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最弱スキル紙装甲のせいで仲間からも村からも追放された、が、それは誤字っ子女神のせいだった!~誤字を正して最強へと駆け上がる~  作者: 空地 大乃
第四章 シルバークラウンの冒険者編

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第42話 冒険者を目指していたら、いつの間にか賞金首になっていた!

前回のあらすじ

シルバークラウンについた。


いつも応援に感想を頂きありがとうございます。

「カルタ、あんまりキョロキョロしてると御上りさんだと思われるぞ」

「ははっ、でも間違ってないしな」

「わ、私もそう言われると、そう思われているかも」

「いやいや! お嬢は何をしても様になっているから問題ありませんよ!」


 ドヴァンが慌ててフォローした。ただ御上りさんの部分は否定していない。

とは言え、何せこれだけ巨大な都だ。誰でも初めてくればこうなると思う。建物の密度は勿論、高い建物も多い。


 特に遠目からでも見える塔のようなアレは見事だ。なんでも二五階建てらしいが、あんなのどうやって建設したのか疑問はつきない。


 でも、それが英雄豪傑の支部だってわかるとなんとなく納得できてしまう自分がいた。流石冒険者ギルドで不動の首位を維持しているだけある。


「間もなく冒険者街に入るでゴブリますな」


 ジェゴブが教えてくれる。今ジェゴブは馬車を引きながら同道してくれている。

 門をくぐって暫くは馬車で移動したけど、途中から降りた形だ。


 シルバークラウンに入ってすぐに案内用の地図を見たけど、冒険者の集まる地区は冒険者街として表記されていた。区分としても完全に分かれている。


 華々しいイメージもある冒険者だけど、実際の仕事は荒事も多いし、盗賊を退治したり魔物を狩ったりすれば普通に遺体を運んでくることもある。


 だからここのように大きな都市なんかだと、冒険者が所属するギルドは特定の場所に集中するように区分ワケされているのが基本だ。


 立地的にも、門を抜けてから一般の居住地区や商業地区を出来るだけ通らないようなルートで戻れるよう工夫されている。


 とは言え、門から冒険者街まではそれなりに離れているから、近くまでは馬車に乗ってきたわけだ。


 この都市広すぎだから、徒歩だけで回っていたんじゃどれだけ時間掛かるか判らない。勿論、レベルも上がっているから急ごうと思えば急げるけど、冒険者より一般人が多い街中でそんな真似したら迷惑になるから馬車も併用した。


