召喚する分の魔力を確保する必要がある人間と違い、我ら耳眼族は魔力を蓄える器官が備わっている。


 なのでこのスキルとの相性は良かったと言えるだろう。体内に魔力を蓄積していると魔力を集めるという工程を省けるため術式の記述や詠唱も短縮できる。


 しかし、召喚も万能ではない。召喚獣は義体化状態が保てなくなり強制的に送還させられてしまうと暫く再召喚が不可能となる。


 これは再義体までに時間がかかるからだ。召喚獣によってその時間はまちまちだが、強力な召喚獣ほどこの時間が長くなる。


 ジャックシリーズは使い勝手が良い召喚獣だが、それでも強制送還されてしまうと2~3時間ほどは再召喚出来ない。


 そうなると大量召喚のスキルも意味をなさない。何せ召喚する手札がもう残り少ない。


「流石ご主人様でゴブります。これで確実に追い詰めましたね」

「あぁ、だがちと遅いぜ。それに、なんだそりゃ? ボロボロじゃねぇか。大丈夫なのか?」

「返す言葉もないよ。結構攻撃を受けたからな。でもポーションを飲んだからなんとか」


 こいつら、余裕ね。私の召喚獣を全て倒したと思って、私のことは脅威じゃないと思っているのだろうけど。


「さて、こうなるともうお前も諦めるほかないと思うけど? まだやるかい?」


 剣先を向けたまま、降伏しろと言わんばかりの態度。でも、甘いわね。本当に甘々。ポーションで回復したと言ってもぼろぼろじゃない。


 これなら――いける!

 魔力を全身に纏い、強化する。魔力を蓄積できる耳眼族だからこそ出来る種族固有の力。あの時ヘアという女の髪に縛られた時も使用したのがこれだ。

 

 これで一気に近づく! 倒すんじゃない。後ろをとって拘束する。手段はもう一つあったけど、アレをやると私に余裕がなくなる。

 

 それならこれでこの男を人質にして、他の仲間を回収して引き上げたほうがいい。正体はバレたけど、罪人のこいつらが何を言おうと残った連中は聞く耳持たないだろうし、今回の件も擦り付けられて罪はより大きくなるだろう。


 わざとこいつらが逃げたように偽装し、首をとって賞金を手に入れるのが目的だったけど、もうそれどころじゃない。かなりの失態だけど、全滅して捕まるよりはマシ。


 さぁ! 後ろをとった! あとはこのまま。


「勘弁してよ」

「ぎゅひィ!」


 い、痛い! 顔が熱い、え? 何? 顔面を柄で強打された? 鼻血、私、鼻血出て、どうして?


「ヘアの件は知っていたから気をつけてはいたよ。でも、注意さえしていれば反応できない速度じゃない」


 バレ、てた――いや、どんな手かは判ってないと思うけど、なんとなく何かしてくると予想していたってこと?


「なるほど。耳眼族は目に当たる箇所に魔力を蓄えておりますが、どうやらその魔力で全身を強化したようでゴブります」

「つまり、魔力を氣みたいに使ったってことか」

「器用な事するなぁ。種族特有の技術だよなそれ」


 あの、ジェゴブとかいう男にはあっさり看破されてしまったようね。あいつ、洞察力が高い。隻腕の方は剣の腕に長けていて、カルタは剣も弓も扱える。


 厄介ね。大体魔力で全身を強化出来るといっても、それで動き続けることは不可能。いくら蓄えているといってもそんな事していたらすぐに魔力は尽きる。


 それに全身を強化しても私がもともと魔法系なのは変わりない。ギリアンみたいなパワーもソイのような業も私にはない。

 

 やっぱり手札を隠したままなんて甘かった。何より、私の顔に傷つけたのは許せない。いい感じにふっ飛ばされたから、距離も空いた。これなら。


「私の顔に傷をつけたことを後悔なさい! 召喚! ジャック・オー・エレキ!」


 魔法陣型の召喚術式を地面に刻み、私はそれを呼んだ。三人がすぐさま臨戦態勢を取る。流石に反応が早い。


「ジャッジャジャーーン! きゃー! ビリビリビリビリビリビリーーーーーー!」


 魔法陣から姿を見せたのはいつもどおりハイテンションな召喚獣。ジャックシリーズの電撃担当。非常に好戦的ですごく扱いにくいのがこのエレキ。


 全身が発光し、放電し続けている人型の召喚獣だ。人型と言ってもサイズはかなり小さく、フェアリーやピクシーといった妖精と呼ばれるタイプより一回り大きい程度だ。


 でも、小さいからと侮ったら痛い目をみる。放電量が多く、半径数メートル程度まで電撃が伸びる。


 しかも常に放電し続けるため電撃が止むこともなく、全身に電撃をまとったままの突撃も威力が高い。


 ただ、この召喚獣、敵味方を全く気にしない。本能の赴くままに飛び回って電撃を撒き散らすから、大量召喚でも呼ぶことはなかった。流石に呼び出した召喚士にまで危害を加えることはないけど敵味方入り乱れる戦いでは扱いづらい。


