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最弱スキル紙装甲のせいで仲間からも村からも追放された、が、それは誤字っ子女神のせいだった!~誤字を正して最強へと駆け上がる~  作者: 空地 大乃
第四章 シルバークラウンの冒険者編

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第44話 ガリラ族、リリパト族

前回のあらすじ

乱入した四人の冒険者に襲われた。

「この手配書やっぱりおかしい……」


 一人の少女が疑問を持ったのは、ギルドに回ってきた手配書を眺めてしばらくしてからの事であった。


 そして彼女はカードを取り出し、机に並べて次々と捲っていく。


 運命――真実の逆は嘘、悪魔の左手……これは、やっぱり。


 そして少女は立ち上がり、急いで建物の外へ出た。少女の背中側に見える建物の外観は明らかに誰かの手によって傷つけられていた。その為か見た目にはかなりボロボロに見えてしまう。その看板には、冒険者ギルド『挑戦者の心臓(チャレンジャーハート)』と刻まれていた――






◇◆◇


 ギリアンの巨大な戦斧が迫っていた。横薙ぎに振られた斧刃に俺の刃が重なる。一瞬にしてその重さが伝わった。


 体もそうだが斧も当然重い。何もせずただ受け止めただけなら、奴の宣言通り俺の腕が吹っ飛んでもいてもおかしくないだろう。


 しかし螺旋流の氣の練りは防御でも役に立つ。体内の氣を螺旋回転させることで威力を上げるのが螺旋流だが、防御した瞬間には逆に衝撃を体内の螺旋の氣で受け止め衝撃を効率よく逃がす。


 だがこれも無制限でいくらでも出来るというものじゃない。当たり前だが氣だって使えば消費する。生命力を直接スキルにあてるようなやり方よりはマシだが、あまりにダメージの大きな攻撃は当然受け流したとしてもそれなりの消費はある。


「ははっ、なるほど武術か。しかも、お前も氣が使えるな?」

「お前も?」


 ギリアンがニヤニヤしながら言った。本当に癪に障るやつだ。こいつはまだ一度も真剣な顔を見せていない。


 それは俺を舐めている証明だ。ジェゴブの話だとガリラ族という戦闘力に長けた種族の出らしい。見た目のデカさは勿論、物理的な破壊力も一級品ってことか。


 だが、戦闘に長けた種族ならば、氣を知っていてもおかしくはないか。


「さて、お前に一ついいことを教えてやるよ。俺様はまだ半分も力を出してない。この意味判るか?」

「――あぁ、それを聞いて安心したぜ。今のが本気だったら手応えなさすぎてあくびが出ちまうところだ」


 クソッタレ、この威力で半分以下だってのかよ。


「その言葉が強がりじゃないことを祈るぜ。さて、それじゃあ行くか、【重撃】――」


 怖気が全身を支配した。奴の攻撃に特に変わったところはない。ただ振り上げた斧を落とすだけだ。


 だが、俺の氣が訴えている――これをまともに受けたら死ぬ!


 山が崩れたような轟音が鳴り響いた。大きく飛び退いた俺の目が捉えたのは派手に陥没する地面だった。奴の体が肩まで埋まる。大量の水が陥没した穴から吹き出てくる。


 このぐらいの規模の街なら水道ぐらい地中を走っているのが当たり前のようだが、それが破壊されたのだろう。


「はっはー! おもしれぇ!」


 飛び上がり、穴から抜け出た。ズシンっと地面が揺れる。なんだこの歩く災害は?


「さて、折角だから今度は武技を試すか。もっと遊ばせろよ? 重撃アンド――【ラントウォーゲ】!」


 いくら図体がでかいとは言え、明らかに届かない距離だった。だが、ギリアンが戦斧を振り下ろすと同時に氣が波のように直進してきた。石畳が次々めくれ上がっていく。当然それによって俺の正面は完全に逃げ場が防がれている。


 地面を蹴り跳躍した。ギリアンからみて直進五百メートル程の地面がグチャグチャになってしまっている。他に人がいなかったのが幸いだったが。


「ガハハ! 派手に壊れたなぁ。あぁそうだ。当たり前だがここまでの修繕費は全てお前らに回るからな」

「ふざ、けるなこの木偶の坊が!」


 俺だって何もただ黙っていたわけじゃない。氣を溜めて、タイミングを図っていた。螺旋の氣を刃に集束させ、それを竜巻として放つ。


「螺旋流破鎧術竜巻横截(たつまきおうせつ)!」


 竜巻がギリアンに向けて駆け抜ける。


「ほぅ、おもしれぇ!」

 

