表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱スキル紙装甲のせいで仲間からも村からも追放された、が、それは誤字っ子女神のせいだった!~誤字を正して最強へと駆け上がる~  作者: 空地 大乃
第四章 シルバークラウンの冒険者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/95

第49話 帰ってきたゼンラマン

前回のあらすじ

ヘアを連れ去ろうとした連中を追い詰め、カルタ達を乗せた護送馬車は盗賊に襲われた。

「あ、えっと、何か隙だらけっぽかったので、殴っちゃいました……」


 なんと! 驚いたことにあの大きな金色の拳でハントをぶっ飛ばしたのはヘア様でした! これは本当にびっくりです。どうやら髪の毛を拳に変化させたようですね。こんな力が隠されていたとは!


 残ったふたりも顎が開きっぱなしです。あまりのことに唖然としています。完全に助けに来てくれた皆さんのおかぶを奪ってしまってます。


「これ、俺たちが来た意味あるか?」

「ははっ、でもほら。最初にここにいた盗賊を倒したの僕たちだし」

「……まぁ、それもそうか」


 なんとか納得しようとするリーダー様です。そうですね。やはりこれだけの数を最初に潰せたのは大きいはずです。


「ば、馬鹿な! 確かに強力とは聞いていたけどここまでだなんて!」

「あ、慌てるんじゃない! おいあんた! このクロスボウが見えないのか――ギャン!」

「大人しくしてください!」


 女のほうが袖をめくって隠されていたアームクロスボウをヘア様に向けようとしましたが、そんな暇も与えず今度は鞭のようになった髪の毛で引っ叩いておとなしくさせました。


 完全に気を失ってますね。どうやらこのふたりは大したことがなかったようです。


「く、くそ!」

「貴方も、悪あがきはもうやめてください!」


 な、なにかヘア様がすごく頼もしく見えてしまいます。彼女の髪の毛が完全に場を支配してますね。拳も大量に作り上げましたし、もうあの男に逃げ場は――


「ブラインド!」

「え? キャッ! 目が! 目が見えないよ~」


 なんて可愛らしい声でしょうか。と、そんなことを言っている場合ではありませんね。


「あの男、なにかスキルを使ったようです。そのまま逃げる気かも知れません!」

「そうはいかないよ」

「弓を持ってる奴はあれの足を狙え!」


 ヘア様が目を両手で塞いでいる辺り、一時的に視界を奪うスキルの可能性があります。一時的と思ったのは今まで使っていなかったからです。もし視界を奪い続けるスキルであるなら馬車に乗せた時点で使用していたはずですからね。


「馬鹿が! この状況で逃げられないことぐらい百も承知! だったら!」


 しかし、男は逃げることが目的ではなかったようです。懐から巻物(スクロール)を取り出したかと思えば指を噛み切り、地面で開き血判を押しました。


「一か八かだ魔獣召喚!」

「魔獣召喚だって?」

「馬鹿なそれは!」

 

 魔獣召喚――通常の召喚魔法は召喚士が契約した幻獣界の召喚獣を呼び出します。ですが魔獣召喚は魔法によって今のような巻物に魔獣を閉じ込めてしまうのが特徴なのです。

 

 一度巻物に閉じ込めてしまえば本人でなくても、血判によって誰でも呼び出せるようになります。そのため以前は商人も取り扱っていたそうですが、危険性が高くそのため多くの国で現在は取扱禁止商品として指定されております。


 ですが、裏の闇市場などでは関係なく取り扱われております。あの人が持っているのもそういった品物なのでしょう。ですが――


「いでよ! 魔獣サウダージ!」


 開かれた巻物から漆黒の光が溢れます。そして中から巨大な魔獣が出現しました。


 ヤギを巨大にしたような魔獣です。目つきは鋭く、角は雄々しいですね。体格も普通のヤギよりは逞しく感じます。


「よ、よしサウダージ! やれ、あいつらを全員、やってしま――」

――パクンッ。


 魔獣に命じようとする男でしたが、た、食べられてしまいました。ですが、仕方がないのかもしれません。魔獣召喚が危険とされているのはこのリスクがあるからです。確かに巻物さえ手に入れれば血判で誰でも呼び出せます。


 ですが、呼び出した者の実力が伴ってなければ契約で縛りきれず、手痛いしっぺ返しを受ける事となるのです。


「だから不味いといったんだ!」

 

 アイズ様が叫び地面を蹴りました。どうやら魔獣召喚のことは知っていたようですね。サウダージはいま食らったばかりの肉を咀嚼し続けてました。


 ですが、剣を抜き迫るアイズ様を――鬱陶しそうに前肢で払ってしまいました。


「ひゃぁああぁああぁああぁああぁああ!」

「アイズ様ーーーーーー!」


 あぁどうしましょう! アイズ様が随分と遠くまで飛ばされてしまいました。


「くそ、あいつはいつも肝心な時になるとこれだ」

「え? いつもですか?」

「あぁ、だけど大丈夫だろう。アイズのやつ、あれで結構丈夫だからな。いつもひょっこり戻ってくるんだ」


 それを聞いて安心しました。ですが、問題はまだ解決してません。魔獣が大人しく引き下がってくれればよかったのですが、それはやはり甘い考えですね。


 召喚されて自由になった魔獣は大体機嫌が悪いと聞きます。


「お、おい、魔獣なんて大丈夫かよ……」

「ビビるな! 魔獣とはいえ相手は一匹だ!」

「あ、あぁそうだな」

「グルルルルゥ」

 