 そして今はギルドなんかもじっくり見てみたいから降りている。そのせいで御上りさんと思われるのは恥ずかしいから冒険者が多いところでは気をつけようと思うけど。


「え、え~と、注意この先冒険者街?」

「画での表記を見るに、一般人に対しての注意書きのようでゴブります。荒々しいイメージを持たれているのかもしれません」

「どうやらこの先は飢えた狼の巣窟のようですよ。お嬢お気をつけください」

「でも、私多分その狼の一人になろうとしているような気が……」

「何をいいますか! お嬢が狼なんてとんでもない! 例えるなら気品のある猫です!」

「えーーーーーー!」


 ヘアは驚いているけど、確かにイメージはあってるかもしれない。

 ふと脳裏に猫耳のヘアが思い浮かんだ。


「あれ? カルタ顔が赤いみたいだけど大丈夫?」

「え? あ、いや、大丈夫だよ! ははっ……」


 全く何考えてるんだ俺。でも、そういえば実際獣人族に猫耳の生えたタイプもいると聞いたことがあるな。見たことないから一度見てみたいかも。


「よう坊主、こっから先は冒険者街だけど大丈夫か?」

「あ、はい。目的がそこなので」

「うん? てぇと冒険者志望か。あんま強そうに見えないけどまぁ頑張れよ」


 すれ違ったおじさんが声をかけてくれた。気にしてくれたみたいで面倒見のいい人なんだろう。冒険者街の方から来たから彼も冒険者なんだろうな。


 そして猫耳だった。なんとこんなにも早く願いが叶ってしまったわけだが。


「違う! そうじゃない!」

「どうかされたでゴブりますかご主人様?」

「カルタちょっとテンション上がりすぎだろ。そりゃ夢だった冒険者になれるんだからわからないでもないけどな」

「あ、それでちょっと浮足立っていたんだね。その気持ち私も判るよ!」


 つい感情が表に出てしまった俺に、何故かヘアのフォローが入った。いや、確かに気持ちは高ぶっているけど。ただ、今のはなんというかやっぱ猫耳なら女の子だよな~的な。偏見でしたはい。そりゃ獣人族には男もいるんだから中年男性の猫耳獣人がいてもおかしくない。


 でも、生まれて初めてみた猫耳獣人には夢が欲しかった。

 

 それにしてもガタイのいい人だったな。流石冒険者だ。

 そして俺たちは遂に冒険者街に入る。一際目立つ英雄豪傑のギルドはともかく、他にも様々なギルドが犇めき合っているのがここ冒険者街だ。


 実際ちょっと歩くだけで相当な数のギルドを通り過ぎた。規模は様々だけど、今目につくのは二階建てか高くても三階建て程度のギルドかな。


「ご主人様、案内図を発見したでゴブリます」

「あ、ありがとう」


 流石にギルドの数が多いだけにこういった物が用意されているんだな。


 どれどれ、と眺めてみる。どうやら冒険者街の中でも規模によってある程度棲み分けが成されているようだ。

 

 俺たちが今歩いている通りは中規模のギルドが多い地帯らしい。


「お兄さんもしかして冒険者ギルドを探しているの?」

「え? あ、はい」


 ふと、後ろから声をかけられて振り返る。小柄な女の子が立っていた。見るからに元気がありそうだ。


「その様子だと、これから登録できる冒険者ギルドを探しているってところだよね?」

「はい、わかりますか?」

「勿論、雰囲気でね。でもそれなら丁度良かった。だったらウチなんてどう? 冒険者ランキング258位の竜頭蛇尾だよ。オススメだよ~」

 

 りゅ、竜頭蛇尾? 何が凄いのか凄いのかよくわからない名前なんだけど。


 でも、これもしかして勧誘されているのか?  驚いたな。でも、誰も俺のスキルのことなんて知らないからそういうこともあるのか……。


「ねぇ入ろうよ入ろうよ~」

「妙なのに気に入られたな」

「話だけでも聞いてみる?」

「そう、そうだよ! 先ずは話だけでもね! ね!」


 ヘアの言葉に反応する少女。だけどね。


「いや、色々見て回りたいからとりあえず遠慮しておくよ」

「え~なんで~? うちは怪しくないよ~三食昼寝つきだよ~」

「いや、なんで冒険者ギルドに三食と昼寝がついているんだよ」


 ドヴァンの言っていることは尤もだ。何せ冒険者は決められた給金をもらって仕事をするような組織じゃないし。 


 う~ん、悪意あるようには感じないけど適当だな。


「とにかくいますぐはちょっとね。後で見かけたらもしかしたら君の勧誘とは関係なく立ち寄ることもあるかもしれないけど」

「本当!? それなら名前だけでも教えてよ! ね? それぐらいいいでしょう?」


 名前、か。まぁそれぐらいなら別に。


「カルタだよ。それが俺の名前」

「へぇ、カルタ、カル、タ……」


 ふと、少女の動きが止まった。そして視線がジェゴブの引っ張っていた馬車に向けられる。


「馬車だ」

「はい、これは馬車でゴブりますね」

「赤い馬車だ。おかしな口調で変わった肌の色をした片眼鏡な人だ。それにそっちは顔の怖い隻腕の剣士」

「顔が怖くて悪かったな」


 なにか突然失礼なこといい出したな。何なんだ突然? ドヴァンも少しムッとしてそうだけど。


 すると、少女がポケットを弄りだし、そして小さな笛を取り出した。笛? そんなのもってどうするつもりなんだ?


「す~……」

――ピイイイイッィイイイイイィイ!


