第41話 到着! シルバークラウン!
前回のあらすじ
何か全裸だった。
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腐女子に関してですが、あの国では今ままでそういったスキルがなかった為、お爺ちゃんは心配していました。
鑑定はまさに目を奪われてそれどころじゃなかったのです(^^ゞ
それはゼンラマンの活躍でスカイナガスが倒された少し後のことである。
「まさか、私の竜造魔法が破られるとは、全くこの大陸はスキルだけしか能がないと聞いていたが、厄介なスキル持ちもいるようだな――」
彼らの戦いぶりを遠くから見続けていた男が独りごちた。全身を緑色のローブに包まれた男だ。先端が竜の頭のように模された杖を手にしている。顔はフードを目深に被っているため確認出来ない。
「ふむ、まぁいい、あの程度は材料さえあれば変えがきく――とりあえず引き上げるとするか」
そして男は立ち上がり踵を返した。顎に手を添え、何かを考えつつ――
「それにしても――なんで全裸なんだ?」
首をひねりながら独りごちた後、控えていた小型の竜に跨がり、その場を立ち去るのであった。
◇◆◇
「見えてきたぞ」
「はぁ~やっと到着か~」
冒険者達の安堵の声が聞こえてきた。護衛の中には馬に騎乗して随伴してきている人もいる。声を上げているのは彼らだろう。
「シルバークラウンか……噂には聞いていたけど見事なもんだな」
俺たちが乗る馬車の上からはドヴァンの声が聞こえてきた。ヘアの両親が残してくれた馬車はかなり頑丈な作りだから屋根に上ったぐらいならビクともしない。
折角だから俺も出てみることにした。ヘアも興味ありそうだから手を引いて屋根の上に一緒に移動する。
「うわぁ~確かに凄いです~」
「あぁ、見事なもんだなぁ~」
キャラバンはなだらかな山道を下っているところだ。視界は開けているから遠目にもその規模がよく判る。
俺の育った村は勿論、ちょっとした町なんかでは比べ物にならない面積を誇る都市だ。流石はサンシャイン王国が誇る大都市の一つだけある。
シルバークラウンは周囲に多くの鉱山が存在するのが特徴で、その中の平地部に建設されたのがこの都市だ。
「シルバークラウンの都市は周囲の鉱山から採掘できる良質な鉱石がうりとなっております。精錬技術も高く良質な金属を採取していることでも名を馳せており、あのドワーフ族の男の中にも惚れ込んで居住権を取り鍛冶師として生計をたてている者もいる程です」
ドワーフ族の男といえば気難しかったり偏屈であることで有名だ。しかし三度の飯より鍛冶が好きという事でも有名だったりする。あぁ、あと大変な酒豪としても知られていたな。
そのドワーフはあまり多種族と関わりを持とうとしないことがほとんどだ。気に入った鉱石のある山があればそこに籠もり、黙々と作業を熟すようなタイプ。
出来た品なんかは、自主的にやってくる商人に卸す程度であり、以前はドワーフが作った装備品が流れて来ただけでもかなりの高値がついたとか。
だからわざわざ山を降りて人間のいる都市に暮らすなんてかなり珍しいってことなんだろうな。
「ドワーフすらも魅了する金属は鉱山で採掘、精錬された後シルバークラウンに集まります。それらを各種装備品や道具として産出することであの都市は発展を遂げていきました。今では人口五十万人にまで増加し、鍛冶屋や装備品を取り扱う店の数は王国一。その影響で往来する商人や冒険者の数も増えました。シルバークラウンを拠点とする冒険者ギルドも数多くあるようでゴブります」
ジェゴブはこのあたりの知識も豊富だったようだ。それにしてもあのダンジョンでよくそれだけの知識が身についたものだな。
「はわわ、でも本当に凄く大きいです。ウッドマッシュが何百も収まりそう……」
ヘアの言っていることを大げさには感じなかった。それほどまでに規模が大きい。リトルヴィレッジなら千単位で収まるだろうな。
そして、いよいよだな。俺たちはあのシルバークラウンで遂に冒険者としての第一歩を踏み出そうとしているんだ――