 魔獣が唸り声を上げてこちらを睨みつけてきます。かなりの迫力でしたが。


「大人しく、してください!」


 なんと、ヘア様は怯むこと無く黄金の拳を魔獣サウダージに叩き込みました。しかも拳だけではなく、鎌や槍にも変化させ攻撃を加えていきます。


『――ウォオオオオォオオォオオォオォオオン』


 するとサウダージが吠え声を上げました。な、なんでしょう? よくある迫力のある咆哮とはまた違った、何か思い起こさせるような――


「あ、あ、うそ、お父さん、お、母さん、あ、あぁぁあ」

「うあぁああ、親父、おふくろ、思い出が蘇る、うぅうぉおおおん、帰りてぇよ~うぉおぉおん」

「何だ? 突然死んだ母さんのことが、くっ、駄目だ、母さんのことばかり思い出されて、戦闘どころじゃ……」


 な、なんということでしょう。ヘア様が涙を流し、周囲の冒険者も一様に故郷や両親、家族、恋人などを思い出し、その記憶に浸ってしまいました。かく言う私も、この気持ちは、まずいです。魔獣の姿も目に入りません。サウダージのことが急にどうでもよくなりました。


 ですが、このままでは全員が犠牲に、まぁでも、いっか――思い出に浸って死ねるなら、それはそれで――


「――みんな惑わされちゃ駄目だ!」


 ですが、その時、脳裏に響き渡る声。何か随分とはっきりと聞こえてきたことで、急に頭がすっきりしてまいりました。


 外の景色が視界に飛び込んできます。ふと見ると、サウダージはヘア様のすぐ横まで――ヘア様危ない!


「ゼンラキーーーーーーック!」

「――!?」

「え? あれ? 私、一体どうしたんだろ? て! キャッ、え、え、ぜ、ゼンラマーーーーン!」


 ヘア様が驚きの声を上げました。当然です! 私も驚いてます! そもそもどうして――



「全裸で覆面被った女性が魔獣を飛び蹴りしてるの!?」

「うぉおおぉおおぉおお! 来たぜゼンラマーーーーン!」

「俺たちの味方ゼンラマン!」

「流石だ最強ゼンラマーーーーン!」


 しかも周囲がやたら盛り上がってます。え~と、もしかして?


「皆さん知っているのですか?」

「おうよ! ゼンラマンは困ってる人の味方だからな!」

「東に泣いている人がいれば全裸であらわれ、西で困っている人がいれば全裸であらわれ、南でドラゴンに襲われてる人がいれば全裸で現れ、北で全裸で震えている人がいれば全裸で現れる! それが!」

「「「「「「絶対無敵の正義のヒーロー! 我らがゼンラマンだ!」」」」」」


 何でしょうか? リーダー様まで一緒になって凄い一体感です。ですが最後のに関しては全裸の相手に全裸で向かってどうするのでしょうか?


 いやそれ以前に――


「だからなんで全裸なんですか!」

「「「「「「全裸こそ最強の証だからだ!(きっぱり)」」」」」」


 何か疑問を持っている私のほうが間違っているような気になってきました。それに確かにゼンラマンの飛び蹴りで魔獣はふっ飛ばされましたし。


「さぁ! 今日も恥ずかしいからさっさと決める! 絶対無敵全裸奥義!」


 あ、やっぱり恥ずかしいのですね。


「ゼンラパーフェクトファイヤーーーー!」

『メッェエエエエエエエエエエエェエエエェエエエェエエエエエエエエエェエエエ!』


 サウダージの全身から炎が吹き上がりました。見た目はともかく技は凄いです! なんと外側から焼くのではなく、内側から焼いてしまってます! これでは魔獣もひとたまりもありません!


「「「「「「よっしゃ! 今日も見事一撃必殺! 流石ゼンラマンしびれるあこがれるっぅうぅう!」」」」」」



 見事に声が揃ってますね。呆れるほど凄いです。


「怪我はないかい?」

「え、あ、はい。私は大丈夫です。ですが、どうしていつも全裸なのですか?」

「あっはっはっはっは、さらばだ!」


 あ、はぐらかしましたね。そしてゼンラマンは飛び去っていきました。


「今日もゼンラマンはよくやってくれた。本当助かるよ」

「はぁ、今日もということは前もあったんですか?」

「あぁ、前はドラゴンを倒してくれた」


 ドラゴン! 予想以上に凄い人だったんですね!


「お~~~~~~い! 皆大丈夫だったか~~い?」

「うん? はは、ほら見てくださいシルビアさん。案の定あいつ戻ってきたでしょう?」

「それにしても、またあいつ戦闘が終わってから戻ってきたぜ」

「全くちゃっかりしてるよな」


 うん? んんんん?


「アイズくん! 良かった無事だったんだね」

「あ、うん。そうなんだ。たまたまふっ飛ばされた先におっきくてぶよぶよしたスライムがいてね」

「なんだあいかわらずだなアイズは」

「「「「「「全く、運のいいやつだぜ!」」」」」」

「…………あの、前も戦闘が終わってから戻ってきたんですか?」

「うん? あぁ前は竜巻にのまれたんだが、運良く竜巻の目に入ったらしくてな。こいつは妙に運がいいんだよ」


 むむむっ……何か怪しいですね! 怪しいですが!


 とにかくヘア様の安全は確保いたしました。後はカルタ様達がどうなっているかですね……。

カルタ達は無事なのか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