「な、なんだ!」

「お、おいどういうつもりだ!」


 少女は息を吸い込み、そして笛を口に当てて派手に鳴らし始めた。かなり音が大きい。唐突のことで思わず耳を塞いでしまう。


「どういうつもりはこっちのセリフ! よくも冒険者になりたいだなんて騙してくれたね!」

「は? 騙す? いや、何言って――」


 ゾワリ、と背中に感じた気配。反射的に半身を逸らすと、幅広の刃が俺のすぐ目の前を通り過ぎていった。


 ガキィィイイン! と石畳に食い込み、切れ込みと亀裂が走った。


「チッ――外したか」


 殺気に満ちた視線が俺に突き刺さる。何だコイツ? 一体――


「てめぇ! 一体どういうつもりだ!」


 剣を抜き、ドヴァンが叫んだ。まるで俺の気持ちの代弁者だ。


「いきなりご主人様に手を挙げるとは。冒険者ともあろうものがそのような狼藉許されるのでゴブりますかな?」


 ジェゴブも剣を抜き男を睨めつけた。ヘアには動揺も見えるけど、しっかり状況は見極めようとしている様子。


「あん? 狼藉だ? 何を馬鹿言ってやがる。冒険者が罪人に何を遠慮する必要があるってんだ?」

「……は? 罪人?」


 俺が疑問に感じていると、冒険者の数がみるみるうちに増えていき、俺達は完全に包囲される形に。


「みんな! こいつらが例のアレだよ。最近手配書が回っていた!」

「ほう、ピッコの笛の音を聞いたから、どんな身の程知らずがやってきたかと思えば」

「これは驚きだ。ホヤホヤの新賞金首様御一行ってことか」

「おいピッコ間違いないのか?」

「うん、だってそいつ自分からカルタだって名乗っていたもん。それなのに最初は冒険者ギルドに登録に来たっていうんだよ? 舐めてるよね」

「は、確かに舐めてるな。それに、ただの紙装甲な分際が口先だけで商家のお嬢様を誑かして誘拐し利用するとはな」

「だけど気をつけなよ。なんでもかなり高価な魔道具を使いこなしているらしいからねぇ」

「ちょっと待てよ! なんだよ賞金首って。俺たちは何も罪なんておかしてないぞ!」

「それがお前の手か? そうやって上手いこと相手を騙すのが手らしいが、この通り手配書は回ってるんだよ」

「カルタ十万オロ、隻腕の剣士二五万オロ、片眼鏡一五万オロ、全部で五十万オロか。新入りの賞金首にしては悪くねぇな」


 手配書を持った冒険者が見せつけるようにヒラヒラさせた。確かに、俺の名前だ。人相書きはそこまで似ているかはともかく特徴としては俺やドヴァン、ジェゴブを如実に表していた。


「おいおい、マジかよ……どうなってんだ?」

「これは、少々ジェントルとは言えない事態に陥っているようでゴブりますね」


 のっぴきならない状態ってわけだ。しかし何だってこんなことに――


「さて、狩りの時間だ」

「ちょっと待ちな。あの女は攫われた被害者だ。絶対巻き込むんじゃないよ」

「え? 私が被害者?」

 

 ヘアが驚いている。そういえばさっきの連中も俺たちが商家の娘を誑かしたと言っていたし、手配書を見せられた時、ヘアの顔がないとは思ったが、どうやら俺たちが賞金首にされている理由はそこにありそうだ。