俺たちはいよいよシルバークラウンの外門前までやってきた。そしてリーダーと言葉を交わす。
「ここまで助かった。本当にありがとう」
「いや、別に構わないさ。それに龍が出たときはあまり役に立てなかったしな」
「それは私達も一緒だ。全くアレは本当に運が良かった素材的にもな」
そう、あの龍に関しては謎の、なんというか謎の女が倒してくれたんだが、その結果素材だけが大量に残された。
基本的に魔獣や竜は素材の価値が魔物と桁違いだ。そのうえ保有する魔力が潤沢かつ肉体の強靭さと相まって素材が非常に腐りにくい。
おまけに大体肉が美味いから食材としても装備品や道具の素材としても一級品だ。特に竜の鱗は一枚だけでもとんでもない値がつく。
倒し方が倒し方だけに、量はかなり減ってしまっていたけど、それでも全員で山分けしてもウハウハだと全員喜んでいたな。
ちなみにこういった素材は基本的に狩ってすぐ回収するか、どうしても後から取りに来る他ないような場合は自分たちの物であると証明するためにマーキングしておくのが基本だとか。
それがない場合は狩った本人以外が持ち帰っても何も問題がないらしい。それでも一応多少は待ってみたんだけど、1時間しても戻ってこなかったし、そこでアイズがもう大丈夫だと思いますよと口にしたのをきっかけに素材の分配が始まった形だ。
勿論俺たちにも割り当てられた。村を出た時には心細かった路銀だけど、なんだかんだで随分と余裕が生まれそうだ。
「そういえばアイズはシルバークラウンに滞在するのかな?」
俺はふと気になって近くにいたアイズに話しかけた。すると彼は首を横に振り。
「ううん。僕は他の皆と一緒で、少しはいるけど、別の護衛に付き合うつもりなんだ」
「別の護衛? リーダーも?」
「あぁ、ここにいるのは護衛依頼を中心に行ってるパーティーの集合体でね。だから同じ場所には長くいないのさ。素材の売却があるからその手続きも含めて何日か滞在するがその後はまた護衛につく。まぁとは言っても今回の場合、このキャラバンの何組かが他のキャラバンに加わって移動するのが決まっているからそれに合わせることになると思うけどな」
「それじゃあアイズくんも護衛専門で?」
「いや、僕は目的地があって、そこまで同行するつもり。せっかく仲良くなれたのにちょっと残念だけどね」
ヘアが問いかけるとアイズは少し寂しそうに答えた。
「でも、ま、冒険者ってのはそんなものなのかもな。それにお互い元気ならまたどこかで会えるだろうさ」
ドヴァンが言う。するとアイズが、そうだね、と微笑み返した。う~ん、男と知ってなければ普通に女性と勘違いしそうな笑顔だ。
「ここまでありがとう。また皆とどこかで会えることを祈ってるよ」
「おっと私達のことも忘れないでくれよ。いい忘れていたが、俺の名前はリーダー・シップだ。またどこかであったら宜しく頼むよ」
そして俺たちは門の前で別れた。彼らのような大規模なキャラバンは専用の門が別にあるからだ。
俺たちも護衛は引き受けたが、途中で加わったから正規の護衛リストには入っていない。だから護衛料だけ貰ってここでお別れとなる。
少し残念だけど、出会ったり別れを繰り返すのは冒険者の常だ。勿論長く一緒に居る仲間ができる場合もあるけど、それぞれ目的が異なる場合もあるから仕方のないこと。
ま、俺まだ冒険者じゃないんだけどね。う~ん、それにしても――
「あの人、名前がリーダーだったんだな……」
「判りやすいっちゃ判りやすいけどな」
「あはっ、リーダーをやるために生まれたような方だね」
「名は体を表すといいますでゴブりますからな」
うん、きっと彼は今後も皆を引っ張るリーダーシップを発揮していくことだろう。
こうして俺たちは一般の門から手続きを踏んで中に入ることになる。結構並んでいたけど、冒険者の多くはギルドカードを見せるだけで簡単に通れるからわりとあっさり順番が回ってきた。
ギルドカードは冒険者であることを証明するための身分証にもなるから便利だとか。持ったことないから聞いた話だけど。でも、今の様子を見ていると間違いなさそうだ。
