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最弱スキル紙装甲のせいで仲間からも村からも追放された、が、それは誤字っ子女神のせいだった!~誤字を正して最強へと駆け上がる~  作者: 空地 大乃
第四章 シルバークラウンの冒険者編

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第50話 助けに来た?

前回のあらすじ

ゼンラマンがヘアを助けてくれた。

 馬鹿な! こんなことがありえるのか? 

 正直、罪人を乗せただけの馬車を襲撃してくるなど馬鹿な盗賊もいたものだと小馬鹿にしていたのだが、奴らは存外強かった。


 勿論私達が弱かったなんてことはない。馬に跨がり馬車に随従してきていた兵達も腕利きであるし、私とてかつては騎士として国に仕えていた事がある。


 相手の様相から油断するべきではないと判断はしたが、襲撃者四人に対しこちらの人数は私も含めて倍の八人いたこともあり、ここまで圧倒されるようなことは想定していなかった。だが、それは甘い考えだった。


 襲撃者は全員が仮面を被っており、一体は明らかに人間ではなかったのは注意すべき点ではあった。


 身長からしてオーガを飼いならしているのだろうというのが我らの考えだった。しかしオーガであれば私が何度か相手をし倒した事がある。


 そのため、オーガと思われる巨体は私が相手することにした。残った三人は、槍持ちの一人はそれなりにやりそうであったが、残りの一人が明らかに女であり、もうひとりはやたらと小兵であった為、残りの七人でかかれば問題なく打ち倒せると思っていた。


 だが実際は私より先にその七人が倒されてしまった。槍使いの強さはとんでもなく、小兵も厄介なスキルを持っており、何より女が召喚士であった。


 しかも一度にあれだけの召喚獣を呼び出すとは――しかも私が相手しているオーガもこれまで相手してきたどのオーガより手強い。


 斧を使った戦い方も武人を思わせるソレであった。しかもこのオーガ、全く本気を出していない。それどころかまるで敢えて仲間がやられている姿を見せつけるかのような位置取りで私と戦いを演じている。


 それはあまりに屈辱的なことだった。


「これで、あの三人を救うことも出来るわ。さっさとやってしまいなさいオーガ」


 やはりオーガであったか。しかし、そういうことか。どうやらこの四人はあの連中の仲間だったようだ。この襲撃もあの罪人共を助けるためのこと。


 くそ! 私は自分の愚かさに腹が立った。どうりであの連中に余裕があったはずだ。あいつらは知っていたのだ。いずれ助けが来るんだということを。


 だが――


「私にとて意地がある! 例え仲間がやられても、こんなところで何も出来ず終わるわけにはいかない。喰らうが良い! はぁあああぁ――一撃必殺!」


 一撃必殺――私の持つ強化系のスキルだ。全身全霊を込めた必殺の一撃を叩き込む。その威力たるや通常の攻撃の十数倍に上る。


 強力だが生命力の消費がそれなりに大きく、外れたりガードされたときの隙が大きい。ここぞという時に狙うべき必殺スキル。


 だが、明らかに私を軽んじてるこいつには当たる! そう、当たったのだ。だが、にもかかわらずこのオーガは平然とした様子で立ち続けていた。肩をポリポリと掻き、まるで私の一撃が児戯のようではないか。


 しかも、直後奴が軽く斧を振り、それだけで私の全身を襲うとんでもない衝撃。地面が遠ざかり空が近づく。


 そして再び空が遠ざかり、私は地面に叩きつけられた。あんな手打ちの一撃で、私の全身の骨が悲鳴を上げていた。


「とどめを刺すか」


 倒れた私の視界に、槍使いの姿が映った。両手で槍を持ち、まるでちょっと草刈りでもするかのような軽々しさ。

 

 だが、位置的に私の首を刎ねるつもりなのは間違いないだろう。


「我らの名誉のため、死ね――」

 

 名誉? 盗賊に名誉も糞もあるものか。ふざけた連中だ。だが、そんなふざけた連中に私は殺され――


「飛天――滑襲撃!」

「――ッ!?」


 だが、その時だった、一つの影が空中から槍使いに剣戟を叩き込んだ。槍使いは槍でガードするが大きく飛ばされた。


 だが、この男は――


「貴様! どういうつもりだ!」


 そう、この連中が助けようとしたカルタであった。なんだ? どういうつもりだ? おかしな真似を、きっと何か悪巧みをしているに違いない。


「……正直、あんたのことは好きじゃないけど、連中に好き勝手させるのも気分悪いし、仕方ないから助けてやるよ」


 ……は? 私を、助けるだと?