「おいあんた! 私達が隙を作るからその間に逃げな!」

「な、何を言っているんですか! 私は攫われていません! 他の皆も罪なんて侵してません! こんな真似やめてください!」

「……やっぱり情報通りかい。どうも何かしらの方法で洗脳されてるようだね」

「はん、人の狩場を奪う卑怯者らしいやり方だ」


 なんてこった。これで俺たちはすっかり悪人扱いだ。弁解しようにも手配書が回っていて、ヘアにしても洗脳されているなんて妙な話が出回っている。


 とにかく考えろ。この状況を打破――


「だったら後は簡単だ! 女以外だけ始末してとりもどせばいい!」

「――ッ!?」


 どうやら相手は考える余裕すら与えてくれないようだ。一人の男が飛び出し、曲刀で切りかかってきた。


「おい、どうするカルタ!」

「どうすると言っても、とにかくなにか食い違いがあることは確か。反撃は最小限で!」

「たく、面倒だな」

「仕方がありません。向こうは務めを果たそうとしているだけ。こちらから大っぴらに手を出すわけにはいかないでゴブります」

「はん、まだそんなフリを続けるかよ!」


 フリでもなんでもないんだけど、信用しては貰えそうにない。とにかく相手の剣を一旦受け止めるが――その途端、相手の腕がぽろりと取れた。


「な、腕がどうして!」


 切った覚えないなんてないのに――その時、相手の口角が吊り上がった。すると、取れた腕が突然動き出し下から攻撃を仕掛けてくる。


「取れた腕が、勝手に?」

「はは! どうだ俺のスキル、四肢着脱は! 俺は自由に腕や足を切り離して動かすことが出来るのさ!」


 それで腕が取れたのか。しかももう一本の方もバラして俺の動きを封じ込めようとしてくる。


「俺のスキルは指弾! 指からいくらでも弾丸を発射できるぜ!」


 ドヴァンを相手している男は顎が尖った冒険者だ。両手の指からは小さな光の弾を連射している。


「私は水を操ることが出来る。貴方、随分と動きがすばしっこいようですけど、いつまで持つかしら?」


 ジェゴブに向かっていったのは水使いの女。様々なスキル持ちが襲いかかってくる。流石正規の冒険者だけあって、腕も立ちそうだ。


 だけど――


「俺の攻撃からは逃げられ、え?」

「悪いけど、動きが遅ければバラバラでも意味が、ない!」

「グブェェエエエ!」


「あはははは! 所詮剣士じゃ俺の遠距離からの攻撃には絶対に勝てな――」

「悪いが、そのスキルはとっくに経験済みだ」

「な、いつの間に、ぐぼぉ!」


「サンダーストライク」

「きゃあぁあああぁあああぁああ!」

「申し訳ありませんが、ただの水では少々雷と相性が悪かったようですな。でもご安心ください。電撃は押さえてゴブります」


 俺の斬撃が、ドヴァンの蹴りが、ジェゴブの雷が、それぞれの冒険者にヒットし彼らの意識を刈り取った。


 勿論加減はしている。俺は鞘に入れたままだったし、ドヴァンはただの蹴りだし、ジェゴブは気絶させる程度の電撃だ。


「「「「「「ふざけやがって! 纏めて掛かれ!」」」」」

「ヘアホールド!」

「「「「「ぐわぁああああぁ!」」」」」


 そして今度は一斉に掛かってきた冒険者達だったが、ヘアの髪の毛によって瞬時に巻き取られ身動きがとれなくなった。


 まさにヘアの真骨頂。大量の相手の動きを同時に封じ込めるような力があるのは俺たちではヘアぐらいなものだ。


「あの女の子、どういうこと? あんな力があるなんて情報あった?」

「いや、ただの商家の娘としかなかったような……」


 少し離れた位置から様子を見ていた冒険者達が怪訝そうな顔を見せた。どうやらヘアのスキルまでは知らなかったようだ。


 だけど、これで一旦仕切り直しとなり膠着状態に。これは説得できるチャンスかもしれない――


――ズドォオオオォオオオオオン!


 突如響き渡る轟音。それはドヴァン側の方から聞こえてきた。

 弾けるように顔をやると、派手な煙がもくもくと立ち込め、そこにふたりのシルエット。


「ほぅ、ひ弱な人間風情が俺様の一撃を片手で受け止めるとはな。少しは褒めてやるぞ」

「――ケッ、いきなり降ってきたかと思えばベラベラと偉そうに。この程度軽すぎて話にならねぇ。てっきり紙の武器かと思ったぜ」

 

 そして煙が晴れた時、そこにいたのはドヴァンに斧を振り下ろした、一人の巨人の姿であった――

冒険者になるのも大変です。


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