「目的は観光かな?」
気の良さそうな門番が話しかけてくる。流石鉱山で発展した都市だけあって、門番に支給されてる装備品にも妥協は感じられない。
武器は使いやすそうな槍。防具は頭をすっぽりと覆える開閉式の兜に、鎧も鋼鉄製の全身鎧。と言ってもガチガチの重厚系ではなく関節部分には細かくしなやかな鎖を採用したタイプ。全身を鋼鉄で作ると関節部分が動かしにくくなるからな。門番の場合、何か異常があったときに動けることが重要だからこの仕様なんだろう。
これならここで武器を振り回すような狼藉者が現れても余裕で対処出来るだろう。
なんてことを考えながら俺はここまで来た目的を話す。
「シルバークラウンには冒険者になるために来ました。他の皆もそうです」
ヘアは勿論、ドヴァンも冒険者登録するつもりだ。ジェゴブは御者ということで話をつけた。冒険者登録する時、大体は簡単な鑑定を受けることになるからジェゴブの登録は難しい。
本人もそれは判っているようで、それなら御者として入ったほうが自然である。
ドヴァンに関しては、娘さんを探す手前、冒険者になっておいたほうが情報が集めやすいということで登録を決めた形だ。
「おお! なるほど冒険者か。それにしてもまだ若いのに大したもんだね。そっちの嬢ちゃんも女の子なのになぁ」
「ははっ、でも一応成人してるんで」
「私もです。がんばりますから!」
「そっかそっか微笑ましいな。それじゃあ一応この玉の前で名前と今言ったことを繰り返してもらえるかな? あと最後に犯罪目的では来ていないとも付け加えて欲しい」
掌に乗るサイズの玉を取り出した門番が宣言を求めてくる。特に断る理由がないから言われたとおりにした。
「あ、はい。カルタです。冒険者になるために来ました」
「ヘアです。私も冒険者になることを希望です!」
「ドヴァンだ、俺も冒険者として登録するつもりだ。あとお嬢に手を出すやつはぶっ飛ばす!」
「ジェゴブと申します。私は御者として皆様に同行しているでゴブります」
「「「「勿論犯罪目的ではありません」」」」
全員の宣言が終わったが、玉は特に反応はしなかった。
「うん、言っていることに嘘はないし問題はなさそうだな通っていいよ」
どうやらあの玉は相手の嘘を見破るための魔道具なようだ。嘘があったら反応する仕掛けらしい。
まぁとにかく、問題がなくて良かった。さて、いよいよ初めての都市に入るぞ!
◇◆◇
俺は門番のガード・レールだ。毎日ここで門を通る人々をチェックするのが仕事だ。
ここシルバークラウンには毎日色んな人がやってくる。中には冒険者になるんだと瞳を輝かせてやってくる者もいる。
今さっきここを通った赤い馬車の一行もそうだった。未来を夢見る少年少女を見るのはやはりいい。いつ見ても心がほっこりする。
まぁ、一人凄い顔の怖い人いたけど。あと肌がちょっと緑色の御者とかいたけど。まぁここには色んな人がくるしな。それに魔道具でのチェックもしっかりしているから問題はない。
さて、俺は小休止のため他の門番と交代して詰所に戻ってきた。
疲れを取るために紅茶を注いで飲む。うん、美味い。そこまで上等な代物ではないけどこの香りを嗅ぐだけで癒やされる気分だ。
「あ、先輩そういえば新しい手配書が回ってきていますよ」
「おお、そうか。ちゃんとみておかないとな」
詰所にいた後輩に言われ、壁に掛かっていた手配書に目を向ける。
ズズズッ、むむむっ、見るからに凶悪そうな連中が多いな。これだから賞金首というのは。
こいつらゴリラーダ、見た目がゴリラっぽい。その隣はサルガリータ、猿っぽいが目つきが悪い。そしてカルタか。何だ見た目は普通の少年じゃないか。
こんな普通そうな少年が賞金首とは世も末だな。それに名前は不詳だが隻腕の剣士、これは随分と凶悪そうな顔で、片眼鏡で肌が薄緑色の……。
『ブフォオオオオォオオォオオォオオォオオオ!』
「うわ! きたな! 何してるんですか先輩!」
「ゲホゲホっ、ば、ばか! それどころじゃない! 今すぐ、今すぐ衛兵に連絡しろ! 今すぐだーーーー!」
なにやらトラブルが……




