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最弱スキル紙装甲のせいで仲間からも村からも追放された、が、それは誤字っ子女神のせいだった!~誤字を正して最強へと駆け上がる~  作者: 空地 大乃
第四章 シルバークラウンの冒険者編

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第46話 逃亡者

前回のあらすじ

シルビアと逃げたのだった。

「ふむ、全くあやつは相変わらず厄介事に巻き込まれとるのじゃ」


 私は今外界の様子を眺めていたのじゃ。本当はあまり特定の相手に固執するのは良くないのじゃが、やはりあの神装甲を手にした少年じゃからな気になってしまう。


 それにしても――まさかあやつがのう。本人は忘れているか、それとも我が全く違う姿だったから覚えていなかったのか判らぬが、神が言うのもおかしな話じゃが妙なめぐり合わせなのじゃ。


 しかし、あの神装甲は確かに強力じゃが使いこなすには骨が折れるじゃろう。

 あやつにもこの間話したが、今のままではどれほど頑張っても備わっている神の力は半分も引き出せぬ。


 何故なら神装甲を授かり、最初に纏える神は結局のところ本来あるべき力の一端を借り受けているにすぎないからじゃ。


 そのあたりは本人の相性もあって決まってくるのじゃがな。それでも仮とは言え四柱を扱えるのは十分すごく、一端とはいえ普通であれば覚えたとしても発動するのも困難な筈であるのじゃ。


 しかしやつは何も教わらずいきなり3秒力を維持してみせた。そこに私は可能性を感じた。それがついつい見てしまう原因かも知れぬのう。


 尤も神装甲は確かに破格な能力じゃが、神威系とされるスキル持ちは他にもおる。またレアスキルと称されるスキルは神スキルの他にもまだ二つ、生体系スキル、超人系スキルとがある。


 そういえばあの娘は生体系スキルのホルダーじゃったな。それもまた面白いところか。


 とにかく、カルタが神装甲を完璧に使いこなすには必要なことはまだある。先ずはシルバークラウンの近くにあるラビリンスを攻略し、守護神(ゲニウス)ノ装甲を身につけるべきじゃろう。


 あれならば比較的消費が少ないであろうし、仲間思いのあやつにもぴったりじゃ。試験としてもまだ楽な方であるしのう。


 尤も、それでも今のままならば難しいであろうが――しかしあやつに降りかかるトラブルは、逆に言えば奴自身を鍛えるのに最適とも言えるか。


「外界の様子をみていられるのですか? まさかまたあのカルタという少年を見ていたわけではないですよね?」

「ぬぉ! 何だルシフェルか。お前、いつも唐突にあらわれるのは止めるのじゃ!」

「それは失礼いたしました。ですが、私に見られてなにか困ることでも?」

「別にそんなものはないのじゃ。それで何のようじゃ?」

「何の用も何も、仕事が溜まって……」


 そういいながら書類の山を机の上に並べていくルシフェルなのじゃ。なんと容赦のないやつなのじゃ!


「これを今日中にお願いしま――」

「これでドロンさせてもらうのじゃ!」

「な、ちょ、スキルダス様!」


 全く、こういう時は逃げるに限るのじゃ。それにしても、今も厄介事に巻き込まれているようじゃが、カルタよ、上手くやるのじゃぞ――






◇◆◇


「以上が、あの三種族の特徴でゴブリます」

「あぁ、ありがとうジェゴブ。助かるよ」


 俺たちはこのシルビアって女性に助けられる形であの場を離れた。そして今は一緒に逃げているわけだが、その間にジェゴブから簡単にあの場にいた種族について教えてもらっていた。


 先ずガリラ族は事前に聞いたとおりの戦闘力に優れた体が大きな一族。

 耳眼族はその名の通り耳にぶら下がっている装飾品のような綺麗な玉が実は目という一族だ。なかなか驚きで、顔の目に当たる部分は魔力を蓄えておく器官なんだとか。


 だから魔法に長ける一族で、同時に氣のように魔力をそのものを活用し一時的に肉体を強める術も心得ているようだ。


 それを聞いて特にヘアが納得を示していた。どうやら一度はあのンコビッチという耳眼族を髪で縛ったが引きちぎられたらしい。


 ヘアの髪はかなり頑丈になる筈なのに、それを引きちぎるとは……それにしてもヘアの髪、散々だな。


 そのあたり気になって聞いたけど、まだ後で手入れすれば大丈夫だからって。

 でもあまり無理はさせられないよなぁ。ドヴァンもそこはやたら気にしてたし。


 あとはリリパト族だけどこれは肉体的にはガリラと逆。つまり全種族で一番背が低い種族なんだとか。しかしそのかわりすばしっこく、すごく器用。あと音楽好きが多いらしい。頭の回転も早く計算能力の高さなどを活かして商人として大成するのもいるらしい。ただ、その分ずる賢いところがあるんだとか。


「ジェゴブ様は凄いんですね。私よりずっと詳しい」

「いえ、雑学程度でゴブります」

 