「貴様! よりによってふざけたことを! あの連中から既に計画は聞いているのだぞ! この蛆虫がハエを呼び起こし助けてもらおうとしたようだが、例えそれで一時は逃げられたとしても、必ず我々がお前たちを捕まえ、死刑台に送ってやる! こんなことで恩を売ったなどと思うなよ! この恥知らずな極悪、ぐぼぉ!」

「いや、もういいよ。とりあえずここで寝てて――」


 くそ、が、かならず、見つけてやる、必ず、だ――






◇◆◇


 全く、必ずもくそも逃げる気なんてないってのに。それにしても徹底してる兵士だ。どう見ても俺達の話を聞いてくれそうにないし、溜まってる鬱憤もあったから殴り倒してしまった。


 気絶してくれていた方が楽だからいいけど。


「……いきなり切りかかってくるとはな。全くわざわざ助けに来てやったというのに酷いやつだ」

「なんだ? 今日はやけに喋るじゃないか。イメージチェンジか?」

「……何のことだ?」

「本気でバレてないと思ってるならおめでたい奴らだ」

「おいおい、オレっち達は折角皆を助けに来たんだけどなぁ」

「そうよ。感謝こそされ非難される覚えはないわね」

「ウガ~!」

「やれやれ、それならもう少しまともな変装でもしたら如何ですかな? 仮面を被っただけでは一度戦ったことのある相手を見間違うわけがないでしょうに」

「でもあれだな。そっちのオーガのマネは良く出来てると思うぜ。頭の悪そうなところが実にな」

「……テメェは死にたいようだな」


 ドヴァンの挑発にあっさり反応しやがった。煽り耐性のないやつらだな。


「……それにしてもよく枷が外せたものね」

「ハッ、あの枷はスキルを封じるだけだからな。その程度俺なら余裕で壊せる」

「……少しは手間取ったけどね」

「そ、それは多少だろ! 壊せたんだからいいだろうが!」

 

 確かに、ジェゴブによるとアダマンタイトを組み合わせていたから、実際は素手で壊せただけでも確かに凄いんだけど。


「とりあえず武器も回収できたし、こっちは準備万端だ。どうやら色々ふざけた真似してくれたようだからしっかりリベンジしないとな」

「……随分と余裕ね。でも判ってるの? 前と違って今あなた達は三人。こっちは四人。しかも召喚獣も呼んでいる」


 確かにあの女の周囲を囲むようにして召喚獣が配置されてる。数で言えば圧倒的に不利だが。


「俺達だって何もしてこなかったわけじゃない。気持ちはドヴァンと一緒だ。しっかりお返ししてやるさ」

「……面白い。ンコビッチ、某に召喚獣の助けはいらぬ。この男は今度こそ某の槍でトドメをさしてくれよう」

「おう、それならこっちの剣士は俺様がしっかり片を付けてやるよ。勿論余計な援護は不要だ」

「あちゃ~そうなるとまたオレっちは外れかぁ。このゴブゴブうるさい片眼鏡なんてねぇ」

「そうでゴブりますね。貴方はとんでもない大外れを引いたことになります。尤も貴方程度では誰を選んだところで外れでしょうが」

「……へへっ、お前生意気だよ」

「やれやれ仕方のない連中ね本当に」

 

 そして、あの槍使いが再び俺に向かってきたわけだが――






◇◆◇


 ふん、俺様の目の前にはあの隻腕の剣士が立っていやがる。前に俺様が散々甚振って、泣きながら逃げ出したくせに、生意気にも表情に恐れがない。


 どうやらやり方が足りなかったみたいだな。全くそもそも人間はガリラ族に比べて遥かに矮小な存在だと言うのに、その上こいつは隻腕だ。


 それで俺様に勝てると思っているのが大間違いなのさ。蟻がどれだけ頑張っても竜に勝てないように、ちっぽけな人間じゃ俺様に勝てやしねぇ。


「どうした? 今度は背中を見せて逃げないのか? それとも俺様に許しを乞うための手段でも考えているのか?」

「うっせぇオーガだな」

「あん?」

 

 オーガだと? ふん、それはあくまで振りだったが挑発のつもりか? 安いな。この俺様がそんな挑発にのると思ったら大間違いだ。まぁさっきはちょっとムッときたけどな。


「俺様がオーガならてめぇはゴブリンってところか。ずる賢いどころなんてそっくりだ」

「なんだ? 知らないのか。ゴブリンにだって強くてジェントルなのがいるんだぜ?」


 は? 何を言ってんだこいつ? ゴブリンなんざ食べるか雌とやるかしか考えてない節操のない雑魚だろが。


「お前が何をいおうと、前にこの俺様に手も足も出なくて逃げ回っていたのは事実だろうが。お前の運命は死しかねぇんだよ」

「お前は頭が悪い癖に、凝り固まった考えしかもてないんだな。これならオーガの方がまだマシだぞ」


 本当に生意気なやつだ。人間のくせに、ガリラ族より遥かに劣る人間のくせに!


「そこまで言うなら違いってのを見せてみるがいいさ。無理だろうけどな! ガリラ流戦斧術ラントウォーゲ!」


 俺様の見た目で勝手に力任せの筋肉バカだと勘違いする奴らがいる。

 だが、俺様はそんな連中をこの技で黙らせてきた! スキルだけじゃねぇ、この武術が俺様の力の証明!


 俺の放った氣が波となって襲いかかる。隻腕の剣士にこれを避けるのは!


――スパァアアァアアァアアァアアン!


「……なぁあああぁああああ!?」

「なんだ? 何を驚いている? まさかこの程度の薄っぺらい氣が俺に切れないとでも思っていたのか?」

氣だけにきれました。

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