 しかし、それも今なら関係ない。ただ、これだけでこの場を乗り切れるなどとは思っていないが。


「いきなさい! 好き勝手暴れまわっていいから!」

「イェーーーーい! ビリビリビリビリビリビリビリビリ!」


「全く次から次へと妙なものを呼び出してくれるぜ」

「どうやら電撃を扱うようだ」

「それなら、私にお任せをでゴブります」


 あのジェゴブという男が前に出てきた。まさか一人でなんとかする気? だとしたら今度はそっちが甘く見すぎね。


 エレキだけでなんとかなると思ってなかったけど、相手がこっちをなめてくれるなら――


「暴れまくるよ! ビリビリビリビリビリビリーーーーーー!」

「返雷!」

「ギャッ!」

「え?」

「く、くそーお前生意気だぞ! ビリビリビリビリ!」

「返雷!」

「ギャン!」


 思わずあのジェゴブという男を二度見三度見する。な、なんなのこいつ。なんでエレキがこんな簡単にあしらわれているのよ!


 ま、まずいわね。とにかく、急いであの術式で呼ばないと! こ、こうなったらちょっと無理が出るけど省略術式で――


「ギャーーーー!」


 な、もう消えた! なんなのよ! 役立たずもいいところじゃない!


「何だったんだあれ?」

「まぁ、多分相手が悪かったな」

「相手が電撃であれば、負けるわけにはいきませぬ故」

「ところであいつ、何作ってるんだ?」


 しまった! もう見つかった! えい、ここはこうして、よし、これで何とか!


「おい、お前今度は何する気――」

「う、うるさい! 絶望なさい! さぁ来なさい! ジャック・オー・ガズム!」






◇◆◇


 あのンコビッチとかいう、しかし改めて凄い名前だな。とにかくその女が召喚したエレキとかいうのはジェゴブがあっさり倒してくれた。


 ジェゴブには返雷という特技があるからな。どんな雷でも跳ね返すという技だけど、全身が雷みたいなものだったあの召喚獣にはそれが直接のダメージにつながったわけだ。


 だけど、あの女、妙な魔法陣を更に地面に描いていたようで、また新しい召喚獣が現れてしまった。


「ウォオオオォォオッォォオオオ!」


 ンコビッチが呼び出したジャック・オー・ガズムは端的に言えば巨人だ。十メートル級の巨人である。


 それにしても他のジャックシリーズとは明らかに様相が異なるな。他のジャック系はまだ愛嬌があったが、こいつは見た目もかなり厳つい。


 全身にまとった気配も非常に暴力的なものだ。その巨人は俺達を見下ろしてきたかと思えばいきなり口から炎を吐き出してきた。ランタンを彷彿させる末広がりな炎だがでかいだけあって規模が違いすぎる。


 こんなの街中に現れたら大パニックだな。俺たちはなんとか炎から逃れたが、かと思えば今度は口から凍える息吹ときたもんだ。


 これはフロストが使ってきたのと通じる。だけど当然これも規模が違いすぎる。吹き付けられた地面はカチンコチンに凍ってしまった。アイスリンクづくりには役立ちそうだが、まともに食らったら全身氷漬けになりそうだ。


 他にも突風を吐いてきたり、俺がウルアロウで攻撃すると土を何重もの壁にして防いだり、体の内側から刃を飛ばしてきたり、ドヴァンが接近して攻撃を仕掛けようとすると全身から電撃を迸らせてきたりとやりたい放題である。


 どうやら全てのジャックシリーズの技をこいつ一体で使いこなすみたいだな。しかもどれも他の召喚獣より遥かに強力だ。


「おいおい、なんなんだこの化物?」

「体もかなり頑丈そうでゴブりますね」

「あぁ、全く倒れる気配がない」


 とにかく近づくのは危険なので、ジェゴブは魔法で、ドヴァンは遠距離から斬撃で、俺は矢で削っているわけだが、どうにも埒があかない。


「あはははは! む、無駄よ! このジャック・オー・ガズムは、た、体力だってすっごいんだから! もう、すっごいんだから! はぁ、はぁ、もう、あんたらに、勝ち目なんて、ないんだから」

「ふむ、どうやら相当無理して呼んだみたいでゴブりますね」

「あぁ、それだけにかなり強力そうだ。どうするよ?」

「どうすると言っても、なんとかしないと――ん?」


 その時、ふと俺の脳裏にある光景が浮かんだ。想起したといってもいい。あれ? これなら――


「さ、さぁ! やってしまいなさい! ガズム!」

「ウォオオォオオォオオォオオン!」

「くそ、こっちに来やがる元気そうだなおい、て、うん? カルタどうした?」

「攻撃するのさ」

「は、はは、何それ? そんな弓で何度やっても効かないわよ! いい加減諦めな――」

「ウルアロウ!」

「ぐべぇ!」

 

 光の矢がンコビッチの顔面を捉えた。そして気絶した。すると俺たちに近づいてきていたジャック・オー・ガズムが霧のように消え去った。


 うん、やっぱ無理して巨人を狙わないで正解だった。召喚士が気絶したら消えるんだからな――






◇◆◇


「……最初聞いた時、何の冗談だと思ったのだが、まさか本物とはな」

「素直に信じてもらえて何よりだ」

「当然だ。あんたほどの気配を持った人間、そうはいない。それに、証明書も本物だった。だが、どうして姿を消していたのに突然? Sランク冒険者スダルキス――」

スダルキスとは果たして……


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