 振り向いて感心するシルビアに恐縮するジェゴブ。それにしても――綺麗な人だな。細く透き通るような銀色の髪は背中まで達し、紅色の瞳はぱっちりと大きい。


 そして、なんというか胸が大きい。ヘアも決して小さくないし割とある方だと思うけど、比べるとその違いは歴然だった。でも、それなのに腰は細くスタイルが良い。


 う~ん、シルビアさんみたいな受付嬢がいる冒険者ギルドなら、冒険者の人気が集中しそうだな。思わず彼女の前に出来る列が思い浮かんでしまうほどだ。


「シルビアと言ったか? ところで俺たちどこに向かってんだ?」

「あ、はい。とりあえず一旦私のギルドへ向かい、策を練ろうかと」

「ギルドというと挑戦者の心臓というギルドですか?」

「はい! その、ギルドを名乗るには今は恥ずかしい状態ですが……ただ精一杯のことはさせて頂きますので!」

「そうなんですね。でも、馬車は大丈夫かな?」

「シルベスターは賢い馬ですから大丈夫かと――」


 馬車に関しては途中細い道を通ることになるのでそのまま持ってくるわけにはいかなかった。そこでジェゴブがシルベスターにお願いして無人のまま走らせている。

 

 普通ならなかなかそこまでは出来ないが、ずっとシルベスターを世話してきたジェゴブだから信頼することができたんだろう。


「シルベスターならきっと大丈夫さ。ところでシルビアさんは、どうしてそこまで俺たちを?」

「はい、先ず手配書を見た時に何かがおかしいと思ったこと。あとは占いで運命について暗示があったもので」


 シルビアがはにかみながら答えた。手配書か、正直俺が見たあれだけだとありえないって感想しかもてなかったけど。


 あとは、う、占いか。まぁ女の人はそういうの好きだって言うものな。


「もうすぐです! ギルドにつきますので」

 

 そうこうしている間にシルビアが指で示す。そして路地を抜けたその先に待っていたのは――


「これは驚いた。まさか本当にやってくるとはな」


 鎧と槍で武装した衛兵の集団だった……。


「君はこの吹けば飛ぶようなギルドの受付嬢だったかな? うむ、まぁご苦労さまと言っておくか」

「え?」

「お、おいテメェまさか!」

「ち、違います! 私、まさかギルドの前に衛兵がいるなんて!」


 ドヴァンが怒りを顕にする。だけどシルビアは必死に違うんだと訴えた。

 その様子を見るに――


「いや、多分シルビアさんは関係ないよ」

「そうでゴブりますな。私もそう思うでゴブります」

「うん、そうだよね。シルビアさん一生懸命だったもん。それなのに騙そうとしたなんて思いたくないものね」

「お嬢、お嬢がそういうなら俺も信じますよ。それに、確かに嘘をついている女の顔じゃなかったな。すまねぇ」

「そ、そんな……私こそ何も出来なくて」


 シルビアさんが泣きそうな顔をした。こんな顔を見せる彼女が騙そうとしているわけないよな。


 でも、問題はこれからどうするかだ。何せ衛兵はぞろぞろと出てきて俺たちがやってきた路地も塞いできた。逃げ道は完全に封鎖されてしまっている。


「それで俺たちはこれからどうなるのかな?」


 とにかく、この中で一番偉そうな兵士に尋ねる。


「勿論そちらのお嬢さんは保護させて頂き、残りは罪人として捕らえさせてもらうよ。商家のお嬢さんを誘拐し、洗脳までして好き勝手な真似をしたんだからな」

「……さっきの冒険者にもいったが俺たちはそんなことはしていない。濡れ衣だ」

「それを判断するのは私達だ」

「ちょっと待ってください! いくらなんでも横暴すぎるのではありませんか? 大体肝心のヘア様が誘拐されたのを否定しています」

「それは洗脳されているからだ」

「馬鹿いえ! 大体なぜ洗脳する必要がある! それに俺はお嬢様のことをこんな小さな時から知ってる! もし本当にそんな馬鹿なことをしている連中がいたら俺がぶった切ってやるよ!」

「君か。情報はもう掴んでいるよ。ドヴァンだったな。だけど、そこのヘアというお嬢様のご両親からすでに連絡が入っているんだ。元々護衛としてついていたお前が、リトルヴィレッジで殺人を犯して逃亡中だったカルタに持ちかけて、この計画を思いついたとな」

「え? な、何を言っているんですか! わ、私の、両親は、もう、もう……」


 ヘアが涙ぐむ。当然だ。彼女の両親はもうとっくに亡くなっている。ドヴァンの件にしても、デタラメが過ぎる。


 それに、俺が殺人? あまりに話がおかしい。一体これは……。


「とにかく、詳しい話は牢にいれてからでもじっくり聞かせてもらうとしよう」

「……ヘアはどうなるんだ?」

「そんなものお前たちが気にすることじゃない」

「私が、私が気にします! 私のことです!」

「……ふぅ、君に関してはご両親が後に迎えに来ることになっている。それまでは我々の保護下に入ってもらうよ」


 両親が、迎えに来る? ますますわけがわからないな。何せそんなはずはありえない。


「さぁ話は終わりだ。お前たちとっとと捕まえろ」


 衛兵が動き出す。俺は――自分の頭をさして、シルビアに合図を送った。頼む気付いてくれよ――


「カルタ! ジェゴブ! こうなったら強行突破だ! 意地でもお嬢を守るぞ!」

「いや、ここは大人しくつかまろう」

「おう! 命に変えても、て、は?」


 ドヴァンが唖然とした顔を見せた。まぁそうなるだろうけど。


「どうやらご主人様には何かお考えがあるようでゴブります」

「いや、でも、お嬢が……」

「そ、そうだよ! 私皆と離れるなんて――」

 

 俺はヘアに向けてうなずく。大丈夫だという気持ちを込めて。

 そう、少なくとも衛兵の話を聞くにヘアにすぐに何かがあるとは思えない。ただ問題もある。それはシルビアに頼ることになるが――


 とにかく今は一旦捕まるにしても――絶対に終わらせない。そして事の真相を掴んでやる。

次回の話でこの濡れ衣がなぜ起きているのかなど明かす予定です。



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