 だが、それをギリアンは左手の円盾を使って受け止めた。確かに体がでかい分、盾の面積も大きいがそれで防ごうとするかよ。


「ぬふぉ、これはなかなか、だが、温い!」


 しかも、あの野郎、俺の技を弾き返しやがった。竜巻は空に向けて飛んでいく。


 チッ、やっぱこの条件じゃ分が悪すぎるな――






◇◆◇


「ヒャ! また落雷? 怖い怖い」


 リリパト族のこの男、飄々としておりますがなかなかの曲者でゴブリますね。感覚的に来る位置が察せられるのか、私が使用したサンダーストライクを全て避けてしまいました。


 さて、これで残りの本数は七本。


「でもさぁ、なんでお前、魔法使う時指を鳴らすの? もしかしてカッコいいと思ってる?」

「……悪いですかな?」

「ハハッ! マジだったんだ。面白いやつ!」


 ケタケタと腹を抱えて笑い出しました。これと同じ質問は以前、ご主人さまからもされました。尤もご主人様は馬鹿にするつもりではなく興味からでしたが。


 そして勿論ご主人様にはしっかり説明させて頂きました。私が指を鳴らすのは魔法を使う為のスイッチみたいなものです。


 この男が気づいているかはわかりませんが、私は十本の指に事前に術式を込めております。こうすることでいざという時に詠唱や術式をその場で構築する手間を省いているのでゴブリます。


 ただ、込めただけでは魔法は発動できません。発動させるにはそのための条件が必要です。私はその条件を二つ指定しているのです。


 その一つが指を鳴らすこと、そしてもう一つが剣を指でなぞることです。指を鳴らすのはサンダーストライクなど直接相手に仕掛ける魔法にあてており、指でなぞるのは剣に雷の付与を与えるためです。


 尤も付与の方は威力重視の術式なのであまり長い時間は持ちません。だからここぞという時に使用するようにしております。


 この指への割り振りですが、基本的にはサンダーストライクが四、付与が三、チェインライトニングが二、サンダーストームが一としております。


 総合的な威力で言えばサンダーストームが一番高いのですが、魔法は周囲の魔力を利用して行使されるのが基本なので、サンダーストームクラスは連発が出来ません。


 一度使用すると一旦周囲の魔力がほぼ消えてしまうからです。それがまた満ちるまでは若干の時間を要します。チェインストライクは相手が集団の場合は効果が高いのですが、単体ではサンダーストライクとそう変わりません。


 付与は剣での攻撃とセットで考える必要があります。近接戦になったときのことを考えると余裕は欲しいのでこの数で、しかしやはり使う場所を選ばないサンダーストライクが一番使い勝手が良かったりします。指を多く割り当てているのはそれ故でゴブりますな。


「さぁ、地鮫はまだまだ増えるよ!」


 地面を泳ぐように動き回る鮫が三匹に増えました。スキルの地鮫――投射系ですか。暫く残り餌を探して動き回る辺りは面倒でゴブりますね。


「鮫ばかりに気を取られているとザクッといっちゃうよ~」


 首目掛けて的確にナイフを重ねてきましたね。この男、気配を消すのがかなり上手い。しかもこの独特な足運びは盗賊のものです。

 

 元盗賊が冒険者になったといったところでしょうか? まったくない話とは思えませんが――


「どうしたのかな? 逃げてばかりじゃ話にならないよ~」

「そうですね、では――」


 指で刃をなぞります。細剣に雷が付与されたのが伝わります。


「ダッシュライトニングピアス――」


 雷を付与した状態での突きの連打でゴブります。飛び退いて直撃は避けましたが、電撃によって攻撃範囲は広がっております。全くのノーダメージというわけには――


「はい、ドッカーン」

 

 地面が爆ぜました。どうやらトラップを仕掛けていたようです。やれやれ私としたことが地面に潜む鮫に気を取られすぎましたか。


「あれ? 驚いたな。もしかしてあまり効いてない?」

「……これぐらいでやられていてはご主人様に顔向け出来ませんからな」


 意外そうな顔をしてます。相手の足を奪うことが目的なトラップな為か、威力がそこまでではなかったのが幸いでした。これでも肉体はゴブリン。その程度で足を持っていかれたりはしません。


 とは言え、やはり癖が強いトラップでゴブりますな――

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